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ショートショート小説

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1話完結の、ショートショート小説を集めました。現代小説からファンタジー、ミステリーやホラーまで、幅広いジャンルを揃えています。
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#文学

ショートショート 忍法 『俺なら出来る!』

 私の弟は、とびきり優秀なのにどこか抜けている。  忍術学校に在学中は、抜群の成績で周囲…

草方良月
4年前
7

ショートショート 盗賊たちの絆

 熊谷浩平がアジトに戻ったとき、そこはすでにもぬけの殻だった。かわりに、突如ドアが音を立…

草方良月
4年前
3

ショートショート あなたがいてくれたから

 これからお話するのは、ある女性の話です。  初めて彼女に出会ったのは、彼女がまだ、小学…

草方良月
4年前
8

超ショートショート 引き継がれた記憶

 一番星が弾けた。  砕けた破片が二番星にあたって、火山が噴火。そうして発生した溶岩がミ…

草方良月
4年前
4

ショートショート 紅と蒼

 路上や街中で、ふと猫を目にしたとき――。  紅を思い出すことがある。  幼い頃の私を救っ…

草方良月
4年前
26

ショートショート ルビー色の思い出

「長い間、ほんとうにご苦労さま」  そう言って、絹代は私の肩に手を置いた。ともに歩んだ30…

草方良月
4年前
3

ショートショート その男を見てはいけない

 初めてそれを見たのは、ある金曜の夜だった。  明日から休日。気持ちが弾んで、いつもとは違うルートで帰宅しようと電車を乗り換え、家の近所の別の駅で降りた。のんびりと家まで歩いて帰る最中、ふと目をとめた暗い神社の境内に、彼はいたのだ。  鳥居の向こう、賽銭箱の前で両手を揃え、熱心に何かを祈っている後ろ姿。夜も八時を回ったタイミングに、ことさら真剣にお祈りする様子からは、ひたすら大きな宿願があるのだろうと察せられた。私は静かに視線を彼から外し、また家への道を歩き出した。  翌

ショートショート マスクの下で、ときめいて

 通学路を歩く他の生徒の数が増えるにしたがって、私の胸もどきどきしてきた。  長期間の休…

草方良月
4年前
5

ショートショート 光と音の恐演

 佐奈には、今のマンションでどうしても苦手な場所があった。  それは、1階にあるごみ捨て場…

草方良月
4年前
6

ショートショート トートーさんの由来

 トートーさん。  それが、彼のあだ名だった。  理由は分からない。でも、みんなが彼をト…

草方良月
4年前
2

ショートショート 誠くんの失敗……?

 眩しい朝日が差し込むオフィスの中、誠は、パソコンの前で呆然自失としていた。  ああ、ま…

草方良月
4年前

ショートショート 百発百中の真相

 (念のため……)とその傘を持って出かけると、必ず雨が降った。  パラパラとした小雨や時雨…

草方良月
4年前
5

ショートショート 魔法の正体

 土曜の深夜、遅くまで起きて、ダラダラとテレビを見ていたときだった。さすがに夜の三時とも…

草方良月
4年前
6

ショートショート 幸福の実のなる木

 その木になる実を食べた人は、幸せになる――。  噂は人々の口から口へと伝わり、いつしかその木は、『幸福の実のなる木』と呼ばれるようになった。  ある人は、その実を食べた三日後に宝くじが当たった。ある人は、その実を食べてしばらくすると結婚した。ある人は、長年苦しんでいた病がコロッと治った。  我も我もと求める人が増える一方で、誰も『幸福の実のなる木』がどこにあるのかは知らなかった。 「どうせ、ただの都市伝説だ」「そんな木、あるわけないわ」  一時はテレビを騒がせた『幸福の実の