天津イースト&ウエスト
夕飯はおつまみいろいろとビールというスタイルが好きなので、あまりごはんものを食べることはないのですが、この間ふと入った街中華でメニューを見ていたら、天津飯が目に入りました。
といっても注文したわけではなく…いや、できなかったんです。
というのも、ここ数カ月の卵の値上がりが原因で、その中華屋さんのメニューの天津飯の文字の上には、販売休止の貼り紙がされていました。よく見ると、味付け玉子もおなじです。卵が高くなって、おうちごはんも困っていましたが、ラーメンのトッピングから味玉が消えるなんて…。早く落ち着かないかなあと思います。
🦀日本生まれの西、東
ところで天津飯、発祥は日本なんだそうです。
中華の定番、“芙蓉蟹(フーヨーハイ)=かに玉”をごはんに載せて誕生したということですが、もともと丼という料理がある食文化の中では、自然と生まれやすい環境があったのかもしれません。カツ丼、親子丼も卵とじだし、ずばり玉子丼だってあるわけですしね。
そんな天津飯、上京してはじめて食べたとき、ちょっと驚いたことがありました。
天津飯はもちろんごはんに載せたかに玉の上から、餡をかけて完成するわけですが、その餡が問題。関東と関西で味付けが違うんですよね。
関東は甘酢餡。ちょうど酢豚の餡のようなあれです。いっぽう関西は中華スープがベース。そのまま鶏ガラスープにとろみをつけたものだったり、醤油をプラスしたりとバリエーションはありますが、関東風とは違って、酸っぱい餡ではないんですよね。
関西で生まれそだった自分は、その違いを実際に食べるまで知らなかったので、関東風にびっくりしました。でも酢豚は好物なので、甘酢あんも目新しくて美味しいなと思ったんですけど。
🦀比べてみよう西、東
というわけで、今回は天津飯の餡かけを東西食べ比べしてみようというお話です。
まずは子どもの頃から食べなれた実家の味。鶏ガラスープにとろみをつけた、シンプルな餡かけです。お醤油は使わないので白っぽく仕上がるため、“銀餡”なんて呼び方をしてました。これはそのまま餡として使うだけではなく、あとで関西風醤油餡と関東風甘酢餡のベースにもしようと思います。
🥄ベースの銀餡の材料
・鶏がらスープの素
・水
・こしょう
鶏ガラスープの素と水をお鍋にイン。
沸騰させてしっかり溶かします。
こしょうを加えて味を調えたら、銀餡の素になるベースの鶏ガラスープの完成です。
🦀西と東の餡づくり
では続いて関西風醤油系。
🥄関西風しょうゆ餡の材料
・ベースの銀餡…1/4カップ
・醤油…小さじ1
・みりん…小さじ1
ベースの銀餡スープに醤油とみりんを加えればOKです。
そして関東風甘酢系。
🥄関東風甘酢餡の材料
・ベースの銀餡…1/4カップ
・酢…小さじ1
・砂糖…小さじ1
・醤油…小さじ1
・ケチャップ…小さじ2
個人的にはけっこう甘めが好きなので、味を見てもう少し砂糖を足してもいいと思います。
これで3種の餡かけできあがりです。
🦀かに玉…いや、かにかま玉
ではこれがなくては天津飯じゃないよ、というメインのトッピング、かに玉作りです。
🥚かにかま玉の材料(1皿分)
・卵…1個
・かにかま…2本
・玉ねぎ…1/8個
・椎茸…1個
・万能ねぎ…1本
かにはさすがに高いので今回はかにかまを使います。なので正確には“かにかまたま”です。中国語のフーヨーハイはハイの部分が蟹なのでここをかにかまに置き換えればOK。なんていうのか知りませんけど。
かにかまは、なるべく見た目も蟹の身に似せる努力が感じられるタイプが、気分も上がります。
結局ほぐして使うんですけどね。卵を溶いて、刻んだねぎ、椎茸と一緒にかにかまも一体化。卵液のフーヨーハイバージョン、かに玉液完成です。
🥚焼きのポイント
このとき、卵に中華スープの素を溶いて下味をつけてもいいと思うのですが、上からたっぷり餡をかけるので、今回は特になし。シンプル構造です。
サラダ油を多めに熱し、香り付けにごま油をすこし足して、かに玉液を投入。オムレツの要領で手早くかき混ぜます。
卵が固まってきたら返します。
ふんわり焼き上げるポイントは、とにかく油をけちらず使うことと、しっかり熱してから、かに玉液を入れること。流し入れてさっとかき混ぜたとき、油の中でちょっとぷかぷか浮いてる感じが理想です。
🦀天津構築…そこであれが!?
さあ、餡のベースは揃った、かに玉焼けた。いよいよ天津構築です。
ここでいつものあれが登場。
糖質オフの味方、ライスメニューをおつまみ仕様に変身させる魔法の水切り豆腐です。
蟹の代わりにかにかまを使って、ごはんの代わりに豆腐を使うと、もはや天津飯ではない…という気がしないでもありませんが、おつまみとして食べたい晩ごはんには、ごはんを水切り豆腐に代えるスタイルがお気に入りです。
かにかま玉のっけます。天津構築完成。
🦀餡かけ3種勢ぞろい
さあ、餡かけの仕上げです。まずは基本の銀餡からスタート。
火にかけて、水で溶いた片栗粉を流し入れます。
とろみがついたら、餡かけの醍醐味。この瞬間、わくわくします。とろーっと餡を流します。
天津豆腐の上にかけた餡が周囲に流れて、池の真ん中の小島のよう。刻んだ万能ねぎを飾って、これが懐かしい実家のスタイルです。
しかし、今回は食べ比べ。残りの餡も仕上げなくては。こちらもそれぞれ小鍋で熱しながら、水溶き片栗粉を加えてとろみをつければOK。
醤油餡と甘酢餡が揃いました。
3色並べていただきます。
🦀食べ比べよう西、東
今回は別添えスタイル。基本の天津を食べて、そこに醤油餡と甘酢餡をそれぞれかけつつ食べ比べます。醤油餡も甘酢餡も基本の銀餡をベースにしてあるので、味の方向性には変化ないはず。
まずは基本味。
輝くような色でまさに銀餡。
中華スープのシンプルな味ですが、とろみがついた餡なので、ごは…じゃなくて豆腐によくからんで美味しいです。
続いて関西風醤油餡。
ちょろっとかけると、そこは琥珀の海に。
うん、これも懐かしい味。醤油が入るとちょっと和風にも感じますね。
そしていつだったか、衝撃を感じた関東風の甘酢味。
銀餡に広がる甘酢は、紅白の彩り。色あざやかですね。
酸味が加わるので、表情が一気に変わります。うん、美味しい。甘酢好きなので、これもけっこう好きです。
出汁を活かした関西風、味に甘酢でパンチを加えた関東風。それぞれ個性があって、おかわりできそうな勢いでスプーンが進みます。
食べながらなんとなく思い浮かべたのが、そばつゆの違い。関西風の薄口しょうゆの淡い色のつゆと、関東風の黒いつゆ。あの違いが、天津飯の餡にもつながっている気がします。
彩り3色、味も3食。こんな感じの食べ比べ3種餡かけセットがあってもいいなと思いました。途中で味変しながら食べるのって、お得感ありますよね。
どうでしょう、3色天津飯イースト&ウエスト。よかったら試してみてください。