大西洋子

イラストを描いたり、ショートショートを書いたりしています。

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マガジン

  • 毎週ショートショートnote詰め合わせ

    #毎週ショートショートnoteで書いた作品に、加筆修正したものを詰め合わせております。

最近の記事

つぶやきそこねてた。 いつか参加しよう。と思っていたものにようやく参戦です。 一マス開けなくてよかったですね。 https://note.com/hoshi_boshi/n/n585cf03dc6d5

    • 勇気の長靴(ひなた短編文学賞.投稿作品+加筆修正版)

      「やっぱり降ってきたのね」    千春が駅に降りると、しとしとと小雨が降っていた。 「路線バス、なくなっちゃったのか。仕方ない、歩くか」 折りたたみ傘を広げ、徒歩二十分の道程を歩き出す。 「ここ歩くのホント久しぶり」 十数年ぶりの駅前商店街。ボロボロの幟がはためくのは、母に連れられ長靴を買いに来た衣服店。それから配達中の札がかけられた本屋兼雑貨屋は、中学の友達と恋バナに花を咲かせてた場所。アルバイト先の弁当屋に至っては、売物件の札があるのみ。 「寂れる一方ね」 駅前通りを過ぎ

      • 季装(毎週ショートショートnote)

        蝉の声がすっかり消え失せ、夜になると虫の音色が美しい。黄昏時が長く長く長く、陽が落ちると瞬く間に夜の帳に閉ざされる。 と、鼻にツンとくるこの匂いはキンモクセイだ。ああ、今年もキンモクセイ盗賊団がくる季節が来た。 キンモクセイ盗賊団は、晴天の日の昼夜問わずツンとする匂いをあたりに撒き散らし、夜闇に紛れて蒼を盗む。 桜や椎に楓に銀杏。冬の訪れの前に葉を落とす木々から蒼を盗み、それを山の合間の池へと運ぶ。 キンモクセイ盗賊団の頭は冬の女王。樹木の蒼は池の水に溶け出し糸となり、蒼を失

        • 地球(毎週ショートショートnote)

          いったいどうしたことなのでしょう。兄弟の中で一番賑やかで、見ていてちっとも飽きなかったのに、今では見る影もない。 慣性に従って回転し大きく輪を描くだけ。見晴るばかりだった蒼と碧は、赤黒く染まる一方。 そういえば、あのコの側にいつもいた月は、どこに消えてしまったのかしら。 ねぇ、なぜぼくだけ地表に生き物がいるの? 身体の中のマグマを何度も噴き出して、それでも地球はへそを曲がり続ける。 お題はこちらの「それでも地球は曲がっている」から。

        つぶやきそこねてた。 いつか参加しよう。と思っていたものにようやく参戦です。 一マス開けなくてよかったですね。 https://note.com/hoshi_boshi/n/n585cf03dc6d5

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        • 毎週ショートショートnote詰め合わせ
          30本

        記事

          54字のプチ宴 小さい秋見つけた

          54字のプチ宴 小さい秋見つけた

          夜からの手紙(毎週ショートショートnote)

          突然のお手紙失礼いたします。ワタクシ夜です。太陽照らす昼の反対の月と星輝く夜の夜です。 まず、あなた様に謝らねばなりません。当初の予定よりも長い間、寝苦しい夜のお届けになり申し訳こざいません。ようやく夜の帳から夏が片付き、冬がじりじりと近づきつつあります。 あなた様に申し上げます。秋晴が続くこの間に面倒な掃除と、寝間と普段着の交換をお願いいたします。そしてできるだけ心穏やかな時間をお過ごし願います。 ワタクシ夜からは、長い夜のお供になる夢をあなた様にお届けします。しかし夢とい

          夜からの手紙(毎週ショートショートnote)

          ときめきビザ(毎週ショートショートnote)

          読書通帳なるものをもらったのは、校外学習で図書館に行ったときだったと思う。 表紙に市のマスコットのイラスト、そこに自分の名前。専用の機械に差し込むと、冊子に図書館で借りた本のタイトルが記帳されていく。 多くのクラスメイトは、その時に記帳しだだけでその役目を終えていたと思う。 だけど、わたしの読書通帳は何冊も発行してもらい、とうとう読書通帳が使用できなくなる中学生になってからは、市販の手帳に書き留めるようにしていたけれど、漫画にテレビドラマに映画にゲームにイラスト、写真、

          ときめきビザ(毎週ショートショートnote)

          化粧(毎週ショートショートnote)

          8月上旬の合同合宿を除けば学校に登校することがない私は、合宿が終わったその足で薬局に立ち寄り、ヘアーカラーを購入。色はさんざん悩んでオレンジ色に。 その夜親指程の太さの束を左右に二つ作ってその部分だけ染める。そうバイト先の先輩の真似。きれいに染まるかな、ドキドキ。 鏡の前に座り、いつもよりも丁寧にドライヤーで髪の毛を乾かしながら髪の毛を広げてみる。染めたところにオレンジの薔薇が現れ、髪の毛が元の位置に戻るとそれは消える。 うん、イメージどおり。 私はウキウキしながら、みんなで

          化粧(毎週ショートショートnote)

          54字の怪談

          ギリギリ滑り込み(汗)

          言霊ラリー(毎週ショートショートnote)

          虫酸が走り、二の足を踏み、暗影を投じる。不安の種は空に弧を描き、着地と同時に深淵が広がる。 火の車を不眠不休で漕ぎ続け、鯉の一跳ねとばかりに賽を投じた。丁か半か、神のみぞ知る。 東奔西走、七転八倒さじを投げた。捨てる神あれば拾う神あり、捲土重来のトスがあがる。 言霊ラリーは、いつも先が読めない。 お題はこちらの「見たことがないスポーツ」から。 懐かしいものを紹介されたので、自作のもあげとこう。

          言霊ラリー(毎週ショートショートnote)

          七夕異譚(毎週ショートショートnote)

          彦星が誘拐された。 カササギから、その知らせを受け取った織姫は、すぐにでも彦星の住まう天の川の向こうへ駆けつけたかった。 だけど、それはできやしない。一年に一度の彦星との逢瀬の時でさえ、カササギがかけた橋の端から端まで歩くことはできるけれど、彦星側の岸に降り立つができないのだから。 歯がゆさと苛立ちで、織姫は雲錦を織る仕事に身が入らない。……と言っても、今では雲錦から糸を作る紡練、それに糸から布を織る織布も機械まかせなのだけど。 織姫は機械の調子を確かめながら、誰がなんのため

          七夕異譚(毎週ショートショートnote)

          読書記録『祈願成就』霜月透子

          ショートショートnoteでの創作仲間でもある、霜月透子さん著『祈願成就』を購入し、一通り読み終わってすぐ再読せざるを得ない作品でした。 https://note.jp/n/n94fa3487102f 一周目読んだ時は、バブル、それから氷河期と称される時代から取り残された地方都市を舞台に、その当時の子どもなら夢中になったであろう秘密基地仲間の当時を軸に、「始まりの死」を火蓋に、次々と起こるそれに恐れを抱きました。 そして二周目は、プロローグで語られる願望が、尽く異様な形で

          読書記録『祈願成就』霜月透子

          友情の総重量(毎週ショートショートnote)

          🎵友達百人できるかな〜 小学生になる少し前から、そんな歌を何度も聞き、みんなで一緒に歌ったものだ。 そうして幼なじみのリョウは「友達百人作るぞ!」と宣言し、社会人になるころには百人余りの友人がいるという。 それに比べて儂はどうじゃ。親になり、爺やになった今も友人と呼べる者は片手で数えられるほど。 「やれやれ、お前と一緒になるとは思いもしなかった」 リョウとともに儂は向かう。閻魔様のもとに。 そこで亡者の生前の行為を再生され、罪の有無を裁くのは知られているが、その裁

          友情の総重量(毎週ショートショートnote)

          読書記録『ナースの卯月に視えるもの』

          ショートショートガーデン(SSG)、それから毎週ショートショートnoteでの創作仲間でもある、秋谷りんこさん著『ナースの卯月に視えるもの』を、発売したその日に購入いたしました。 https://note.jp/n/nffaff611https://note.jp/n/nffaff611fb34?sub_rt=share_b ですが、帯を見るなり、この本は今、とても読める状況ではないなと感じとり積読に。 ようやく本を読める状況になって、まっさきに読み出し、ページをめくるたび

          読書記録『ナースの卯月に視えるもの』

          今年も参戦! アルコールインクアート+切り絵を絵本仕立てで仕上げました。 2020年に作成した作品のリベンジ版です。 https://copicaward.com/ja/work/detail/21453

          今年も参戦! アルコールインクアート+切り絵を絵本仕立てで仕上げました。 2020年に作成した作品のリベンジ版です。 https://copicaward.com/ja/work/detail/21453

          春ギター(毎週ショートショートnote)

          「そのギター、まだあったんだ」 そのギターを見るなり、父さんがその作業の手を止めた。 「若い頃、それを持って弾き語りに出掛けたものだ」 差し伸べられたその手に、屋根裏部屋から出したばかりのそれを手渡す。 腰に吊したタオルで胴を拭うと、薄紅色の胴がさらに鮮やかな色になった。そうして縁側に腰かけかき鳴らす。新生活になれ初めたとはいえ、まだ進学でバラバラになった彼との約束を思い出させるフレーズ。 「あら懐かしい」 叔母さんの声。 「おじいちゃんったら、それで演奏していたわね」 小学

          春ギター(毎週ショートショートnote)