マガジンのカバー画像

掌編小説

34
運営しているクリエイター

2021年2月の記事一覧

【小説】最後の晩餐とカップラーメン

 「最後の晩餐に食べたいものは何か」と、学生時代そんな話題が上がるたびに、僕はカップラー…

たま
3年前
8

【小説】2分55秒

「はじめまして。平岡麗奈です」 「平岡ユリ……さん?」  目の前にいる男性が、手元の紙に書…

たま
3年前
4

【小説】メロンソーダ

「妻が探偵を雇ってたらしくてさ」  日本橋にあるワインバーの個室で、険しい表情とは裏腹に…

たま
3年前
3

【小説】ピッピ

 彼女と初めて交わした言葉は覚えていないけれど、仲良くなったきっかけは覚えている。  そ…

たま
3年前
13

【小説】万年筆

 父が他界したのは、5日前のことだ。    半年前に口腔癌を患わせ、さまざまな症状に苦しみ…

たま
3年前
4

【小説】あなたと握手

 改札を出て、駅付近の施設の地図の書かれた案内板の横に立つ。  腕時計を見ると、待ち合わ…

たま
3年前
10

【小説】ミスリード

「ちょっと時間もらってもいい?」  それは、私が編集を担当しているミステリー作家の柳森総司との次回作の打ち合わせを柳森の自宅で行っていた時だった。  和室の客間でテーブル越しに向かい合い、柳森の考えた密室トリックに穴がないか話し合っていると、柳森の妻である和美の声が聞こえた。  和美は、30代後半という年齢を感じさせないハリのある美しい顔を、柳森に向けていた。 「ごめん、今編集の山崎さんと打ち合わせしてるんだ」  困った表情を浮かべる柳森に、和美は勝気な表情を浮かべ

【小説】マトリョーシカ

数週間前までは使い慣れていたはずの鍵を取り出すと、たくさんの景色を思い出した。 引越し業…

たま
3年前
5

【小説】ひつまぶしのパラドックス

運ばれてきたひつまぶしのおひつを覗き込むと、うなぎの光沢に眩しささえ感じた。 創業100年を…

たま
3年前
2

【小説】最大音量の一つ下

ヘッドホン越しに鳴るギターの音圧に、肩がピクッと震えた。 手元のスマートフォンで音量を最…

たま
3年前
9