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エッセンシャル𝒁𝒂-𝒔𝒂𝒏 𝒊𝒏 𝒕𝒉𝒆 𝒅𝒂𝒓𝒌

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はじめましてのひや奴はぽん酢になるためにこのリフトから飛ぶべし。誰がためにテクストは読まれぬ。
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#小説

イン・ユーテロ [小説]

イン・ユーテロ [小説]

Forever in debt to your priceless advice ―Heart shaped Box/Nirvana
(お前がしてくれるタダの忠告に俺は引き目を永遠に感じなきゃなんねえ
   ―ハートシェイプボックス/ニルヴァーナ)


キルケゴール的ハイパーコミュニケーション
の考察

 市内を南北に横断する有料通路が隣の群地に入りこむか入りこまないか微妙な境あたり、とはいって

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冒涜のマグロ (中編60枚)

1 わたしたち殺人事件

 マグロは三匹目だ。……またか。いい加減にしろ。受け身ばっかりだしなんなん……反撃の意志すらみせない……立派だと思っているのか……服従が?……きっとこいつは受け身でいてくれれば相手は幸せだと思いこんでいやがるんだ……思いあがりもいいとこだ!……世界ってのはこっぴどく……ぼろぼろになりながら……鞭をびんびんひっぱたかれながら必死こいてまわってるのになんだ……てめえらだけ楽

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読むことに時間の流れる、書くことに時間の流れる____小説論についてと乗代雄介「旅する練習」で考えたこととか

読むことに時間の流れる、書くことに時間の流れる____小説論についてと乗代雄介「旅する練習」で考えたこととか

読むことに時間の流れる

 私はこの3月で大学を卒業する身であり、昨年のうちは就活と卒論(とあといくつかのいらない余計なこと)に奔走していたものだが、どちらも日々の「読むこと」が実らせたものが多い。あまり「読むこと」のない同年代の人間と私は比べていいものかどうか知らんしそんなことする必要も筋合いも偉そうなこともできないが、なんだかんだでただ読んでいたことがどこかでつながったということは不思議なこと

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さよなら 女子高生(note版 58枚)

さよなら 女子高生(note版 58枚)

 軒下から失くしていたヘアピンが突び出した。きらりと眩しげな金属の光沢は油取神子の上目遣いのときに露わになる白目のそれに近いもの、するりとその光景がおつゆだく子の目に飛びこんできてセンセーショナルを巻き起こす。目玉と目玉の肉体的接触のような頭のてっぺんの生え際からかかとまでどーんとくる衝撃がだく子の心を骨抜きにして神子のモノになりました。ちょんぱちょんぱが癖なだく子は自他も認める醜さがあると思いこ

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数(アイドル)

数(アイドル)

第一章 永遠の詩           一九八九年九月九日に産まれた窮(キュー)は二十一歳の時に浮かぶ夏空の雲を食べた。
 雨の前日の風に似た舌触りの悪い味わいは、以後の彼の人生に根強く残った。彼の後任にあたる一九九九年生まれの窮はそれを運ばれてきたばかりのスープで舌を火傷して味がいつまでも残るのに似たものなのだ、と彼の話を聞いて感じた。永いあいだあの晩の紫色になった雲の味が染みついた。彼は誰にもこ

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蒼麗天然美少女金魚ちゃん

蒼麗天然美少女金魚ちゃん

 あれはこんがりな夏のことでした。四方木町の中池のほとりで夏休みに滝沼れる子と待ち合わせていましたの。私いちごみる子は猛暑の極みにヘロヘロで木陰に身を隠していました。けれど滝みたいに流れ続ける汗の止め方がわからなかったし帽子を忘れるというみる子のおてんば属性を発揮してしまったものだから頭はガンガンくらくらでとてもこれじゃ遊戯なんてできっ子ない。いっこうに滝沼れる子ちゃんが集合時間になっても現れない

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「百鬼姫」

「百鬼姫」

 __姉よ一体全体、どこで眠っているの? もう300回目の「お天とうさんのウェイク」だよ。世にそびえたち大地のシワの群れ、されど真っ赤な糸で縫い合わせる、この山ガールさちこは実家にハメこまれた姉貴のりこの部屋、そこに転がる一台のパイプベッド、その下から広がる〈霊峰いちごみるこ山〉に当の姉を探しにゆき十月が過ぎた。いまだにこの幽霊山でのりこのモノと思われる肉体や分泌液も発言も目にしてないし見つけるこ

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