ある日私は障碍者になった~(1)精神障害者手帳取得編
はじめに
私はこの春、「精神障害者手帳」の交付を受けました。まだ手帳については初心者ですが、いわゆる精神科・メンタルクリニックに通いはじめて15年以上になります。ここに書かせて頂くことによって、「あたらしい自分」を知ると同時に、すべての生きづらさを抱える人たちと一緒に歩みを進めていけたらと思っています。
私は「害」という文字が苦手なので正式名称を表記するとき以外は、敢えて「障がい」「障碍」というように表記します。「害」という文字がもたらす偏見についてはまた追々に書いていこうと思います。
制度は向こうから歩み寄ってきてはくれません。ある程度の情報を集め、自分から申し出ることが重要だと経験から学びました。私を助けてくれたものも可能なかぎりご紹介していきたいと思っていますが、それぞれの方のご事情、お住まいの自治体、環境によって利用できる制度も異なると思いますのであくまで参考例としてお読みください。
「精神障害者保健福祉手帳」
これが正式名称です。
精神保健指定医等の診察を受けた「初診日」から6ヶ月以上経過した時点の診断書をもとに1~3級の等級に該当するか審査されます。
診断書にも種類がいろいろありますし、精神科・メンタルクリニックごとに料金設定が若干異なるようにも思います。ちなみに私の主治医が障害者手帳取得のために書いてくれた診断書は5,500円(税込み)。
医師が書いた診断書は本人が中身を見ることができないように厳重に封をしたままクリニック受付で渡されます。そのままお住まいを担当する区役所等へもっていきましょう。自治体によって名称や手順は違うかもしれませんが、「障害者手帳申請書」なんてものを窓口で書きます。そのときに封をしたまま医師の診断書を添えて提出しましょう。
医師から診断書を受け取ったならば、できるだけ早く提出したほうが良いです。私の場合は3月中旬に窓口に申請、審査結果が自宅に届いたのが約1ヶ月後。交付日は役所に申請書を書いた3月中旬の日付まで遡るので、申請手続きは早いに越したことはありません。
交付決定通知を受けて障害者手帳を役所窓口に取りに行く前日は、なんだか緊張して落ち着きませんでした。今日の私と明日の私が何か突然変わるわけでもないけれど、ほぼ一睡もできずに朝を迎えました。
そこから、等級によって減免、割引など利用できる制度の手続きを1つ1つあっちへ行き、こっちへ行き…重労働です。私は1人で頑張ってしまいましたが、「障害者手帳の交付を受けたので手続きをお願いします」と何度か言っているうちに、自然と「私は障碍者」ということを受け入れる心の土台もできていきました。
但し、ご自身の体調によっては助けてくれる家族、友人、支援機関と繋がってヘルプをお願いしたほうがいいと思います。
ちなみに私が真っ先に手続きしたのが地元のバス等公共交通機関の割引き申請と、携帯プラン割引の申し込みです。等級によって手続きの範囲もまちまちなのですが、私の場合は今まで積立てきたiDeCo(個人型確定拠出年金・イデコ)を障害給付金(一時金)として全額非課税で引き出すことができるとわかり、申し込んだところです。iDeCoは節税対策くらいのつもりで初めていた私は、手帳を手にすることで得られる所得控除枠の方が大きかったので躊躇なく解約というかたちをとり、療養中の生活費に充てることにしました。
「自立支援医療等受給者証(精神通院)」
実はもう1つ手帳が存在します。「障害者手帳」と「自立支援手帳」は連動しているわけではありません。私は長らくこちらの「自立支援手帳」のみを使っていました。こちらは医療費支援を受けるための手帳です。
※こちらは顔写真の用意は不要です。
私の通院歴が長いということは最初にお話致しました。世に言う「うつ病は心の風邪」=「誰でも罹患するもの」という言い方は間違っていると個人的には思っています。「心の骨折」の方が適格だと私は思います。個人差はありますが、かなり長丁場になることを覚悟しておいてください。当然、医療費はかさみます。おまけに精神疾患系の薬を服用していると生命保険に加入できませんので、複数の病気を抱えると金銭的に苦しくなります。
病院への交通費、診察代、薬代…なんとかならんものかとあるときネットを探していた時に偶然見つけたのがこの制度です。主治医の先生に「自立支援手帳」を使えるかどうかまずお確かめになってみてください。私も自分から主治医に申し出ました。この手帳取得のための診断書をもらったら、前述手続き同様に封を開けることなくそのまま速やかにお住まいの区役所等で手続き申請してください。その手続き(控)を病院で確認されることになるので大事に持って帰りましょう。
更新の都度、診断書を書いてもらって役所に平日に手続きに行くという手間はかかりますが、ここで登録した精神科・メンタルクリニックに加えてその医師の処方箋を提出する薬局の利用に関しての費用は随分とラクになるはずです。転院したり、薬局を変えるときには速やかに役所で変更の申し出をすれば、特に更新時期でなくても対応してもらえます。
細かな要件があるのだと思うのですが、そこは主治医の先生や受付、役所窓口で確認してみてください。私は診断書料金を除けば、自己負担無しで受診させてもらっています。その診断書料金も休職が長期化して無給状態の私には痛い出費...。
私が障害者手帳を取得するまで
(1)障害者手帳を受け入れられなかった若かった頃の自分
自分の精神科・メンタルクリニック通院歴が思いのほか、長期化してしまっている自覚はありました。私の初診の主治医の方針は「患者に病名を診察時に告げることによって、その病名につられてしまう悪影響」を鑑み、病名を伏せるというやり方でした。傷病名はうすらぼんやりとしたグレーの中で、たぶんいつか治るだろうとも若い頃の私は思っていました。
先に申請をしていた医療費支援を受けるための自立支援手帳の更新時期に受付でお会計をしようとすると、なぜか診断書が2つ。障害者手帳用の診断書も特に主治医から説明もなしに用意されていました。
そのときの私は「私はまだ大丈夫」「先生の何かの間違い」と思って受付で自立支援手帳更新用の診断書の支払いだけ済ませ、役所での更新手続きをしました。それから、主治医が私に障害者手帳のことを話すことはありませんでしたし、私も尋ねませんでした。
(2)障害者手帳取得に反対する医師
その後、勤務地の都合で私は通いやすい近くの病院へ転院しました。ここで私の状態は様々な要因が重なって悪化の一途を辿りました。仕事や日常生活にまで支障をきたしはじめ、いよいよこれは困ったものだと追いつめられてきました。
これは障害者手帳を申請するべきではないだろうか?
精神疾患を抱えているとどうしても心身の良い時、悪い時の波があります。良い時には今までまわりに迷惑をかけたぶんだけ取り戻そうとしゃかりきに頑張るのですが、負荷をかけすぎてまた倒れるという悪循環。
長くデスクを空席にしてしまった罪悪感もあって、私が仕事を続けるために勤務先の「障害者雇用率」に貢献するでもしないと退職勧奨を受けるのではないだろうかと勝手にネガティブな考えも持っていました。
それとは逆に「障害者手帳」を取得することによってどうしても、あれもこれも引き受けて頑張りすぎて倒れてしまう自分にブレーキをかけるべく意識改革をしようというポジティブな考えも同時に持っていました。
現実的なことを言うと、休職が長期化して金銭的な悩みも手帳取得を真剣に考えた要因の1つです。
転院した先の医師はこう言いました。「障害者手帳は本当に困っている人が使うもの」「仕事辞めて転職するなら診断書は書いてあげる」「障害者手帳を取得すると、職場復帰したときにあなたのやりたい仕事がやらせてもらえなくなるから、やめておきなさい」「障害者手帳を取得すると落ち込むからやめなさい」こんな具合でした。
私の職場の上司にも障害者手帳取得を考えていると相談はしました。その上司が主治医のところに出向いて相談をしてくれた結果、さらに手帳申請の話は遠くへ先延ばしされました。上司と面談を終えた主治医からは「あなたは気を遣いすぎる。課長さんもあなたは仕事ができるから、障害者手帳は必要ないと言ってる。だから要らないね。」と。
私はもうこれ以上公私で頑張りすぎたら取り返しのつかないことになると、再度申し入れた結果。「じゃぁ、あなたはもう普通の仕事ができないということね!それで良いのね!じゃ診断書書くよ!」…そ、そうですか。
確かに障碍者雇用枠採用では賃金が低めに設定されていたり、やりたいと思う事ができないと葛藤に苦しむ人もいらっしゃるかもしれません。すべての会社がそうとも限りませんし、そうであってはいけないと思います。逆に自分のしんどいこと、苦手なことを職場に伝えるための「印籠」として守ってもらおうと、個人的には思っています。もちろん、手帳を所持しながらもそれを必ず会社に伝える義務があるわけでもありません。自分で生きる道を選べは良いことだと思っています。精神疾患には波があるとも申しました。元気になったときにはその手帳を返納することだってできます。それはその時にならないとわかりません。
この主治医はどうやら'公助'がお嫌いのようで。うすうすは気づいていました。
確かに思い返せば、診察室で政権の政策について主治医とケンカしたことはあるので…こんなところで見解の相違としてでてしまいました。障害者手帳取得のための診断書を書いてもらうのに10ヶ月の押し問答。
こうして私はやっと精神障害者手帳を取得することができました。
これだけ障害者手帳取得に反対した医師の診断書によって…私は障害等級・2級となっています。感覚過敏により、音や光がしんどくてテレビも読書もできていません。
この主治医ともお別れをしまして、4月からは新しいクリニックで安心してお世話になっています。
今日はここまで。少しずつ書いていきますね。応援してくださる方はイイネ、シェア、おススメなどしてくださると励みになります。
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