いわのふみや

映画、小説、テレビなどの備忘録です。

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【短文レビュー/邦画新作】『ルート29』森井勇佑監督・・・表層を安易なシュールっぽさで過剰に覆うのは逃げの一手であろう

トップ画像:(C)2024「ルート29」製作委員会 監督&脚本:森井勇佑/原作:中尾太一 配給:東京テアトル、リトルモア/上映時間:120分/公開:2024年11月8日 出演:綾瀬はるか、大沢一菜、伊佐山ひろ子、高良健吾、原田琥之佑、大西力、松浦伸也、河井青葉、渡辺美佐子、市川実日子 路地裏でタバコを吸う小学生や道端に等間隔で座っているお婆さんたちをはじめ、表層を安易なシュールっぽさで過剰に覆ってごまかしている感は否めない。社会生活困難な女が児童を連れ回す話の重くて嫌な部

    • 【短文レビュー/邦画新作】『矢野くんの普通の日々』新城毅彦監督・・・構図から何から定型を外してくる亜流の学園ラブコメ

      トップ画像:(C)2024 映画「矢野くんの普通の日々」製作委員会 (C)田村結衣/講談社 監督:新城毅彦/脚本:杉原憲明、渡辺啓、伊吹一/原作:田村結衣 配給:松竹/上映時間:106分/公開:2024年11月15日 出演:八木勇征、池端杏慈、中村海人、白宮みずほ、伊藤圭吾、新沼凜空、筒井あやめ いつも怪我ばかりするので何もできず自信を無くしているイケメンに、普通の学園生活をしてもらおうと主人公の女子高校生が奮闘する、学園ラブコメとしては亜流の構図。告白が授業中なのも、中

      • 【短文レビュー/邦画新作】『十一人の賊軍』白石和彌監督・・・誰しもが最善を尽くそうとするがゆえに充満する“論理的な狂気”

        トップ画像:(C)2024「十一人の賊軍」製作委員会 監督:白石和彌/脚本:池上純哉/原案:笠原和夫 配給:東映/上映時間:155分/公開:2024年11月1日 出演:山田孝之、仲野太賀、尾上右近、鞘師里保、佐久本宝、千原せいじ、岡山天音、松浦祐也、一ノ瀬颯、小柳亮太、本山力、野村周平、玉木宏、阿部サダヲ 何度も裏切りを繰り返す山田孝之を筆頭に、いずれもが自分のための最善を尽くそうとするがゆえに異常な行動をせざるを得ない状況が何度も発生し、“論理的な狂気”が作中に充満して

        • 【にがおえ】石破茂

        • 【短文レビュー/邦画新作】『ルート29』森井勇佑監督・・・表層を安易なシュールっぽさで過剰に覆うのは逃げの一手であろう

        • 【短文レビュー/邦画新作】『矢野くんの普通の日々』新城毅彦監督・・・構図から何から定型を外してくる亜流の学園ラブコメ

        • 【短文レビュー/邦画新作】『十一人の賊軍』白石和彌監督・・・誰しもが最善を尽くそうとするがゆえに充満する“論理的な狂気”

        • 【にがおえ】石破茂

          【短文レビュー/邦画新作】『八犬伝』曽利文彦監督・・・出鱈目な現実は、筋の通った虚構では救うことはできないのか

          トップ画像:(C)2024「八犬伝」FILM PARTNERS. 監督&脚本:曽利文彦/原作:山田風太郎 配給:キノフィルムズ/上映時間:149分/公開:2024年10月25日 出演:役所広司、内野聖陽、土屋太鳳、渡邊圭祐、鈴木仁、板垣李光人、水上恒司、松岡広大、佳久創、藤岡真威人、上杉柊平、河合優実、小木茂光、栗山千明、磯村勇斗、立川談春、黒木華、寺島しのぶ 鶴屋南北は主張する。この現実は出鱈目で辻褄など無いのであり、それならば自分の作る虚構の物語もまた出鱈目にするのだ

          【短文レビュー/邦画新作】『八犬伝』曽利文彦監督・・・出鱈目な現実は、筋の通った虚構では救うことはできないのか

          【短文レビュー/邦画新作】『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』佐藤東弥監督・・・人間の争う姿を見たがる悪魔が人間すぎる

          トップ画像:(C)2024劇場版「ACMA:GAME」製作委員会 (C)メーブ・恵広史/講談社 監督:佐藤東弥/脚本:いずみ吉紘、谷口純一郎/原作:メーブ、恵広史 配給:東宝/上映時間:119分/公開:2024年10月25日 出演:間宮祥太朗、田中樹、古川琴音、竜星涼、嵐莉菜、金子ノブアキ、志田未来、小澤征悦 悪魔の用意するオリジナルゲームで人間が勝負するという、胸焼けを起こしそうなほど次から次へと出てくる"デスゲーム"ものの最新作。ややこしいルールは映像作品に向かないと

          【短文レビュー/邦画新作】『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』佐藤東弥監督・・・人間の争う姿を見たがる悪魔が人間すぎる

          【映画本レビュー】『ミニシアター再訪〈リヴィジテッド〉: 都市と映画の物語 1980-2023』大森さわこ・著・・・独自色を求められない世の中でミニシアターが進むべき未来とは

          1980年代初頭から現在に至るまでの、東京都内のミニシアターの変遷を追い、その時々の関係者にインタビューした記録本。まず東京のみという狭い地域の話であり、大局的な歴史の流れを追う以上は取り上げられているミニシアターの数も限られ、その点での物足りなさはある。しかし特にミニシアター勃興期における、上映作品の選定など各館の「いかに独自性を出すか」を追究する話は単純に興味深い。かつては『ニュー・シネマ・パラダイス』といえばシネスイッチ銀座、『トレインスポッティング』といえばシネマライ

          【映画本レビュー】『ミニシアター再訪〈リヴィジテッド〉: 都市と映画の物語 1980-2023』大森さわこ・著・・・独自色を求められない世の中でミニシアターが進むべき未来とは

          【短文レビュー/邦画新作】『ピアニストを待ちながら』七里圭監督・・・『皆殺しの天使』と『ゴドーを待ちながら』を混ぜ合わせたような不条理劇

          トップ画像:(C)合同会社インディペンデントフィルム/早稲田大学国際文学館 監督&脚本:七里圭 配給:インディペンデントフィルム/上映時間:61分/公開日:2024年10月12日 出演:井之脇海、木竜麻生、大友一生、澁谷麻美、斉藤陽一郎 隈研吾が手がけた村上春樹ライブラリーで全編撮影されている。最近局所的に話題になった人名が2つも出てくるので変に身構えてしまいそうだが、村上春樹ライブラリーは早稲田大学の敷地内にある施設だ。主人公は数年前まで早稲田の学生だったという設定らし

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          【短文レビュー/邦画新作】『まる』荻上直子監督・・・堂本剛に取り憑く神話を解体する意図は最後の最後で全否定される

          トップ画像:(C)2024 Asmik Ace, Inc. 監督&脚本:荻上直子 配給:アスミック・エース/上映時間:117分/公開日:2024年10月18日 出演:堂本剛、綾野剛、吉岡里帆、森崎ウィン、戸塚純貴、おいでやす小田、濱田マリ、柄本明、早乙女太一、片桐はいり、吉田鋼太郎、小林聡美 前作『波紋』によって過去作品を否定するタームへと入った荻上直子監督の最新作。現代美術家のアシスタントをクビになった青年が何となく描いたただの丸の絵が、いつの間にか世間では勝手に至高の

          【短文レビュー/邦画新作】『まる』荻上直子監督・・・堂本剛に取り憑く神話を解体する意図は最後の最後で全否定される

          【短文レビュー/洋画新作】『シビル・ウォー アメリカ最後の日』アレックス・ガーランド監督・・・「もしもアメリカが内戦状態になったら」大喜利が連なる、『翔んで埼玉』アメリカ版

          トップ画像:(C)2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved. 監督&脚本:アレックス・ガーランド 配給:ハピネットファントム・スタジオ/上映時間:109分/公開:2024年10月4日 出演:キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン、ソノヤ・ミズノ、ニック・オファーマン 『翔んで埼玉』のアメリカ版である。と言ったらさ

          【短文レビュー/洋画新作】『シビル・ウォー アメリカ最後の日』アレックス・ガーランド監督・・・「もしもアメリカが内戦状態になったら」大喜利が連なる、『翔んで埼玉』アメリカ版

          【短文レビュー/邦画新作アニメ】『ふれる。』長井龍雪監督・・・最近のアニメ映画は登場人物たちを異空間に飛ばさないといけない決まりでもあるのか

          トップ画像:(C)2024 FURERU PROJECT 監督:長井龍雪/脚本:岡田麿里 配給:東宝、アニプレックス/上映時間:107分/公開日:2024年10月4日 出演:永瀬廉、坂東龍汰、前田拳太郎、白石晴香、石見舞菜香、皆川猿時、津田健次郎 「ふれる」と呼ばれる謎の生物(?)の力によって、身体に触れることで相手の考えていることがわかるようになり親友となった3人の男子小学生。月日は過ぎ、成長して大人になって上京してもまだ、同じ家で暮らすほど親密なままでいる(「ふれる」

          【短文レビュー/邦画新作アニメ】『ふれる。』長井龍雪監督・・・最近のアニメ映画は登場人物たちを異空間に飛ばさないといけない決まりでもあるのか

          【短文レビュー/邦画新作】『Cloud クラウド』黒沢清監督・・・転売屋こそが、黒沢監督の考える最も"人間的"な存在なのかもしれない

          トップ画像:(C)2024 「Cloud」 製作委員会 監督&脚本:黒沢清 配給:東京テアトル、日活/上映時間:123分/公開日:2024年9月27日 出演:菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、岡山天音、赤堀雅秋、吉岡睦雄、三河悠冴、山田真歩、矢柴俊博、森下能幸、松重豊、荒川良々、窪田正孝 相変わらず、黒沢清監督は人間それ自体に何も価値を置いていない。本作『Cloud』の劇中で最も人間的な躍動を見せるのは、通販サイトのウェブ画面なのだから。その次に人間的なのはコーヒーメーカー。

          【短文レビュー/邦画新作】『Cloud クラウド』黒沢清監督・・・転売屋こそが、黒沢監督の考える最も"人間的"な存在なのかもしれない

          【短文レビュー/TVバラエティ】『内村プロデュース復活SP!!』テレビ朝日 2024/09/28・・・「当時と同じこと」をするための2段構え

          トップ画像:(C) テレビ朝日 松本人志による性加害疑惑が週刊誌報道された2023年末、それまでのダウンタウンの悪行が掘り起こされると同時に「それに比べてウッチャンナンチャンは問題を起こさない聖人君子で・・・」という論調が主流になったことには、少なからず驚いた。もはや内村光良の結婚に至る経緯は忘れ去られたのかと。もちろん、性加害と不倫はまったく別の問題であるし、伝え聞く諸々の事情を鑑みれば、内村光良は断罪されるほどのことをしたわけではない。しかしまあ、『内村プロデュース』復

          【短文レビュー/TVバラエティ】『内村プロデュース復活SP!!』テレビ朝日 2024/09/28・・・「当時と同じこと」をするための2段構え

          【短文レビュー/邦画新作】『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』阪元裕吾監督・・・監督の見せたいものとファンの見たいものが完全に一致している、非常に恵まれたシリーズ

          トップ画像:(C)2024「ベイビーワルキューレ ナイスデイズ」製作委員会 監督&脚本:阪元裕吾 配給:渋谷プロダクション/上映時間:137分/公開日:2024年9月27日 出演:髙石あかり、伊澤彩織、水石亜飛夢、中井友望、前田敦子、池松壮亮 監督の見せたいものとファンの見たいものが完全に一致している、非常に恵まれたシリーズの最新作。アクションに関しては洗練の向こう側まで到達しており、特に至近距離からの銃弾を避ける動きのリアリティは、過去のあらゆるアクション映画よりも説得

          【短文レビュー/邦画新作】『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』阪元裕吾監督・・・監督の見せたいものとファンの見たいものが完全に一致している、非常に恵まれたシリーズ

          【短文レビュー/邦画新作】『ナミビアの砂漠』山中瑤子監督・・・強くて逞しくなくては女性がまともに生きるのも困難な現代社会

          トップ画像:(C)2024「ナミビアの砂漠」製作委員会 監督&脚本:山中瑶子 配給:ハピネットファントム・スタジオ/上映時間:137分/公開日:2024年9月6日 出演:河合優実、金子大地、寛一郎、新谷ゆづみ、中島歩、唐田えりか、渋谷采郁、澁谷麻美、倉田萌衣、伊島空、堀部圭亮、渡辺真起子 まず第一に、強くて逞ましい女性の話である。そして同時に、強くて逞しくなくては女性がまともに生きるのも困難な現代社会の話でもある。河合優実演じる主人公・カナの全方位的な攻撃性は、周囲の男ど

          【短文レビュー/邦画新作】『ナミビアの砂漠』山中瑤子監督・・・強くて逞しくなくては女性がまともに生きるのも困難な現代社会

          【短文レビュー/邦画新作】『あの人が消えた』水野格監督(※ 軽くネタバレあり)・・・これぞ田中圭の正しい使い方ではないか

          トップ画像:(C)2024「あの人が消えた」製作委員会 監督&脚本:水野格 配給:TOHO NEXT/上映時間:104分/公開日:2024年9月20日 出演:高橋文哉、北香那、坂井真紀、袴田吉彦、菊地凛子、中村倫也、染谷将太、田中圭 マンションを舞台としたミステリーで、出演者が2人ほど被っているために、予告を見た時点ではドラマ『あなたの番です。』を連想した。で、実際に鑑賞してみたところ、まあとにかく田中圭の磁場が強い。別に作品自体は『あなたの番です。』と似ているわけではな

          【短文レビュー/邦画新作】『あの人が消えた』水野格監督(※ 軽くネタバレあり)・・・これぞ田中圭の正しい使い方ではないか