ある日私は障碍者になった~(10)バナナに不戦敗
休んでいるんだけど休んでいない、そんな不毛な日が長く続いている。
休職中だからゆっくり心身を休めればよいものの、敢えて過去のトラウマを乗り越えようと対峙してみようとしたり、将来への不安に過剰に怯えてみたり。見た目はジッとして動いていないのだけれど、頭の中では「あーでもない、こーでもない」の堂々巡りが延々と繰り広げられている。
私はもともと「自分の乗る飛行機は落ちるかもしれない」というように最低最悪のシナリオを前提に考えるクセがある。先回りしてあれこれ考えるから、危険察知についてはちょっと自信があるのだけれど、大概は考えすぎのくたびれもうけに終わる。
だけど、このたびはちょっと違う気がしている。ボタンとボタンの掛け違いがあまりに立て続けに起きたせいで自分の想像を超える事態になってしまった。解決策を導き出す方程式を頭の中で探せども探せども、みつからない。
くたくたになって、バナナを食べようと伸ばした手が途中でとまった。
「バナナを袋からだして、1本房からちぎって、皮をむいて、パクり」という一連の動作を頭の中で思い浮かべたときに、全てがめんどくさくなった。
私はバナナを食べるのを諦めた。
バナナに負けた。戦ってもいないから不戦敗だ。
ベットのうえに転がって昼日中から「もう無理」とさめざめ泣いた。悩むにも泣くにも疲れ果て、気が付いたときには日はとっぷりと暮れていた。
こんな日もある。
やってみなきゃわからないことだって世の中にはたくさんあるのに、すっかり臆病になってしまった。復職するにも転職するにも最初の1歩を決断すること、これが実に難しい。
※ありがとうございます
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