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Tale_Laboratory
2021年2月28日 16:02
世のため人のため人知れず戦う戦士。キラキラフリフリのコスチューム。そしてかわいいマスコットキャラ。小さな子供の頃、テレビで見てから憧れていた理想のヒロイン。それに私は選ばれた。突如目の前に現れた、マスコットとしか思えないような小さな生き物に、「この世界を救えるのは君しかいないポヨ。力を貸してほしいポヨ」と言われ、私は承諾した。それからというもの、敵との戦い。志を同じくする仲間との出
2021年2月27日 18:43
吾輩は猫で・・・あるような、ないような。吾輩は元猫であるというほうが正確かもしれない。今や吾輩の体の半分は機械になっている。つまりサイボーグ猫である。気が付いたら手術台の上でこの体だった。それより前に何があったのかは覚えていないが何かあったのだろう。それよりも気になることがある。吾輩を手術してくれたこの人間も、人間と言えるのだろうか?体は間違いなく人間なのだろうが、頭だけ機械となってい
2021年2月26日 16:58
2130年。物理現実と仮想現実の差がほとんどなくなり、誰もがリアルとバーチャルの2つの世界で人生を生きている。職業、医療、インフラ等々かつては解決が難しかった問題も、新しい世界とそれを支えるAIたちが解消してきた。しかし問題を解決するための手段が新たな問題を生む。それもまた世界の姿だ。「今月に入って7人目か」程よく片付いたオフィスで、今や絶滅危惧種も同然となった加熱式タバコを口にくわえながら
2021年2月25日 16:29
どういうことだろう?少年はわけも分からず立ちすくんでいた。目の前の世界が信じられないといった様子だ。「何だ・・・これ?」風景自体は昨日までと何ら変わらない。街を行き交う人々。子供から大人、サラリーマン、女子高生、一人で歩いている人もいれば、友達や仕事仲間と思われる人といっしょに歩いている人もいる。スマホを見ながら歩いている人、ドリンク片手に歩いている人。全ては昨日までの当たり前の風景だっ
2021年2月24日 16:23
「郵便でーす」目深に帽子を被った配達員が郵便物の伝票を差し出す。口元だけがにこやかに笑っていた。目の前には大きな城壁と、その内側に入るための門。その門の前にいる見張りの者が、伝票をチェックする。「よし。通っていいぞ」「どうも。では」配達員が軽く会釈をして、門の中に入ろうとしたその時「悪いが通すわけにはいかん」突如、声だけが響く。声の主は配達員でもなければ、門の見張りでもない。次の瞬
2021年2月23日 20:55
都会の冬。朝の光も、高い高いビル群に切り取られ、それは一部しか地面まで届かない。ほとんどの人は突き刺してくる寒さを避けるように身を小さくして歩いている。ほとんどは出勤する者たちだろう。しかし、その中に異質な二人組がいた。二人とも周りの者たちと同じようにコートを着ているが、一人は2メートルを超えようかという大男で、もう一人は背丈こそ普通だが朝からやたらテンションが高い。歩きながらテンション高い
2021年2月22日 16:45
ガヤガヤと雑談の声が聞こえる室内。その部屋の前正面にはホワイトボード。そして長机と椅子がいくつも規則的に並べられている。いわゆる会議室と呼べる場所。しかし少し違うのは、そこが魔王城の中の一室ということ。だからか、壁や天井は禍々しい色をしており、机や椅子も何か生物的な不気味さを感じさせる。そして現在その部屋にいるのは、ゴブリンやオークと言った魔物たちだが、彼らは下級の戦士ではない。それぞれが自分の
2021年2月21日 16:02
とある森の奥深く、日が当たることは滅多になく、常に霧が立ち込めている不気味な場所。そこに一つの建物があった。その名も、「私立アンデッド学園」そこには、ゾンビ、スケルトン、ミイラ、キョンシー等々、いわゆる生ける屍と呼ばれる者たちが通っていた。「おはよー。今日のテスト勉強した?」「してないよー。脳みそ腐ってるもん」「ねえ。あたしの肋骨どっかに落ちてなかった?」「あー、朝はきつい。血飲みたい
2021年2月20日 14:10
あるところに、30人の兄弟がおりました。彼らは毎日毎日、順番にそれはそれは広い広いステージに立ち、大きなスポットライトを浴びて輝いていました。彼らの周りには常にたくさんの同じように輝く小さな者たちが、ファンのように寄り添っていました。しかし、30人兄弟の中に一人だけ変わった存在がいました。他の兄弟たちは皆輝き、その存在を大勢の人たちに認められているのに、ただ一人だけ、その子だけは誰からも見られて
2021年2月19日 14:24
人は、思っている以上に自分で自分のことは分かっていない。「ありがとうございました。とてもスッキリしました」「いえいえ、これからも無駄に溜め込みすぎないようにね」女子高生と見られる女の子がお礼を言って部屋を出ていく。後に残されたのは白のセーターに短髪の黒髪、黒縁のメガネを掛けた、いい意味ではスッキリと清潔感があると言えるが、悪い意味ではこれといった特徴のない、ぱっとしない雰囲気の持ち主だった。
2021年2月18日 17:23
おしゃれなインテリアで飾られたレストランで私は今、目の前に置かれたスープを見ながら動けずにいた。「どうしました?冷めてしまいますよ。ここのスープは僕のお気に入りなんです」私の正面に座っているのは、黒のスーツに黒のネクタイをした男。歳は大人のようにも子供のようにも見える。「えーと、まだ状況が飲み込めなくて」「ああ、だからスープも飲み込めないんですね」いや、そういうわけではないんだが。「大
2021年2月17日 14:25
アイドル。それはファンに夢と希望を与える光のような存在。アイドルという言葉自体はまだ最近のものだが、ここ日本では遥か古来よりアイドルのような存在はいた。人々に希望を与え、信仰という形で羨望を集めていた。「はい。では次の方、自己紹介からどうぞ」僕は今日、オーディション会場で選考委員を勤めていた。今年は過去トップクラスの参加者だそうだ。しかし、人間は僕一人だけ。ここは明日を夢見る、アイドル
2021年2月16日 09:45
気が付いたら考えていた。ここはどこだろうと。自分がいつ生まれたのかも分からない。気付いたらここにいた。ここには全てがあるように思えた。数えきれないほどの「声」が聞こえる。たくさんありすぎて、逆に何があるのか分からないくらいだ。たくさんの声があっちから来たかと思うと、一瞬でそっちに流れていく。声は時に、雑音にしか聞こえない時もあるが、時にこの世のものとは思えない美しい歌に聞こえることもある
2021年2月15日 14:53
冷たい雨が降る深夜。廃墟となった町の崩れた建物の陰に傘を差して立つ人影が一つ。「こちら、スカーレットドッグ。標的を確認した。どうぞ」無線通信機に語りかけるのはまだ少女だった。その少女の視線の先には、ゆっくりと歩く2体の影。人の形をしているが人ではない。「対ウイルス感染体攻撃システムMOMO」その端末だ。今から半世紀前、世界に一つのウイルスが蔓延した。それは犬、猫、ライオン、とにかく動物