人の為に頑張るのは良い事？　自分を軽視しない生き方のヒント（ゲシュタルトの祈り）

「誰の為にしてあげたと思っているんだ！」

ドラマでこんなセリフを見聞きします。日常会話でも 「あなたの為を思ってしてあげたのに」などの言葉を使ったり、聞いたりすることもあります。良かれと思ってやっている行為ですが、相手にとってそれが必ずしも嬉しい行為とは限りません。

この人の為にする行為について、良し悪しを考えてみます。

人の為と書いて「偽（いつわり）」

最近知ってドキッとした言葉が「偽」です。普通に考えると「人の為」と書けば、善意のイメージ、素敵な漢字を連想してしまいますが、「偽」（いつわり）という漢字になります。

この漢字を改めて知った時、純粋に「なぜ？」と思いました。なぜこんな意味になってしまったのでしょうか。

そもそも「偽」という漢字の語源とは、まず「為」という漢字を理解する必要があります。「為」とは 「手」＋「象」から出来ています。人が象を手なずける様子を表現したと言われています。そこに「人」がつくと、人間が作為的に手を加え、人間の意図通りに動かし、本来の性質や姿を変えてしまうという意味になるそうです。つまり、人の作為で姿を変えること＝正体を隠して取り繕う、という意味となりそこから「いつわる」となったとされています。

そこで冒頭のセリフ「誰の為にしてあげたと思っているんだ」。これは発言者の尺度や都合で物事を判断してその人の考えを押し付けているとも取れます。相手の本来のあるべき姿に手を加えているということであり、ある意味「偽り」とも言えるのではないでしょうか。

「人の為に」を優先しすぎるのも問題

「〇〇さんのために頑張ります」こうした瞬間は誰しもあります。人間は人間関係の中で生きる社会的な生き物です。自分よりも、他人を優先して考える人は、優しく思いやりがあるように思います。人間としてとても素晴らしいとさえ感じます。

一方で、人の為に自分を犠牲にし過ぎるのは考え物です。過去に、滅私の精神で自分の優先度を下げて他人を優先する人を何人か見ましたが、その人達が必ずしも幸せではなかったように思います。

人のために頑張っている人は往々にして、生活が貧しかったり、家族や人間関係がうまくいっていなかったりします。他人のことばかり考え、頑張りすぎて、自分の生活の軸を失っている状態とも言えます。

自分のことを考える余裕がなくなれ、生活は苦しくなります。人のために頑張っても、自分の幸せにつながっていなければ、その人の人生は幸福な人生とは言えません。

「人」の「為」に動くことは、「頼りにされたい」「ありがとう」と言われたいという願望のために動いているという側面もあります。行動の軸足が他人にある状態。「人の為」という大義名分で、自分を偽っているとも言い換えられるのではないでしょうか。

自分を偽らずに、自分の幸福は自分で掴みたいものです。

ゲシュタルトの祈り

自分と他人のどちらを優先するべきか。この線引きに悩む時に、ヒントとなる詩をご紹介します。

ゲシュタルトの祈り
わたしはわたしの人生を生き、あなたはあなたの人生を生きる。
わたしはあなたの期待にこたえるために生きているのではない。
あなたもわたしの期待にこたえるために生きているのではない。
私は私。あなたはあなた。
もし縁があって、私たちが互いに出会えるならそれは素晴らしいことだ。
しかし出会えないのであれれば、それも仕方のないことだ。

この詩はドイツの精神科医フレデリック・S・パールズによるゲシュタルト療法の思想を盛り込んだ詩です。多くのカウンセリング療法の精神や哲学をよく表している詩として有名です。

何かの犠牲になることなく自分を大切にする。そして、他人を尊重すること、健全な人間関係は「自分を大切にする」ことを前提に成り立っていることを教えてくれます。

他人を優先しすぎる人、その線引きがうまくできずに苦しんでいる人にとって、救いになる詩ですね。私もこの詩を知ってから必要以上に他人に首を突っ込まなくなりました。そうすることで、メンタルも安定したように思います。

まとめ

人は人間関係の中で生きる生き物ですので、人の為に何かをするというのは自然な行為です。ギブ＆テイクです。しかし、他人を優先しすぎるのは、自分を幸せから遠ざける行為なのかもしれません。

人の為と書いて「偽（いつわり）」と書くように、人の為に行動しすぎるとそれは自分の人生を偽りの人生に導いてしまいます。

私は私、あなたはあなた。課題を分離し、自分の人生を生きることを優先しましょう。まずは自分が幸せになる。その上で、他者との人間関係がある。このバランスを見誤ることなく、自分の人生の手綱は自分で握って日々くらしていきたいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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