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【短文レビュー/洋画新作】『シビル・ウォー アメリカ最後の日』アレックス・ガーランド監督・・・「もしもアメリカが内戦状態になったら」大喜利が連なる、『翔んで埼玉』アメリカ版

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監督&脚本:アレックス・ガーランド
配給:ハピネットファントム・スタジオ/上映時間:109分/公開:2024年10月4日
出演:キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン、ソノヤ・ミズノ、ニック・オファーマン

『翔んで埼玉』のアメリカ版である。と言ったらさすがに乱暴かもしれないが、おおまかな設定そのものは、さほど変わらない。国内が分断して内線状態となるかもしれないリアリティは、日本とアメリカでは肌感覚としてどれだけ差があるのか、判断できない自分の見識の無さを恥じるばかりだ。おそらくアメリカに住む人であれば、劇中に登場する地名から様々な思いを馳せるのだろう。

主人公グループはカメラマンや記者などのジャーナリストであるため、目の前で起こるヘンテコな出来事を客観的かつ俯瞰的に受け止めている。劇中における緊迫感は、単純に彼らが危険な場所に入っていって死ぬかもしれない状況に起因するものであり、きわめて個人的なものだ。社会情勢を市民に伝える役割を持つ者は、その社会そのものからは切り離された立場であるべきである、という矛盾めいた大義のせいであろう。ジャーナリストというある種の神のような視点である以上、何があろうとすべては”他人事”になってしまう。

虐げられてきた埼玉や千葉が東京に反旗を翻すよりも、アメリカが分断することのほうが現実味が無いわけではなかろう。しかし結局「もしもアメリカ国内が分裂して内戦状態になったらどうなる?」というお題の大喜利になってしまったのは、ジャーナリストとしての矜持やら成長を主軸の物語としたがゆえ、その対比として分断したアメリカをどうしようもなくくだらない社会にせざるを得なかったからか。ジャーナリストという仕事は、社会はくだらないほど活躍できるのだから。

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