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【短文レビュー/TVバラエティ】『内村プロデュース復活SP!!』テレビ朝日 2024/09/28・・・「当時と同じこと」をするための2段構え

トップ画像:(C) テレビ朝日

松本人志による性加害疑惑が週刊誌報道された2023年末、それまでのダウンタウンの悪行が掘り起こされると同時に「それに比べてウッチャンナンチャンは問題を起こさない聖人君子で・・・」という論調が主流になったことには、少なからず驚いた。もはや内村光良の結婚に至る経緯は忘れ去られたのかと。もちろん、性加害と不倫はまったく別の問題であるし、伝え聞く諸々の事情を鑑みれば、内村光良は断罪されるほどのことをしたわけではない。しかしまあ、『内村プロデュース』復活にも関わらず当時のことがたいして話題にも挙がらなかったのは、やはり芸能人は実際の行為よりもイメージが重要視されるのかとは肌で感じた。

こじつけるわけでもないが、35年ぶりに復活した『内P』(正式タイトル『祝!内村光良還暦祭り 内村プロデュース復活SP!!』)は、当時の番組のイメージをどこまで再現できるのかを第一の目的としていた。端的に言えば「当時と同じことをしたい」ということで、それは往年のテレビ番組の復活特番としては当然ではある。ただし、当時と同じことをするために、ある仕掛けを施していた。

というのも、35年前と同じことをどこまでできるかという実験企画みたいになっていたのである。まず当時のレギュラーが当時と同じことにチャレンジして、それは今の基準ではどうなのかと判断する、という2段構え。この構造によって、ある種の社会批評性が発生し、「当時と同じこと」も実験のためのサンプルとして真面目に提出されているように錯覚させているのだ。保毛尾田保毛男をなんの注釈も無いまま登場させるような失態を避けるための処置である。

やはり35年前と同じことをするにはコンプライアンスの壁は厚く、露天風呂では一応ふんどしをつけているし、猫男爵はすぐにパンツを履く。三村マサカズのシモネタはちゃんと注意されるし、大喜利の答えとしてだが「老害」とも言われる。率先して注意に回るのが内村光良その人なのも重要な点だ。実のところ、あとからダメだと言われているだけで、結局は当時と同じことをしているわけなのだが。まあ、往年の番組ファンからすれば充分だろう。

「見てた芸人」として出演していた中堅芸人の中では、出番自体は少なかったものの、さらば青春の光が印象を残していた。なんせ、過激なことをしたらしく3度も放送NGを出していたし、森田哲也の自宅ロケでは自分の私物をぞんざいに扱っていたし(音声だけだったが、どうも電化製品らしき何かを叩き壊したらしい)。さまぁ〜ずやバナナマンが「今、これ以上やるのは・・・」と躊躇する中で、さらば青春の光はコンプライアンスを軽々と乗り越えていくのである。『内村プロデュース』の後継者は、さらば青春の光なのか。たぶん違うけど、番組の作りとしては、何か託されている感じがした。

他方、ヒコロヒーがずっと出ていたのだが、ほとんど発言の機会もなく、空気のような存在だった。ヒコロヒーは、その場の芸人ノリと現代の価値観とのズレを的確に指摘する達人である。いくらでも発言の機会はあっただろうし、おそらく収録中は何度もズレを指摘していたのだろう。しかし放送には乗っていない。もしかしたら、ヒコロヒーでは芯を食い過ぎてしまい、番組の構造を壊しかねないと判断されたのかもしれない。今回の『内村プロデュース復活SP』を一言で表すならば、「ヒコロヒーの出番がない番組」だろうか。

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