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記事一覧
『ドライブイン・真夜中』書評|まなざしを、借りる(評者:荻上チキ)
そう遠くない、未来の「この国」。多くの飲食店では、店内接客が無人化されており、注文、調理、配膳などが、自動化された機械によって行われている。一方で、低価格な飲食店の中には、機械化されていない諸作業を、移民労働者が担う場合もある。「わたし」が働くドライブイン・レストランもまた、そのひとつである。
「わたし」が仕事を終え、帰宅しようとしたある日のこと。レストランの外で一匹の珍客と遭遇する。犬である。
『単語帳』書評|生きた言葉と生きる分身たち(評者:鴻巣友季子)
グレゴリー・ケズナジャットの作品で初めて読んだのは、京都文学賞を受賞した「鴨川ランナー」だった。もともと同賞の「海外部門」(日本語の非ネイティヴを対象とする)に応募して最優秀賞に決まったが、結果的には、「一般部門」(応募者のほとんどは日本語ネイティヴ)の最優秀賞もダブル受賞することになったという。
この授賞は日本においては画期的なことだった。だれしも自分の言語は無二のものと思っているが、わけて
『犬小屋アットホーム!』書評|クマへの詫び状(評者:村井理子)
犬を愛する人の多くは、犬に関する忘れられない思い出を持っている。
私が小学生のころの話だ。兄が突然一匹の子犬を拾ってきた。生後一ヶ月ぐらいの黒い犬で、胸のあたりに少しだけ白い毛が生えていて、それを見た母が「ツキノワグマみたいだから、クマって名前にしよう」と言い、その雄の子犬はその日からクマとなり、わが家のペットになった。
クマはとてもかわいくて、明るくて、愛嬌のある子で、私はひと目見て大好き