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空想お散歩紀行 大規模多人数同時参加型オンラインRPG

どういうことだろう?
少年はわけも分からず立ちすくんでいた。
目の前の世界が信じられないといった様子だ。
「何だ・・・これ?」
風景自体は昨日までと何ら変わらない。街を行き交う人々。子供から大人、サラリーマン、女子高生、一人で歩いている人もいれば、友達や仕事仲間と思われる人といっしょに歩いている人もいる。スマホを見ながら歩いている人、ドリンク片手に歩いている人。
全ては昨日までの当たり前の風景だった。
ただ一つだけ違うところがあった。
「頭の上のこれ、何なんだ・・・?」
少年が見つめる先は、人々の頭の上に浮かんでいる妙な物体。それは人によって赤色だったり緑色だったりと違いがある。そして、
「これは、文字、なのか・・・?」
なんとなくだが頭の上のそれは文字の並びのように見えた。なんて書いてあるかは全く分からなかったが。
なぜそのように思ったのかには理由がある。
見たことがあるからだ。似たものを。
それは、
MMORPG。オンライン上でプレイできる多人数参加型のロールプレイングゲームだ。
プレイヤーの数だけキャラクターがいて、同じ世界の中で協力し合ったりしながら様々なクエストに挑んでいくタイプのゲーム。
そこに登場するキャラは頭の上に名前が表示されていたりする。
もし、これも同じものだとしたら。
少年の背筋にゾッと悪寒が走る。
昨日まで当たり前だと思っていた世界が実は単なるゲームの世界で、ここにいる人たちは全員ただのキャラクターでそれぞれにどこかにプレイしているやつがいるということになるのか?
しかし、それだと説明が付かないことが一つ。少年は近くにある店舗のショーウィンドウに目を向ける。そこに映る自分の姿。だが、その自分の頭の上には何も表示がされていない。
「自分だと見えないのか。それとも別の理由が・・・」
自分も単なるゲーム内のキャラクターに過ぎないのか。今までの人生の中で自分がやってきたことは全てどこかの誰かが操作して決定していたことなのか。なぜ今日になってこんな世界が見えるようになってしまったのか。
分からないことがありすぎる。
少年は再び街の中を歩き出した。その歩く一歩が自分の意思によるものであることを願って。
しかし少年はまだこの時気付いていなかった。
少年が辺りを見回し戸惑っていた時、その近くの大きめの商業施設。その上階のガラス張りの通路から見下ろしていた影が一つ。
一人の少女が少年を見ていたことに、彼は気付いていなかった。その少女の頭の上にも何も表示が無かったことにも。

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