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ショートショート 誠くんの失敗……?

 眩しい朝日が差し込むオフィスの中、誠は、パソコンの前で呆然自失としていた。

 ああ、またやっちまった……。

 全身から力が抜け、何も考えられない。

「……誠くん、大丈夫?」
 出社したばかりの村上さんが、おもむろに尋ねる。
「あ、はい。大丈夫です」
 そう答える誠の顔は、青ざめて引き攣っている。

「あれ、そういえば誠くん……」
 わずかに顔をしかめ、村上さんは鼻に手をやりながら声をひそめる。
「昨日と、同じ服? それに、ちょっと……臭ってない?」
 村上さんが、そっと誠から離れる。青ざめた誠の顔が、今度は途端に赤くなった。

「実は、またやってしまったんです」
「……え、また?」
 きょとんとする村上さんに、誠は心底恥ずかしそうに答えた。

「すみません! 仕事に熱中しすぎて、気付いたら朝だったんです」

 真面目で一生懸命な彼は、時に周りが見えなくなるくらい、真っ直ぐで一途な性格だった。

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