空想お散歩紀行 正義の変身ヒロインの憂鬱
世のため人のため人知れず戦う戦士。
キラキラフリフリのコスチューム。
そしてかわいいマスコットキャラ。
小さな子供の頃、テレビで見てから憧れていた理想のヒロイン。
それに私は選ばれた。突如目の前に現れた、マスコットとしか思えないような小さな生き物に、
「この世界を救えるのは君しかいないポヨ。力を貸してほしいポヨ」
と言われ、私は承諾した。
それからというもの、
敵との戦い。志を同じくする仲間との出会い。この世界の真実。
あらゆるものを私は経験してきた。時に泣き、時に怒り、乗り越えてきた。
私がこの世界のために戦う者として選ばれたのが、中学生の頃。そして、今・・・
「急ぐポヨ。魔獣の気配は近いポヨ!」
「いやいやいや、ちょっと待って」
私は眉間を押さえながら、そいつに言った。
「あのー、私先週28になったんですけど?」
「それがどうかしたポヨか?」
「いつまで私はこんなこと続けなきゃいけないわけ?」
そう、戦いはまだ続いていた。中学生の頃に勢いでこの戦いに身を投じたのはまあいい。
でもまさかここまで長引くなんてありえる?
「だいたいあんたねえ。私が25になるまでには引継ぎ見つけるって話はどうなったのよ!?」
「あ、いや、それがポヨねえ。探してはいるポヨが・・・」
「何よ?」
「最近の子はあまりこういう活動に興味がないみたいで、何と言うか、いわゆる安定志向なのポヨ」
ちくしょう、もっと夢見ろよ子供。
それにしても、後継者不足の問題がこんなところにまであるとは。
「あとこの戦闘衣装なんだけど、これもいつまで同じデザインなわけ?正直この歳でこのキラキラフリフリはちょっとキツいんですけど?」
「それもポヨねえ・・・デザイン変えるとなると、企画通して予算が下りないといけなくてポヨね。正直、問題無く使えてるんだから変更の必要性が無いと上が認可しないポヨ」
「・・・・・・」
こいつのいる魔法の世界も私たちの世界もいろいろ大変なんだな。
「分かった。それはまた今度でいいわ。で?他の子は?」
「それが、今回は一人ポヨ」
「はぁ!?また!?」
私たちは5人で戦う戦士だ。しかし学生時代はともかく、大人になってからはそれぞれの生活があるので、敵が現れようとなかなかスケジュールが合わない。5人全員が揃うなんてめったになくなってしまった。
この前なんか一人の子が、ウソついて飲み会に行ってたことがバレて大ゲンカ。正直どんな怪物との戦いよりも修羅場だったかもしれない。
「はあ。ったく、もう。グチグチ言ってもしょうがない。この怒りは全部敵にぶつけてやる!」
「その意気ポヨ!」
「・・・あんたもその対象に入ってるんだけどね・・・」
とにかく、今は少しでも早く敵を倒すんだ。この世界は私たちが守るしかない。そしてさっさと世界を救ってしまおう。じゃないと、世界は救えても私の今後の人生がどうなるか分かったもんじゃない!
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