ユウスキン

🍥煙 は 調 味 料🍥

ユウスキン

🍥煙 は 調 味 料🍥

最近の記事

🍥燻製茶漬け🍥

日本人の生活に馴染み溶けこんで、あたりまえに──そこにある。 日ごろ、とくべつ意識などしないが、よくよく考えてみると、その実はおそろしく混沌で捉えどころのない食べもの。 それが、茶漬けだ。 白飯に茶や出汁だけを注いだものから、わさびや塩鮭、梅や海苔をのせたもの。ヅケた魚やカラスミ、あるいは鰻の蒲焼をのせた贅沢なもの。これらも茶漬けというジャンルのなかでは極々々一部だ。 注ぐ出汁や茶の種類も多岐にわたって、なかには冷や飯を洗って冷水だけを注いで食べる、といった、私のような

    • 🍥なめことベーコンのおぺぺ🍥

      なんだか、言い淀んでしまう。 これは、奥歯にモノが挟まっているにちがいない。 この「モノ」は、フロスや楊枝で除去できる類のものでは──どうもなさそうだ。 ここは、ヌルッとヌメっとした──すべりのよさそうな食べものを口にいれて「挟まったモノ」をヌメり取るのが良いにちがいない。 それにしても──「ヌメり取る」という表現は、我ながら気持ちが悪い。酒に酔った狒々爺が迫ってくるような不快な響きである。 「愛のヌメりとり」「ヌメり取れた哀しみへ」などと詩情を与えようとしても、趣を感

      • 🍥肉吸い🍥

        ⁡ ⁡ ⁡ ⁡ 吉本新喜劇の花紀京が、宿酔いのさなか、「肉うどんのうどん抜きで」などと注文したのが、肉吸いの発祥と言われている。 ⁡ それにしても「肉うどんのうどん抜き」なんて、いかにも芸人らしい洒脱な逸話だ。 「うどんという主役を抜く」こと⁡によって名物化した肉吸いは、星の数ほどある料理のなかでも稀有な存在と言えるだろう。 ⁡ この記事を書くにあたって「肉吸い」と検索にかけ調べていると、 「肉吸い風うどん」 という、ルーツもへったくれも無視した「きみ、それは──ただ

        • 🍥名刺の燻製🍥

          創作大賞2024の中間審査を通過した🍥ロースハム🍥は、残念ながら受賞に至らなかった。 残念とはいえ、中間審査を通ったレシピ部門の面々はスゴ腕の料理人、あるいは料理研究家ばかりだったので、週末燻製家の私としては「そらそうだわな」というのが率直な感慨ではあった。 ただ、エッセイ部門に応募した「自分が審査員だったら間違いなく選出する」くらいの温度で仕上げたいくつかのエッセイが、中間審査にすらカスらなかった。これは鼻から脳髄がボンジョールノするほどの悔しさだった。 中間発表のエ

          🍥ポトフ🍥

          あまりの美味しさに、ほっぺたが potéeっと落ちたことが、豚肉と野菜のスープである「ポテ」の発祥と言われているが、もちろんいつもの虚言なので人に言うのは避けたほうがいいだろう。熱々のスープを吹きながら法螺も吹くのが私の流儀なのだ。 それはさておき、たとえばあなたの恋人が、塩豚やベーコン、ソーセージを使った野菜たっぷりのスープを「今日はポトフよ」と食卓に並べているときに、 などと「ご鞭撻」をしようものなら、キレイさっぱりと縁が切れること請け合いだが、日本では肉と野菜のスー

          🍥ポトフ🍥

          🍥きのことベーコンごはん🍥

          ──あのう、そろそろ交代っス おずおずと、暦が夏に告げたが、 だまれ小童がッ と、一喝され、すごすごと引き上げてきたばかりか、 ──まだ....夏みたいっス などと、ミイラ取りがミイラになる始末である。 「ミイラ取りがミイラになる」を使ってみたかったがために冒頭の茶番を書いたことは秘密だが、たしかに暦とは名ばかりで、今年はとくに秋の形骸化がはなはだしかった。 とはいえ、さすがに十月も半ばをすぎると、ずいぶんとしのぎやすくなって、昼に汗ばんだとしても、彼誰刻に夏のそ

          🍥きのことベーコンごはん🍥

          🍥燻製ガトーショコラ🍥

          私は、太りやすい。 正しく言うと、中年になってから覿面に太りやすくなった。 スタローンの映画をおかずにメシを食い、イーストウッドの眉間のシワで煎じた茶を飲んで育った私だから、心身ともにミチっと締まった人生を送り、そしてミチっと幕を閉じる予定だった。 代謝能力が衰えるだなんて露ほども思わず、「我、肥えぬ」とうそぶいていたのに、三十路も半ばあたりから何だか服が窮屈になりはじめ、あらためて己の身体を鏡で観ると、腹まわりにボテっと浮き輪ならぬ肉輪がはまっていた。 「何かの間違い

          🍥燻製ガトーショコラ🍥

          🍥火鍋🍥

          ようやく、灼熱の日々がおちついて「秋だねえ」などと虚ろにつぶやく季節である。 あんなにも苦しめられたビンビンの太陽も、汗みずくで肌に貼りついたシャツも、過ぎてしまうとなんだか名残惜しい。 私は昏れゆく秋の西空──その橙のなかにとおざかる夏のしっぽを眺めながら、 ──夏.... と、戻らぬそれの名を呼んだ。 さて、気持ちの悪い文章はここまでだ。そして、未練たらしい男らしからぬ湿っぽさは、火鍋の焔を浴びせカラッと乾かしていこう。 こうして材料を並べてみると、いかにも麻

          🍥燻製チリコンカン🍥

          「あれは──何コンカンだったかな──」 テレビから這い出てくるサダコンカンでもないし、階段から四つん這いでにじり降りてくるカヤコンカンでもない。ホッケーマスクを被ったタフな大男が殺意を剥き出しに追いかけてくる13日の金コンカンでもなかった。 あ、そうそう。チリコンカンだ。 さて、国境を隔てたお隣さんであるテキサスとメキシコの縁が生んだ、ピリッとスパイシーでコク深い、メキシコ風のテキサスごはん。いわゆる、TEX・MEX料理だ。 おっと──どこからか──声がきこえる──

          🍥燻製チリコンカン🍥

          🍥燻製黒ゴマバスチー🍥

          白地に、好きな色を塗り描いていくばかりではなく、時として黒い画布が現れて何を塗って何を描いても──闇に吸い込まれては途方に暮れる。 そういった、時おり人生を覆う闇を振りはらうため、家にある黒い食材──黒ごまを燻製にして闇祓いの儀を執り行うことにした。 ──なぜ、黒いものを燻製することによって、闇が晴れるかだって──? 静かにッ!! やつらは──音に反応して....襲ってくるんだ....。 さて、三文芝居にうんざりとしたところで、茶番だけに休憩の時間だ。さっそく、黒ゴマ

          🍥燻製黒ゴマバスチー🍥

          🍥燻製担々素麺🍥

          暑気払い、などとかこつけて、梅雨前からキンキンのビールや冷酒での「自宅納涼祭」が九月になっても終わらない。 三ヶ月も納涼を祈願しているのに、ちっとも納まらない連日の暑さである。秋が深まるどころか酒だけが深まって内臓を弱らせていく、といった一種の矛盾まで発生する始末だ。 自業自得とはいえ、こうも食欲が湧かないと──やはり冷たいそうめんに頼ってしまうのが夏の人情というものだが、めんつゆに浸して食べるのもいいかげん食傷気味である。ここは趣向を変えていこうと冷蔵庫を覗くと、ひき肉

          🍥燻製担々素麺🍥

          🍥燻製タルト記念日🍥

          入籍して10年が経った。 月日がはやく過ぎゆくことをたとえて、光陰矢の如しと言うが、結婚してからの光陰は矢どころか、もう、なんというか、発射されたパラベラムバレットくらい速い。言うなれば、婚姻の光陰PBの如し、である。 当時、結婚は人生の墓場だ、結婚は忍耐だ、などといった結婚に対する誹謗中傷をススッといなしながら婚姻届を提出しつつ、 「私の忍耐力と墓場力がついに試されるのか」 などと鯱張っていたのに、妻や子と日々を過ごすうちに「なんやケッコン楽しいやんけ」と思い至り、

          🍥燻製タルト記念日🍥

          🍥ハラペ漬けサーモン丼🍥

          夏とともに颯爽とあらわれて、我が家を賑わせてくれる陽気なメキシカン唐辛子ハラペーニョだ。 出会いは数年前。たまさかお裾分けにいただいたハラペーニョだったが、私は内心、「ただの太った青唐辛子だろ」などと高を括っていた。そして、いい加減に放り込んだひと口、その鮮烈な味わいにガクブルと膝から崩れ落ち、リングに這いつくばってピクリともせずに10カウントを聴いた。その後は、グリーンタバスコやピクルス、にんにく醤油漬けに南蛮味噌、燻製後に乾燥させチポトレにしたりと、心ゆくまでその緑の果

          🍥ハラペ漬けサーモン丼🍥

          🍥燻製クラフト辣油🍥

          ついに──辣油が底をついてしまった。 燻製にした硫黄島唐辛子で作った、とびっきり辛くて美味い辣油だった。 逆さまにした瓶の最後の一滴が、皿へと落ちながら、 ──いつかまた──作ってくれる?── と、私に語りかけ、酢醤油に美しく咲いて、餃子とともに、胃のなかへ消えていった。 餃子とビールで膨れた胃とは裏腹に、私はひどい喪失感を覚えた。もう、市販のものでは──がらんどうな心と辛さに飢えた舌は満たせない。まだ口のなかに残る、じんじんとしたその余韻を感じながら、 ──ああ

          🍥燻製クラフト辣油🍥

          🍥燻製レモン2🍥

          蠱惑の進次郎構文に拐かされて終わった燻製レモンパウダーの記事だったが、せっかく作った芳しいそのイケナイ粉を、今回はキッチリと活用していこう。 燻レモンパウダーをつくる契機となったイタリア人シェフよろしく、アーリオをオーリオしたペペロンチーノでボナペティってみるのも良いが、燻製ばかりに勤しむ夫を生暖かい白い目で見守ってくれている妻の機嫌も考慮しておこう。ここは夫として、雄々しく女子力をメリメリとひねり出してお菓子を作ることに決めた。 決めたとはいえ、私はお菓子沼につま先をつけ

          🍥燻製レモン2🍥

          🍥燻製レモン🍥

          ここで、燻製レモンパウダーを入れるんだ YouTubeで、ペペロンチーノの解説をするイタリア人のシェフの口から飛び出した調味料である。 「燻製レモンパウダーだと──ッッ」 私は燻製家だ。燻せる食材のほとんどを網羅しているつもりだったが、レモンを煙に巻くなんて──聞いたこともない。柑橘と煙が喧嘩せずに共存するなんて、はたしてあり得るのだろうか──。 柑橘の燻製に懐疑を抱きつつも、灯りに群がる夏虫のように、それは寝ても覚めても頭から離れることはなかった。 頭のなかを、ブン

          🍥燻製レモン🍥