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【劇評】剣に死す。(MANKAIカンパニー)
2024/4〜5
マンカイカンパニー冬組第5回公演
主演:高遠丞
準主演:柑子木涯
※この劇評は「MANKAI STAGE 『A3!』ACT2!〜WINTER2024〜」の劇中劇に対するものです。
音と光と影
剣に死す、渋くてめちゃくちゃ格好よかった!
降りしきる雨音と剣の交わる音、「違う。違う。」と呟く武蔵、強まる雨音、そして小次郎が現れ二人が相まみえる….はじまりがすでに格好よすぎる。
雨音や太鼓や三味線の音などの静かであり効果的な音楽に加え、剣に死すの演出で一番印象的で毎公演じっくり味わわせて頂いたのは光と影の演出だった。
ライトを斜めから入れる演出が多く、そのライトによって生み出された人影がまた格好良いのである。
武蔵と小次郎の対決シーン直前なんかは特に交差する二つのライト、上からそれぞれ青のライトが垂直に照らしていて、非常に絵になる印象的なシーンだった。
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また、初日は上から舞台を見下ろす形で観劇したため、この光と影の表現の格好良さがよりダイレクトに感じた。おりんが三味線を弾くシーンなど、壁に映った姿が陰絵のようで美しく、びっくりした覚えがある。また、床に落ちる勾玉のような雫のようなゆらゆら揺れるライトが見られるのも、上階席の特権だと思う。
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俳優さんの演技について
特に好きなのが平六の「俺はおりんさんのために…!」あたりと小次郎のラスト死ぬシーン。
平六の人間臭い演技がとても好きで、言い訳をし、報われず、惨めにふらふらと去っていく姿がとても良かった。満開カンパニーの脚本は結構いい人が多い印象だけれど、平六の普通さ、そして普通の人の弱さみたいなのが上手く味を出せていて、紬さんの演技の繊細さってこういうところなんだよな〜と改めて思えた。本当にいい演技だったな。
そして小次郎の死ぬシーン、すごすぎた。これは現地でもいいけど配信で見た時に震えてしまった。お主の死ぬ場所では…と言いかけて息絶える時の顔と言うか目の動きというか、上手すぎる…ガイさん…2回目の公演であんな演技ができてしまうなんて…
本編について
日本人にもかかわらず元ネタがほとんど分かってない(名前と剣豪ということしか知らない…)のだが、あくまで満開カンパニーの『剣に死す』公演の話をしたい。
死に場所を求め、死に値する相手とまみえるためだけに生き戦う武蔵は、ようやく小次郎という相手に出会えたはずなのに、結局またひとりに戻ってしまう。
道を極めるものはどこまでもひたすらに孤独である。
それでも極めた道を降りることはできないし、その先にあるはずの何かを追い求めてひたすらに進むしかない。そんな孤独の間を永遠に彷徨うような武蔵のかなしい後ろ姿は印象的だった。
思えば、『剣に死す』に出てくる登場人物たちは、剣を持ったものたちだけが孤独を彷徨い続けているように思う。
武蔵、小次郎はもちろん、兄弟子を失った殺し屋銀も殺し屋を使った平六も。皆つめたい冬の日を呆然と何かを見つめながら歩いていた。 その中でおりんと藤次郎だけが結ばれ、あたたかな家に帰っていく。
この対比のシーンがなんとも味わい深く、人のさまざまな人生が描かれる演劇らしさと言うのも感じられた。
周辺知識
武蔵と小次郎が決闘したのは4/13。ちょうど公演もあった日だった。
https://www.mojiko.info/6toku/musasi.html