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本のこと

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2021年9月の記事一覧

竹林はるか遠く/Yoko Kawashima Watkins#22

竹林はるか遠く/Yoko Kawashima Watkins#22

「竹林(たけばやし)はるか遠く 日本人少女ヨーコの戦争体験記」は、日系米国人作家のヨーコ・カワシマ・ワトキンズこと川島擁子が11歳の折、第二次世界大戦の終戦時に体験した羅南から京城(現在のソウル)、釜山を経て日本へ帰国するまでの体験記である。

朝鮮半島を縦断する決死の体験や、引揚げ後の壮絶な姿が描かれている。

1986年にアメリカで出版され、優良図書に選ばれたのち中学校用の教材として多くの学校

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贖罪/湊かなえ#19

東野圭吾、三浦しをん、宮部みゆき、そして湊かなえ。

どの作者も刊行されるとすぐに映画化、ドラマ化される人気作家である。

映画は割愛されている部分があるので原作でしか味わえない面白さが、本にはある。

湊かなえの代表作といえば映画化もされた松たか子主演の「告白」である。

—愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです—という教師の生徒への発言から始まり、教え子に復讐をす

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カネを積まれても使いたくない日本語/内館牧子#13

カネを積まれても使いたくない日本語/内館牧子#13

「カネを積まれても使いたくない」

タイトルからしてあまり品があるとは思えないが、一体どのような日本語のことを指しているんだという興味本位で手に取った。

内館牧子といえば、2000年に大阪府知事に就任した太田房江が、大相撲大阪場所での大阪府知事賞の贈呈を土俵上で希望したことを、日本相撲協会が相撲女人禁制の伝統を理由に拒否したことに関して一貫して協会側を指示したことでも記憶に新しい。

この本を手

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音楽は自由にする/坂本龍一#9

音楽は自由にする/坂本龍一#9

2009年、教授が約5年ぶりとなるコンサートツアーを行った。
当時わたしは長崎にいたので、もちろんコンサートのチケットはすぐに取った。
それに先駆けて発売されたのが、教授にとって初めてとなる半生を描いたこの自叙伝である。

コンサートではその熟練されたピアノ技巧と、洗練された音楽に感動した想いは今でも忘れることができない。

ピアノ2台を自動演奏を使って、丸2時間を一人で演奏するものだったが、オー

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臨機応答・変問自在/森博嗣#6

小説家であり工学博士、元名古屋大学助教授にしてミステリィ作家「森博嗣」。

「小説が売れに売れて大学で教員をするのが馬鹿らしくなって辞めた人だよ」

わたしの夫は、森博嗣をこう説明してくれた。ちなみに夫は森博嗣のファンである。

森氏も「金になることをしようと考えて小説を書いた」と、ある書籍にも書いている。

一風変わった彼が名古屋大学助教授の頃、学生に質問させることで出席をとり、その質問に自身が

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