雨降花 (あめふりばな)
噴き出した葉先の発色を
なだめるように降り始めた雨が
辺りを容赦なく濡らしてゆく
小気味よい音の中で
濡れずに護られていることに
幾人の人が感謝するのだろうか
この雨の中
生き生きとする小動物の
くるくるとした背中の荷物は
如何にしてその大きさを変えてゆくのか
養分の詳細を尋ねてみたくなる
ねっとりとした歩みには
気が遠くなるほどの
染色体の歴史が秘められているはずで
七色のグラデーションの眩い
空の縮図をハンカチに閉じ込めてみる
ほんの少し端を抓んで
ひらりと空を泳がせたら
お伽話を彷彿とするような
空に向かって
語りかけたくなるような
言葉を探す旅に出たくなるような
なんとも言えぬむず痒さだけが残る
掌サイズの独り言がここに
知らずしらず
心の訃報をいくつか超えて
靭やかに強く
朝日の出処を探している
自由に伸びてゆく蔦の尖端で
静かに発芽を待ちながら
宙を仰いでみたら
君の声を聞いた気がした
雨に打たれる電線に留まる
小鳥の音符の様を
奏でられたとしたら
少しだけ優しい言葉が
見つかりそうな気がする
だからもう
紫陽花の色の変化のことは
押し花の秘密にして
最後の頁に挟んでおいて
せめてもう
雨の季節なんだと
シンプルに笑っていて
物語は
ここにあるから
ちゃんと
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あたたかなご支援をありがとうございます❤ みなさんのお心に寄り添えるような詩を形にしてゆきたいと思っています。