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エッセイ

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主に昔語りと創作。 つまらなそうだ? そうでもないぜ。
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ほぼ皆さんにはどうでもいい話

ほぼ皆さんにはどうでもいい話

40過ぎくらいから白毛が出てきた。

理容師のお姉さんに「一度染めると一生染めなきゃなんないですよ」と言われたにもかかわらず、ヘアカラーに手を出したのが50歳手前。
風呂場で自分で染めていたのだが、これはわりと上手に仕上がって、見た目はぐっとマシになった。

ここで一応わたしの白髪対策は落ち着いて、その後10年過ぎるうちには、月一回が二回になり、やがて二週に一回くらいの頻度で染めるようにはなっては

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八百万

八百万

働く場所に神棚というのは、私たちが普通にみる風景だ。

古来、八百万の神などといって、我々は森羅万象ありとあらゆるものに神様の姿を見出してきた。

そういう流れで本邦では、暴力団の事務所から中小企業の営業所に至るまで、しばしば神棚がしつらえてあるのを目にすることができる。
国家を代表する大企業の、自社ビルの屋上あたりに、ひっそりとお宮が祀ってある様子も、特に珍しいものでもないだろう。

そしてこれ

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菩薩生を生きたい

菩薩生を生きたい

昨夜はなぜだか炊き込みご飯が食べたくなったのだが、冷蔵した白飯がけっこうな量残っていたので、白飯に後から具を混ぜ込んで味をつけるという、荒技に出た。

まぁ望んだものとは違ったが、それなりのものはできたので食卓に出したら、明らかに連れ合いの反応が悪いのだ。
どうも口に合わなかったらしい。
おのれ生意気な。

何となく不貞腐れていたら、こちらの不穏な気持ちが連れ合いに伝染したのか、今度は食卓に出した

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色の話

色の話

先日、水彩画を教えていて、「このビリジャンがですね・・」みたいなセリフが口をついて出たのだけれど、ビリジャンだとか、クリムソンレーキとか言っても、残念ながらほとんどの人には伝わらない。

それはもうずっと前から、それこそ人に教える仕事を始めて以来、身にしみてわかっているのだから、もういいかげん別の言い方を考えろと、自分に対して歯痒く感じている。

ここまで書いて、ということは読んでいる人にも伝わら

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成功体験

成功体験

木工機械の作動音が途切れたとたん、仕事場に流しているラジオが唐突に問う。
「マラソン」といって思い出すのは何ですか?

えっマラソン?
宗兄弟? イカンガー?
頭の中でつぶやいて、その連想のあまりの古さに自分で感心してしまった。
まぁしかし、あの人たちは実にキャラが立っていた。
ワンツーフィニッシュを決めるメガネの一卵性双生児とか、全てのレースでスタートからゴールまでずっとトップを譲らない謎のアフ

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認知症とか職員会議とか

認知症とか職員会議とか

今週、朝ドラの余貴美子の演技が話題だ。
主人公の夫の義母の役なのだが、それまでの穏やかな雰囲気から打って変わって、認知症の発症から進行の様子を見事に演じている。

わたしはわりと楽しく見ているが、この作品自体にはいろいろな意見もあろう。
ただ、確かに彼女の虚な目の演技は、わたしの見知った認知症の人の目で、役者というのは大したものだと思った。

朝ドラや大河ドラマに代表されるが、総じてNHKのドラマ

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24時間テレビ考

24時間テレビ考

24時間テレビには興味がないし、見たこともほぼない。

それでも第1回の時には少しだけチャンネルを合わせていて、ピンクレディーが歌っていたのを覚えている。
1978年、高校1年の時であった。

実はその3年前に、ニッポン放送で「チャリティー・ミュージックソン」と言うタイトルで、24時間ラジオが始まっている。
萩本欽一が全盛期を迎えようという時期で、ニッポン放送の「欽ドン」は中学生だった自分にはお馴

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台風とルーツと

台風とルーツと

今回の台風で被害が出たということで、宮崎市の佐土原町の映像がニュースで流れていた。被害に遭われた方には、一刻も早い復旧をお祈りする。

ところで佐土原は「さどわら」と読む。

なぜこのニュースに反応したかというと、佐土原は、わたしの父が中学の時に養子に出された先の苗字であるからだ。
父親の人生については、noteを始めた頃にまとまった文章を書き、マガジンにまとめてある。

父は、鹿児島出身の立志伝

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狙撃者再び

狙撃者再び

四十肩だか五十肩だか、もう還暦を過ぎているのだから本当は六十肩なのだが、とにかく2年ぶりに肩痛が再発した。

経験した諸氏にはご存知のことと思うが、これはとにかく痛い。

例えば友人の夫君は、ある日、駅のホームで荷物を持とうとしたはずみに発症したらしく、あまりの痛みにその場にうずくまってしまったという。

友人は、肩を押さえたままピクリとも動かない夫の、あまりに尋常でない様子に動揺し、「これは何者

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見られた夢

見られた夢

昨日の続きかというとそんなことはない。

前も何かで書いたが、大学の演劇サークルに「ヘラヘラ」というあだ名の女の子がいた。別にへらへらしているわけではないが、本人を知ってしまうと、そうとしか呼び様のない雰囲気を放っている、不思議な子であった。

とにかくある時その子がいうのである。
「昨日、タグチさんの夢を見ました」と。

もちろん大いに興味を惹かれて、いったいどんな夢だったのかと訊ねた。
「えっ

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見た夢

見た夢

そういえば楽しい夢を見ない。
楽しいというのは、別に幸福な夢ということではなくて、どちらかというとふざけた夢のことだ。

子供の時は誰でも奇天烈な夢を見るものなのか、よくは知らないが、わたしに限っていえば、中学生くらいまでは崖から落ちたり、空を飛んだり、ばけものに追いかけられたりする夢を頻繁に見ていた。

それが精神の成長とともに、いや、堕落とともにかもしれないが、とにかくだんだん舞台も登場者もリ

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空振り台風の後始末

空振り台風の後始末

気の進まない仕事というものがある。

まぁどんなに気が進まなくとも、だいたいいつかはやり始めるのだが、困ったことにそういう仕事は一つとは限らないのだ。

数ある気の進まない仕事が放置されている中で、どうやって優先順位をつけるのか、実は自分でも確固とした基準はない。
何となく思いついたものに手をつけたり、あるいは先延ばしにしたりして日々過ごしている。

こんなことを書くと怠惰な人間だと思われるかもし

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万引き老人と自分の話

万引き老人と自分の話

テレビでは老人の万引き犯の話をやっている。

店を出たところで捕まって、未精算の商品を前に「支払いを忘れただけだ」と言い張る老人。
なかなか切ない場面である。

もう10年以上前、まだレジ袋が無料だった頃だ、もしかしたら20年くらい前かもしれない。
私は近くのスーパーで買い物をした。

会計をして、家に向かって500mも歩いただろうか。
ふと何か強烈な違和感を感じたのだ。

何か決定的な間違いを犯

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スパイス!

スパイス!

「自分で作ったごはんは食べ飽きない」
この出だしの一文にうなずいた。
木室さんの記事である。

確かに自分で作った料理を不味いと思ったことはほとんどない。
もちろんわたしも、クリームコロッケを爆発させた残骸だとか、片栗粉を入れすぎて、スライムのようになった餡かけだとか、二度と口にしたくないものも作ってきた。

ではあるが、概ね自分の作ったものは美味いと思って食べている。

そのわけを、木室さんは自

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