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70歳前半、もう少しだけ若さを保ちたいなぁと思っています。ゆっくり投稿していきます。

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最近の記事

『面白くて眠れなくなる江戸思想』 橋爪大三郎

      ひとり遅れの読書みち     第49号      若い人むけに書かれた江戸思想についての入門書だ。江戸の思想家12人を選んで、その人の生まれから考え方や生き方をわかりやすく解説する。その人たちがあたかも今近くに生きて活動しているかのように、身近な存在として描いており、共感を呼びそうだ。      例えば、徳川光圀については、「ツッパリ」で「ヤンキー」だったと表現。若いときに「グレて手がつけられない」「決まったレールの上を歩かされる人生なんか、真っぴらごめん」と

    • 『西郷従道』維新革命を追求した最強の「弟」 小川原正道

      ひとり遅れの読書みち   第48号      西郷隆盛の15歳年下の実弟、従道の生涯を描く。父を幼くして亡くし、父代わりの存在だった隆盛だが、西南戦争で「賊軍の将」となった。従道にとっては「重荷」であり「負債」にもなる。その中で「維新大業の基礎」を確立すべく国家発展に尽力する従道の姿を、著者は貴重な書簡や書類をもとにして明らかにする。      従道は幕末期に兄や大久保利通のもとで尊王攘夷の志士として活動し、薩摩を代表する若手官僚、政治家として新政府に登用された。さらに政治

      • 大原吉人さんのマガジン、「赤くひかる晩秋」と「高齢社会、生き様さがし」に『良寛 野の花の歌』を加えて下さいました。ありがとうございます。

        • 『良寛 野の花の歌』 解説 本間明 水彩画 外山康雄

                ひとり遅れの読書みち     第47号       新潟県南魚沼市の「外山康雄  野の花館」に先日、立ち寄った。山あいの一角に建つ古民家を改造した小さなギャラリーだ。外山康雄の描いた野の花の水彩画が、モデルとなった花々とともに展示されている。天井は高く、静かで落ち着いた雰囲気。水彩画は淡い色合いで、清らかな香りが漂って来るようだ。絵に写された実物の花木がその前に置かれ、ギャラリー内を鑑賞して回ると、まるで山野を歩いているかのような気持ちになる。      そ

          『うつを生きる 精神科医と患者の対話』内田舞 浜田宏一

                ひとり遅れの読書みち     第46号      アベノミクスのブレーンとして著名な米イェール大学名誉教授の浜田宏一氏は、東京大学から米国の大学に招かれ研究を重ね、日本の政策立案に携わるなど活躍してきた。外部から見るとエリートコースを順調に歩んでいるように思われる。だが、その陰で本人は自殺願望が強く、長く躁うつ病に苦しんでいた。病気回復の途上には、息子を自死で亡くす。離婚もした。88歳となった今、うつの症状と治療、回復の様子などその半生を、米ハーバード大学医学

          『うつを生きる 精神科医と患者の対話』内田舞 浜田宏一

          『日本の山の精神史』開山伝承と縁起の世界 鈴木正崇

                ひとり遅れの読書みち     第45号      著者は日本人の暮らしの中核に自然との共生によって育まれてきた「山岳信仰」があると見て、長い歴史をもつ日本人の山岳信仰を「山の精神史」としてとらえ直し、本書で「開山伝承」や「縁起」に焦点を当てて考察している。      日本の国土の4分の3は山や丘陵で、森林面積比率も高く、雨量は多く河川も変化に富む。山と森と川が織り成す自然は日本の風景の基本だ。著者は、日本人の精神文化、「こころ」を育んだのはこうした変化に富む山

          『日本の山の精神史』開山伝承と縁起の世界 鈴木正崇

          『陥穽』陸奥宗光の青春 辻原登

                ひとり遅れの読書道     第44回      欧米列強との不平等条約の改正に取り組み、日清戦争に際しては、外相・全権大使として開戦外交を指揮し、下関条約の締結を果たした陸奥宗光。「日本外交の父」として高く評価され、今も外務省前に銅像が置かれている。また死の直前に著した『蹇蹇錄』は、外交官の必読書と評されてきた。      だがその前半生、明治10年(1877年)の西南戦争勃発の際には、その危機に乗じた土佐立志社系の政府転覆計画に加担する挙に出て逮捕され、5年

          『陥穽』陸奥宗光の青春 辻原登

          『戦争ミュージアム』 ─記憶の回路をつなぐ 梯久美子

                ひとり遅れの読書みち     第43号      「過去からの声が聞こえる場所」─それが戦争ミュージアムだ。著者は全国14か所を訪れて記録するとともに、そこにゆかりのある人々の声を伝えている。      梯は硫黄島総指揮官、栗林忠道の戦いを描いたノンフィクション『散るぞ悲しき』で脚光を浴びた作家。戦争にかかわる取材を始めてから約20年。直接会って話しを聴くことのできる体験者が減ってゆく。「もの」を通して「歴史のディテール」に触れることができるのではないかと思い

          『戦争ミュージアム』 ─記憶の回路をつなぐ 梯久美子

          『香港陥落』 松浦寿輝

                ひとり遅れの読書みち     第42回      太平洋戦争の勃発をはさんで、暗い過去を秘めた3人の男たちが香港を舞台にして交遊を深める。日本、英国、そして中国という国籍を異にし、また年齢もそれぞれ40代、50代、30代と幅のある人たち。不思議な縁から知り合いとなり、交わりを続ける。日本軍が今にも香港を支配下に置こうかという時、「災厄の時代」が始まり、「きな臭い予感」が空気中に濃厚に立ち込めていた時代がスタートだ。      作者は、時代の奔流に押し流される町

          『香港陥落』 松浦寿輝

          『ひらがなの世界』 文字が生む美意識 石川九楊

               ひとり遅れの読書みち   第41回      本書は、漢字で書かれた万葉歌からいかにひらがな(女手)が誕生してきたか、その成立過程を明らかにするともに、女手書記の作品がいかに美しく見事かを描く。万葉仮名(漢字)が生まれ、その漢字では言い表せないことを我が国の言葉で書き表したいという思いが熟して、ひらがなは生まれた。9世紀終わりから10世紀初頭のこと。ひらがなの美を生み出す高度なワザは衝撃的だ。      著者は、ひらがなによる美しさを説明するうえで「掛筆」とい

          『ひらがなの世界』 文字が生む美意識 石川九楊

          大原吉人さんの高齢社会、生き様さがし に『評伝 良寛』阿部龍一著を読む を加えて下さいました。ありがとうございます。

          大原吉人さんの高齢社会、生き様さがし に『評伝 良寛』阿部龍一著を読む を加えて下さいました。ありがとうございます。

          『和歌史』 なぜ千年を越えて続いたか 渡部泰明

                ひとり遅れの読書みち     第40回      7世紀前半に形態を整えてから1200年以上続いた和歌の歴史。なぜこれほど長く続いたのか、持続を可能にした力はどこにあったのか。著者は、この「不思議」を考える。そして「祈り」「境界」「演技」「連動する言葉」という視点を取り上げて、和歌が命脈を続けたなぞを探る。      万葉の時代から古今、新古今を経て、武士の台頭する時代、さらには武士の支配する時代まで、代表的な歌人を選び出し、その歌をひとつひとつていねいに読

          『和歌史』 なぜ千年を越えて続いたか 渡部泰明

          『惣十郎浮世始末』 木内昇

                ひとり遅れの読書みち     第39回      北町奉行所定町廻同心の服部惣十郎は、浅草で起きた薬種問屋の火事を取り調べる。不審な点が幾つか見つかったからだ。配下の者に次々と指揮を出しながら、火付けの実行犯を捕らえた。だが、謎は残る。惣十郎は地道な捜索を続ける中で、驚愕の真実にたどり着く。それは、正しさとは何か、正義とは何かを自問させるものだった。      物語のクライマックスは、まさに手に汗握る展開を示し、ページを繰るのがもどかしくなる。作者の力量がうか

          『惣十郎浮世始末』 木内昇

          『静かなる細き声』 山本七平

              ひとり遅れの読書みち     第38回      『「空気」の研究』『日本教徒』などの著者山本七平が「私の歩んだ道」と題して、その半生をまとめた。前半では、キリスト者の家庭に生まれてどのように育ってきたか、人々との出会いでどのような影響を受けてきたかを語る。戦後になってからの後半では、日本の伝統的な思想の深層を探りゆくプロセスが明らかにされる。      単行本としては、山本の死後1年の1992年発行。既に30年以上経っている。が、日本の伝統とは何か、日本はどうあ

          『静かなる細き声』 山本七平

          『また、桜の国で』 須賀しのぶ

                ひとり遅れの読書みち     第37回      第2次世界大戦勃発間近、ワルシャワの在ポーランド大使館に赴任した外務書記生棚倉慎(まこと)の波乱に満ちた生き方を描く。大国のはざまにあって悲劇的な戦いを続けるポーランドの人々。その自由のための戦いを支援する棚倉の生き様は、読む者の胸に熱く迫ってくる。まるでドキュメンタリ映画を見ているような感覚になる。       舞台はドイツとロシアの間に挟まれて何度も国が消された国ポーランド。第1次世界大戦後やっと120年ぶ

          『また、桜の国で』 須賀しのぶ

          『「保守」のゆくえ』 佐伯啓思

              ひとり遅れの読書みち     第36回      著者は、今こそ「保守の精神」が必要と訴える。それは、今日の「すさまじい勢いで進展する科学・技術の革新、市場のグローバル競争、民主政治の混乱など」が、まさしく「進歩」を求め続けたあげくの「現代文明のクライシス」としか思えないからだという。今後「人間の倫理はますます破壊」されてゆくだろうし「日本もいまや喜び勇んでこの文明破壊のなかに飛び込もうとしているのではないか」との危惧を表明している。      著者によると、「

          『「保守」のゆくえ』 佐伯啓思