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ととろん
2021年11月19日 15:27
・・・・まもなく、貨物列車が通過します 黄色い線の内側にお入りください・・・・まもなく、貨物列車が通過します・・・・・ ・・・黄色い線の内側にお入りください・・・沈み始めた夕焼けの色が、貨物列車の赤色と重なる美しさで、「もう思い残すこともないな、この駅に」そんな思いが湧いてきて、体がどう動いていたか、覚えていない。赤が紅になって、目の前一面が真っ赤になり
2021年12月16日 07:58
ぼんやりしていても、落ち込んでいても時間は止まってくれない。ひきこもりのような生活に辛うじて、一人暮らしの状況が、数日に一度の食料と日用品を買いに、近所のスーパーに足を運ばせる。だがそれだけだ。あとはずっと、何をするわけでもなく、ぼんやりとしている。相変わらずお風呂に入るのも3.4日に一度、熱い時期には激弱の太ったおじさんなのに。髪も3月末から一度も切っていない。こんな
2021年12月19日 06:39
自分の好きなことに、自分の意思で、手を伸ばす。落ち込んだ状態だったとしても、それができる心の状態かどうかはかなり大きい差があると感じながら過ごしていた6月の日々。しかし、時は待ってくれない。回復は至らず。病休は終わりが見えてきた。6月下旬。校長先生から電話が入る。「もしもし、ととろん先生ですか?今日はこの後のことについて電話を差し上げました。」「はい、そうですよね。こちらは
2021年12月20日 06:05
一度、大きく息を吸って、深呼吸をする。決断したことを伝えることは、やはり緊張しているようだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「おはようございます、ととろんです。今診察が終わりました。」「おはようございます、ととろん先生。具合はどうですか?」「眠りが取れないのがひどくなっているので、薬の量が少し増えました。」「そうですか、、、きついですね。」「はい、すみ
2021年12月21日 10:20
退職。そう決めてしまうと。落ち込む気持ちではなく、安心した気持ちになれた。もう、あの現場に行かなくてもいい。そのことがはっきりと決まったからだ。今回、うつになってしまった一番の要因は。間違いなくあの現場での4月の状況、そこにいた職員との軋轢であると、この3か月ほどの自分の状態を振り返って、確信していた。なので、あの職場に戻らなくてよくなったという事実は、自分の心の中
2021年12月22日 03:13
退職の手続き、自分で全部進めていくのは初めてだ。退職の意向を伝えてから、7月に入り、一週間ほどした頃、校長先生より連絡が入った。「ととろん先生、お加減はどうですか?先日ととろん先生の意向を聞いたうえで調べて分かったことをお伝えしようと思って連絡差し上げました。」「ありがとうございます。よろしくお願いします。」「はい、まず、先日私にお伝えしてくださったとおりに、病休期間ののちは、
2021年12月23日 05:37
・退職の理由について記入してください。『今年度、異動となり○○小学校勤務となりました。異動後の4月10日、帰宅途中に貨物列車に飛び込もうとしてしまいました。異動先の職場でのストレスで心が限界を超えてると判断し、翌日赴任校の校長に相談のうえ、4月12日に心療内科に診察に行きました。うつ病との診断が下り、翌4月13日より、病休を取得の上、自宅にて投薬と療養で回復に努めてまいりました。しかし、病休も
2021年12月24日 01:00
7月末日、退職の日。その日は土曜日だった。もう一つのイベントが、その日のスケジュールには入っていた。あーさんの結婚式。あーさんは、昨年度、別の学校で一年間、同学年を受け持った相棒だ。僕より一回りも若いが、しっかりしていててきぱき仕事をするあーさんは、久しぶりに出会った、子どもに対する熱量も同じくらいの、先生という仕事に全力で取り組む、素敵な人だ。あーさんは、僕が病休にな
2021年12月25日 00:40
「いらっしゃいませ!3番へどうぞ!カットのオーダーの券を買うと、その音に反応して威勢の良い案内の声。もう10年以上お世話になっている、1000円カットの理髪店。いつも短髪もしくは丸刈りでお願いするけれど、ここで顔そりと洗髪までしてもらうのが、一番気持ちがいい。オールで1800円。月に一度は髪を切りたい気持ちになる僕には、ありがたい値段とサービスのお店だ。だが今回は4か月
2021年12月26日 00:10
時間はあーさんの結婚式の週の週初めにもどり、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「ととろん先生ですか?退職願、本日受け取りました。 手続きはこちらで進めますので、引き続き療養されてくださいね。」校長先生から、退職願を受け取ったことの連絡が入る。「ありがとうございます、よろしくお願いします。」療養に専念、【休む】事がこんなにも大変な事だったのだと痛感させられてきた
2021年12月27日 00:10
7月31日土曜日。真夏の暑さが世界を包んでいるような晴天の夏日に、礼服のスーツと、白のネクタイ。今日は、あーさんの結婚式と披露宴だ。あーさんは、本当に奇麗で。幸せそうで。職場で相棒の時のあーさんの顔しか見ていなかった僕は、「あーさんは、そっかまだ20代の女の子だったんよね。」相棒としてのしっかり者で、頼もしいあーさんの印象が当たり前すぎて、夫さんと一緒に式を挙げる彼
2021年12月28日 00:11
「ではいきましょうか、ととろんさん。」たてなくんが車で家まで来てくれた。8月1日。日曜日。無職になった初日。校長先生と打ち合わせて決めた今日、元職場に残った荷物を取りに行く。荷物の量はどれくらいだっただろうか。たてなくんの、車には、息子君もついてきてくれている。後部座席を全部、まっ平にできるファミリータイプの車で。果たして運べるかどうか。それぐらいの荷物だ。僕は車を
2021年12月29日 01:31
「荷物は、もともと置いてあった教室から廊下にまとめておきました。 あと、ととろん先生の退職について、昨日付で辞令書が出ているので お渡ししますね。」辞令書を受け取ると、初めて正式にもらったその内容は【退職について承認する。】という簡単なものだった。「ありがとうございます。」受け取ると、たてなくんと、たてなくんの息子君と3人で、荷物を車に運び込む。自分で考えていたより
2021年12月30日 00:22
「ととろんのおじちゃん、またね。」「じゃあ、ととろんさんまた夏休みの間に顔見に来ますね。」たてなくんとたてなくんの息子君は、自宅の部屋の中に荷物を運びこむところまで付き合ってくれて、帰って行った。本当にありがとう。運び込まれた荷物を見る。隣の部屋の半分3畳ほどを占めている。本当に、沢山あったなぁ。しみじみと眺める。あの時使ったもの、あの時楽しんだもの、ほぼ毎日使っていた