めめこ

A3、和田琢磨さん、太宰治、その他見たもの感じたことの記録

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最近の記事

【劇評】売り言葉(平体まひろ)

本当に観に来て良かった。本当に..…… 仕事が終わらなくていけるかいけないかの瀬戸際だったが、なんとか観に来れた。 もともと野田秀樹作品が大好きで、さらにunratoの「三人姉妹」や文学座の「夏の夜の夢」で好きになった平体まひろさんが野田秀樹作品をしかも一人芝居で!!!これは絶対に最高だろうとチケットをとったが、本当に.……本当に、良かった。 小劇場であそこまで濃密な作品を味わわせていただく機会は初めてだったように思う。あまりに贅沢すぎる時間であった。  なお、観劇後すぐに

    • 【劇評】甘美なる誘拐

      2024/9/16 THEATER1010 先行で敗北していたが、見切れA席を取れたので観劇!2階席の手摺が視界をちょっと横切ってしまうくらいで、個人的には概ね問題なし。 令和の世に一発逆転ねらいたいヤクザの2人が、殺人事件や誘拐事件に巻き込まれながらも、宝くじで一発あてて有頂天!という話である。 ネタバレしてしまうと殺人事件の動機が「小説のネタの盗作」なのだが、この舞台が小説原作と思うと、やはり作家には盗作行為が死ぬほど嫌だよな.…と思ったりもした。 全体的に軽さのあ

      • 太宰作品に対する所感

        ※2023/10/16執筆 2023年の3月頃から、なんだか突然太宰治にハマってしまった。 ハマってからひとしきりあれこれ見て、先日遺作「グッド・バイ」を読み終えたところで、一度これまでの経緯と、現時点での、太宰治に対する総合的な所感を記し残したい。ひとまず作品から。 経緯文が書きたいという気持ちが数年前からふんわりと起こり始めた。 その頃翻訳文学だとか新書だとかしか読んでおらず、よく本を読んでいた幼少期は主にミステリばかり読んでいたもので、文章そのもののお手本となる

        • 【劇評】夏の夜の夢(文学座)

          2023/7/6 面白かった、、、、!面白かった!!!!!!! シェイクスピア作品を初めて舞台でみたけど、とっても面白かった!!!! シェイクスピアの戯曲の面白さを感じたし、喜劇ということを全面に出したコントのようなお芝居、まさに夏の夜の夢の中にいるような不思議な音楽、照明、舞台セット... 登場人物が多く展開が早くて、どんどんおかしな方向へ転がっていく様が良いし、夢現な演出にこちらまで本当にこの初夏に夢を見ていたんじゃないかと思わせてくれる。あとから思い出してあれは

        【劇評】売り言葉(平体まひろ)

          【劇評】Risky Game(MANKAIカンパニー)

          2024/4~5 マンカイカンパニー冬組第6回公演 主演:御影密 準主演:雪白東 ※この劇評は「MANKAI STAGE 『A3!』ACT2!〜WINTER2024〜」の劇中劇に対するもので、MANKAIカンパニーの客目線となります。 華やかさの演出についてここまでやるかの華やかさ。振り切った華やかさの演出って意外と難しいんだよあと見ていたら、多分あのカーニバルみたいなふりふりの衣装が一役も二役も買っている気がした。あれがないと画面がどうにも物足りなくなってしまう。 ま

          【劇評】Risky Game(MANKAIカンパニー)

          【劇評】剣に死す。(MANKAIカンパニー)

          2024/4〜5 マンカイカンパニー冬組第5回公演 主演:高遠丞 準主演:柑子木涯 ※この劇評は「MANKAI STAGE 『A3!』ACT2!〜WINTER2024〜」の劇中劇に対するものです。 音と光と影剣に死す、渋くてめちゃくちゃ格好よかった! 降りしきる雨音と剣の交わる音、「違う。違う。」と呟く武蔵、強まる雨音、そして小次郎が現れ二人が相まみえる….はじまりがすでに格好よすぎる。 雨音や太鼓や三味線の音などの静かであり効果的な音楽に加え、剣に死すの演出で一番印

          【劇評】剣に死す。(MANKAIカンパニー)

          【映画】パラダイス/半島

          2023/7/22 キノシネマ 映画全体にただよう空気感が好きでした。 夏のあのじっとりとした空気感、明かりの少ない夜にただぼんやり暗闇の音をきくような、静寂が印象的な映画でした。夏の夜中に家のテレビで流していたいような。 日吉は、竜と共に出頭することで、自分自身の心の隙間を埋めたのかもしれないなと思いました。 いなくなってしまった犬のロンが、日吉にとっての心の隙間の象徴のようなもので、ずっとぽっかりと何かが足りなかった。 竜を見捨てることもできたし見捨てたところで竜

          【映画】パラダイス/半島

          【展示】ガウディとサグラダ・ファミリア展

          2023/8/13 国立近代美術館 すっごく良かった。 ガウディの自然から倣う建築姿勢や、スペイン特有のイスラム教建築とキリスト教建築が混ざった様式(ムデハル建築というらしい)。あのステンドグラスが色とりどりに光指す教会の内部空間が、大自然の中にいるみたいに感じられて、自然と共にいきてきた人間の在り方みたいなのも思わされた。 長い年月、多くの人の力で受け継がれ今なお建設されているサグラダ・ファミリア。きっといつか完成し時が経ったときに歴史に大きく名を残す建築物になるんだ

          【展示】ガウディとサグラダ・ファミリア展

          【劇評】月の岬(unrato)

          2024/3/20 配信 舞台セットについて「三人姉妹」で知って、そのあまりに拘りの感じる美しい演出に、unratoの作る舞台が大好きになった。 月の岬もまた、配信でもわかるほど惚れ惚れする美しい舞台で、現地での鑑賞だったらより一層あの恐ろしく歪で底知れない空気感を味わっていたのだと思う。 暗闇に鮮やかな色彩がくっきりと輪郭をなして浮かび上がるようで、静かで、それでいてこちらに訴えかけてくるような力強さ。 unratoの作る舞台は、フェルメールやレンブラントに代表され

          【劇評】月の岬(unrato)

          【劇評】夜への長い旅路(CEDAR)

          2023/9/18 逃亡きっかけにまたCEDARさんの演劇が見てみたくて観劇。 家族皆が目を背け恐れる「夜」へゆっくりとしかし確実に進まざるを得ない話だった。 だからタイトルはやはり『夜への長い旅路』。 本編について理解できないことを理解しようとしたり、どうにもならないことをどうにかしようとしたり。愛しているけど自分のことが最優先になってしまったり、相手の不幸を願ったり。 誰も悪くないのにどうしようもなく上手く行かない、そういう人生の多面性を奥行き深くリアルに映し出し

          【劇評】夜への長い旅路(CEDAR)

          【劇評】三人姉妹(unrato)

          2023/9/24 私がチェーホフに求めていた質感すべてが舞台上にあって、3時間全く飽きずに味わい尽くさせて頂いた。 舞台美術・照明・音楽について 人生に対するやるせなさ虚しさみたいなものを儚く美しく物悲しく。それがそのまんま舞台上にあった。 奥行きのある舞台を上手く使っていて、重厚な家具や円柱のある空間はそれそのものが美しくて良かった。 ライトは控えめに、キャンドルの光がそこらじゅうをうっすらと照らしているシーンは沈鬱なようでいて幻想的でもあり、自由劇場の雰囲気にとっ

          【劇評】三人姉妹(unrato)

          【劇評】ガラスの動物園/消えなさいローラ(COCOON PRODUCTION)

          2023/11/11,12,19 紀伊国屋ホール 3回分和田琢磨さんの回を鑑賞。 なんだか余計な事もいっぱい書いてしまったように思うが、2023年11月20日現在の自分の考えたことをそのまんま形に残し、近い将来「あ〜未熟だな〜」なんて振り返る材料にしたい。 ガラスの動物園●演出・音楽・光について ①演出について とにかく画面が美しく、どこも絵になった。 戯曲を読んだときにあまりにも儚く繊細な美しさのある世界に「これを舞台で再現できるんだろうか」と不安にすらなったが

          【劇評】ガラスの動物園/消えなさいローラ(COCOON PRODUCTION)

          【劇評】贋作・桜の森の満開の下(夢の遊眠社)

          2023/11/4 DVD視聴 作・演出 野田秀樹 野田秀樹作品の分からなさと面白さについて野田秀樹作品というのは前提知識が色々と必要な上、言葉遊びが非常に多くかつ時事ネタが散りばめられているだけでも大変なのに、さらに基本的に3つほどの世界が重なり合うような構成になっていることが多い。 だから噛みごたえがありすぎるほどあり、なかなか何回観ても咀嚼仕切れない部分もあるが、だからこそ何度観ても面白いのだと思う。むしろ分かりきれないからこそ面白いというか。 分かることと面白い

          【劇評】贋作・桜の森の満開の下(夢の遊眠社)

          【劇評】オイディプス

          2023/7/17 パルテノン多摩 作:ソポクレス 翻訳:河合祥一郎 演出:石丸さち子 ギリシア悲劇みたさにチケットをとったらまさかの三浦涼介さんだった。(同窓会のひとだ……)し、三浦涼介さんの演技に圧倒された。 とにかくまず似合いすぎる。あのお顔にオイディプスが似合いすぎる。 そしてゆうひさん共にお二人夫婦(そして母子でもあるが……)がとても高貴で素敵でした。 オイディプス、本人は至ってまともであろうとして、運命に逆らおうと頑張ったのにどうにも足搔きようもなく悲劇へと

          【劇評】オイディプス

          駅舎の妖精

          「カレーだよ、ここに来たらこれ一択」    メニューを前にあれやこれやと悩む私たちの眼前に、にゅっと大きな手が伸びてきて、「激馬カレー」の文字をとんとん軽快に叩く。見上げるとチェックのワイシャツのおじさん。礼を言うと、彼はうんと頷いて、私たちが注文を終える時には向こう側のカウンター席へと消えていた。  本州の最果て。青森県。津軽地方。太宰治が生まれ育ったこの土地に、私たちは来ていた。いわゆるゆかりの地巡りというと聞こえはいいが、太宰の本を読み始めて間もない、まあただのミ

          駅舎の妖精

          サブカル女と墓参り 

          墓石の間をきょろきょろと見回しながら歩く。天気予報よりすこし早く曇天となり、あたりには自分ひとりしかいなかった。  墓石に刻まれた字は読みにくい。早々に文字を追うのはやめた。入口の案内板にあった番号は五の八だったっけ。それとも八の五かな。などと頭の中でぶつぶつと繰り返しながら下を向いて目的の数字を探す。 「ここは太宰治のファンが沢山くるから」 不意に聞こえた声におどろいて顔を上げた。ひとつ隣の通路にいた初老の男性とばちりと目が合う。ああ、失敗したとすぐに目を逸らす羽目にな

          サブカル女と墓参り