ユウスキン

🍥煙 は 調 味 料🍥

ユウスキン

🍥煙 は 調 味 料🍥

最近の記事

🍥燻製チリコンカン🍥

「あれは──何コンカンだったかな──」 テレビから這い出てくるサダコンカンでもないし、階段から四つん這いでにじり降りてくるカヤコンカンでもない。ホッケーマスクを被ったタフな大男が殺意を剥き出しに追いかけてくる13日の金コンカンでもなかった。 あ、そうそう。チリコンカンだ。 さて、国境を隔てたお隣さんであるテキサスとメキシコの縁が生んだ、ピリッとスパイシーでコク深い、メキシコ風のテキサスごはん。いわゆる、TEX・MEX料理だ。 おっと──どこからか──声がきこえる──

    • 🍥燻製黒ゴマバスチー🍥

      白地に、好きな色を塗り描いていくばかりではなく、時として黒い画布が現れて何を塗って何を描いても──闇に吸い込まれては途方に暮れる。 そういった、時おり人生を覆う闇を振りはらうため、家にある黒い食材──黒ごまを燻製にして闇祓いの儀を執り行うことにした。 ──なぜ、黒いものを燻製することによって、闇が晴れるかだって──? 静かにッ!! やつらは──音に反応して....襲ってくるんだ....。 さて、三文芝居にうんざりとしたところで、茶番だけに休憩の時間だ。さっそく、黒ゴマ

      • 🍥燻製担々素麺🍥

        暑気払い、などとかこつけて、梅雨前からキンキンのビールや冷酒での「自宅納涼祭」が九月になっても終わらない。 三ヶ月も納涼を祈願しているのに、ちっとも納まらない連日の暑さである。秋が深まるどころか酒だけが深まって内臓を弱らせていく、といった一種の矛盾まで発生する始末だ。 自業自得とはいえ、こうも食欲が湧かないと──やはり冷たいそうめんに頼ってしまうのが夏の人情というものだが、めんつゆに浸して食べるのもいいかげん食傷気味である。ここは趣向を変えていこうと冷蔵庫を覗くと、ひき肉

        • 🍥燻製タルト記念日🍥

          入籍して10年が経った。 月日がはやく過ぎゆくことをたとえて、光陰矢の如しと言うが、結婚してからの光陰は矢どころか、もう、なんというか、発射されたパラベラムバレットくらい速い。言うなれば、婚姻の光陰PBの如し、である。 当時、結婚は人生の墓場だ、結婚は忍耐だ、などといった結婚に対する誹謗中傷をススッといなしながら婚姻届を提出しつつ、 「私の忍耐力と墓場力がついに試されるのか」 などと鯱張っていたのに、妻や子と日々を過ごすうちに「なんやケッコン楽しいやんけ」と思い至り、

        🍥燻製チリコンカン🍥

          🍥ハラペ漬けサーモン丼🍥

          夏とともに颯爽とあらわれて、我が家を賑わせてくれる陽気なメキシカン唐辛子ハラペーニョだ。 出会いは数年前。たまさかお裾分けにいただいたハラペーニョだったが、私は内心、「ただの太った青唐辛子だろ」などと高を括っていた。そして、いい加減に放り込んだひと口、その鮮烈な味わいにガクブルと膝から崩れ落ち、リングに這いつくばってピクリともせずに10カウントを聴いた。その後は、グリーンタバスコやピクルス、にんにく醤油漬けに南蛮味噌、燻製後に乾燥させチポトレにしたりと、心ゆくまでその緑の果

          🍥ハラペ漬けサーモン丼🍥

          🍥燻製クラフト辣油🍥

          ついに──辣油が底をついてしまった。 燻製にした硫黄島唐辛子で作った、とびっきり辛くて美味い辣油だった。 逆さまにした瓶の最後の一滴が、皿へと落ちながら、 ──いつかまた──作ってくれる?── と、私に語りかけ、酢醤油に美しく咲いて、餃子とともに、胃のなかへ消えていった。 餃子とビールで膨れた胃とは裏腹に、私はひどい喪失感を覚えた。もう、市販のものでは──がらんどうな心と辛さに飢えた舌は満たせない。まだ口のなかに残る、じんじんとしたその余韻を感じながら、 ──ああ

          🍥燻製クラフト辣油🍥

          🍥燻製レモン2🍥

          蠱惑の進次郎構文に拐かされて終わった燻製レモンパウダーの記事だったが、せっかく作った芳しいそのイケナイ粉を、今回はキッチリと活用していこう。 燻レモンパウダーをつくる契機となったイタリア人シェフよろしく、アーリオをオーリオしたペペロンチーノでボナペティってみるのも良いが、燻製ばかりに勤しむ夫を生暖かい白い目で見守ってくれている妻の機嫌も考慮しておこう。ここは夫として、雄々しく女子力をメリメリとひねり出してお菓子を作ることに決めた。 決めたとはいえ、私はお菓子沼につま先をつけ

          🍥燻製レモン2🍥

          🍥燻製レモン🍥

          ここで、燻製レモンパウダーを入れるんだ YouTubeで、ペペロンチーノの解説をするイタリア人のシェフの口から飛び出した調味料である。 「燻製レモンパウダーだと──ッッ」 私は燻製家だ。燻せる食材のほとんどを網羅しているつもりだったが、レモンを煙に巻くなんて──聞いたこともない。柑橘と煙が喧嘩せずに共存するなんて、はたしてあり得るのだろうか──。 柑橘の燻製に懐疑を抱きつつも、灯りに群がる夏虫のように、それは寝ても覚めても頭から離れることはなかった。 頭のなかを、ブン

          🍥燻製レモン🍥

          🍥燻製冷や汁🍥

          家族との時間もそこそこに、持ち帰った食材を次々と燻製にして憚らない私である。そろそろ妻の堪忍袋の尾が切れ、冷や飯を食わされる日も近い、そんな予感があった。 冷や飯を食わされるのならば、そこに冷や汁をぶっかけて美味しくいただいてしまおう。それが、冷汁掛飯者の心構えだ。そして、煙で生じた因縁すらも煙に巻こうと試みる。それが燻製家という生きかたである。 ⁡ ところで、冷や汁とは「ざっかけないメシ宮崎県代表」といったところの、平たく言えばB級グルメ、丁寧に言えば郷土料理だ。 冷

          🍥燻製冷や汁🍥

          🍥燻製皿台湾🍥⁡

          「明日は皿台湾でも作ろうかね」 と告げれば、たちどころにフクロテナガザルさながらの奇声を発しながら長い腕を駆使して木々を渡るほど、妻の大好物である。 ⁡ 燻製ばかりをする私に愛想を尽かした妻が、いよいよ荷物をまとめて家を出るとき、湯気たちのぼる皿台湾をスッと出し、皿だけに円満な解決を演出しようと思っていることはここだけの話だ。 ⁡ 我が家の復縁大作戦はさて置こう。 ⁡ ⁡何と言っても「皿台湾」という名前が秀逸だ。台湾代表のような顔をして「台湾に存在しない」という太々しさがた

          🍥燻製皿台湾🍥⁡

          🍥燻製たらこ大根葉そうめん🍥

          野菜直売所に並ぶことから始まる我が家の休日だが、早起きして並んだ甲斐あって、朝採れの地野菜が選り取り見取りである。 この日は、たわわと葉をたくわえた大根のほかに、大根を間引いて葉に特化した「もみ菜」が並んでいて、私は右手に大根、左手にもみ菜を握って、この僥倖に人目も憚らず、ウッホウッホと狂喜したのだった。 好きなおにぎりのタネのベスト3に入る大根葉の塩漬けである。握飯爆食家としては、速やかに持ち帰って塩漬けにする必要があった。 帰宅し、さっそく塩を撒いて包丁に清酒を吹き

          🍥燻製たらこ大根葉そうめん🍥

          🍥燻製魯肉飯🍥

          ⁡ 角煮のようでいて、カレーのようでもある。ビールがよく似合って、ごはん泥棒の人たらし。台湾出身のニクイやつ。みんな大好き魯肉飯だ。 私も例に漏れず、三度の魯肉飯より魯肉飯が好きなほどの魯肉飯溺愛者である。 ちなみに、お馴染みの魯肉飯というのは当て字で、本来は滷肉飯と書くそうだ。 滷 それにしても──滷という字の強烈さよ。 なんというか、読めないし、書けない。何を言っても説得できないし、小遣いだって絶ッッ対に上げてくれなそうだ。小遣いを上げてくれぬばかりか、「殺」な

          🍥燻製魯肉飯🍥

          🍥燻製オイルサーディン🍥

          スーパーの鮮魚コーナーに差し掛かったとき、私の脳に埋め込まれた燻製探知機がディン、と反応を示した。その先を見やると、ざるに重ねられた鰯が私の目をぢ、と見つめていたのだ。 鰯か…燻製にしてオイル煮──からのパスタでビールなんて、最高にもほどがあるな… などと思い立ったはいいものの、缶詰で見るような小さいものではなく、15cmほどの中羽鰯である。 さて、どうしたものか。 私は目を瞑り、心を鰯にして彼に語りかけた。 きみは随分と大きいが──オイルで煮ても大丈夫かね。 ──

          🍥燻製オイルサーディン🍥

          🍥大葉と燻たこの冷製パスタ🍥

          「一番に好きな食べ物は?」と問われても答えに窮してしまうが、香草はと訊かれたら答えはひとつだ。 私は、大葉偏愛型人間である。 先日の記事で紹介したジャンボン・ペルシエを大葉に置き換えてジャンボン・シソにするほうが好きだし、ペペロンチーノだってイタリアンパセリを使うよりも断然大葉だ。ついでに言うと、厄除けには盛り塩ならぬ「盛り大葉」だし、悪魔祓いに使う聖水なんてたっぷりの大葉入りで堕天使も裸足で逃げ出すほどに爽やかな香りがする。結婚式の御祝儀には5枚も包んで大葉だけに大盤振

          🍥大葉と燻たこの冷製パスタ🍥

          🍥ジャンボン・ペルシエ🍥

          トンネルを抜けるとそこは雪国であるように、ハムを作ったその肉肌の先には必ず浮かぶメニューだ。 ジャンボン・ペルシエとは、復活祭に食べられるフランスはブルゴーニュ地方発祥の郷土料理である。手塩にかけた可愛いハムが輝ける場所を探しているときに出逢った料理だ。 東北で生まれ、ずんだ餅や納豆で育った私としては、イースターにジャンボンペルシエをどうぞボナぺティってシルブプレ、などと急に青い目で迫られたものだから、「知らない人にはついていくな──と親から言われていまして」などと弁解を

          🍥ジャンボン・ペルシエ🍥

          🍥山椒仕事🍥

          地域の農産物直売所を徘徊していると、掌大にパックされた山椒の実が小ぢんまりと積まれているのを発見した。 梅雨時になると料理家たちがSNSに投稿する「山椒仕事」という言葉に憧れ、指を咥えて眺めるだけで旬を逃し続けていた私だったが、今年は山椒の眼鏡にかなったようで、晴れて採用の運びとなった。ようやく仕事にありつける喜びを噛みしめ山椒を手に帰路に就いたのである。 山椒の手仕事は、目を瞑ってもこなせる程度には何年も前から本やネットで予習済みだ。さっそく枝から外していく。 無数にあ

          🍥山椒仕事🍥