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戦国武将はなぜ「茶の湯」を愛したのか

旧暦2月28日は千利休の命日だという。
利休が活躍した戦国から安土桃山時代にかけて、
「茶の湯」が大いに広まり、武将たちの中にも
茶を好んだ者は少なくなかった。
彼らはなぜ茶に魅せられたのか。

(ちなみに私は、作法は知りませんが、抹茶アイスは好きです)

「茶の湯」に魅せられた武将たち

織田信長、豊臣秀吉、明智光秀、前田利家、足利義輝、足利義昭、大友宗麟、松永久秀、荒木村重、蒲生氏郷、高山右近、細川忠興、有馬豊氏、金森長近、織田有楽斎、北条幻庵、直江兼続、前田利益、豊臣秀次、秋月種実、上田宗箇、古田織部、小堀遠州……。

並ぶのは錚々たる戦国武将たちの名前です。それぞれ敵対関係であったり、主従であったりの彼らですが、実はある共通項で結ばれていました。

それは彼らがこよなく「茶の湯」を愛した、という事実です。戦いに明け暮れていた彼らは、なぜ「茶の湯」に魅せられたのでしょう?

日本に茶が初めてもたらされたのは、平安時代の頃といわれます。

鎌倉時代には、臨済宗の開祖・栄西によって喫茶法と栽培法が伝えられますが、古来「百薬の長」「養生の仙薬」と呼ばれる通り、当時の茶はあくまでも「薬」の扱いでした。

その後、国内での生産量が増加するにつれて、茶は嗜好品として広まっていき、複数の人で楽しむ「茶寄合」や、茶の産地を喫みわける賭け事の「闘茶」が流行します。

やがて室町時代、8代将軍足利義政の時代に登場する村田珠光(じゅこう)によって、「草庵茶の湯」が考案され、四畳半茶室が創られるなど、精神的な茶の世界が生み出されるに至ります。

この精神を受け継いだのが武野紹鴎(たけのじょうおう)であり、さらに草庵茶の湯を「わび茶」として大成したのが千利休でした。

利休が天下人・信長、秀吉の茶頭(さどう)を務めたことはよく知られています。

もっとも、利休が茶に求めた哲学的なものと、信長や秀吉が茶会を開くことを一種のステータスシンボルとし、そこで披露される「名物」茶道具を一国一城以上の価値としたことや、あるいは密談の場にして、茶の湯を政治に利用する姿勢とは、方向性は全く異なっていたことでしょう。

それはともかく、戦国の頃に確立された茶の湯というものを、政治利用を抜きにしても、多くの武将たちが好んだのは事実です。それはなぜだったのか。

武将たちが好んだお茶の特長

茶の湯はたいてい、主人と数人の客しか入れない狭い茶室で行なわれます。

茶室の入口にあたる「にじり口」は、とりわけ小さくつくられており、刀を帯びていては、中に入れません。そこで刀は外の刀掛けに置き、主人も客も丸腰で向き合います。

簡素なしつらいと静寂の中、主人の心づくしのもてなしを受けるひと時。それは外の世界と隔絶された、静かな人と人との交流の時間といえるでしょう。

戦国の武将たちは、一歩外に出ると、いつ敵の急襲を受けるかもわかりませんし、思わぬ味方の裏切りにあうかもしれません。また次の合戦で生きて戻れる保証などどこにもないのです。

そんな片時も油断ができず、常に己の「死」と隣り合わせの日常において、茶の湯のもてなしは、心を穏やかにし、安らげるひと時だったのでしょう。つまり茶の湯は武将たちにとって、リラックスできる貴重な憩いの空間だったといえそうです。

ところで、憩いの空間で、なぜ飲み物が「お茶」でなければならなかったのでしょう。リラックスしたいのであれば、たとえば少量の酒でもよかったのではないか。

実はお茶には次のような、人間の身体によい影響を及ぼす成分や特長があるといいます。

① 殺菌効果のあるカテキン、
② レモンの5倍以上のビタミンC、
③ 豊富なミネラル、
④ 気分転換を促し、記憶力・判断力の向上に関係するカフェイン、
⑤ 耐久力の向上など、元気の源になるテアニン等々。

なにやらサプリメントの効能紹介のようですが、つまりお茶は、健康維持に極めてよい飲み物であると同時に、武将たちが多忙な中でも一息つける、貴重な気分転換の「一服」であったといえるようです。

蛇足ながら

現代の生活で、煎茶は普通に飲むとしても、抹茶をたてて飲む人はあまり多くないでしょう。私もそうです。

かなり以前のことですが、京都に行ったとき、座敷で抹茶が飲めるお店に連れて行ってもらったことがあります。

もう店の名前も忘れてしまいましたが、比較的大きな座敷の一室に、客はコの字を描くように座って、それぞれに抹茶を出して頂くスタイルでした。

同行した方に、簡単に作法を教わって頂いたわけですが、他の客は教わることもなく普通に飲んでいて、「さすが京都ともなると、皆、作法を心得ていて、きっと『お茶しよう』というときには、こういう店に来るのだなあ」と感心したものです(あとで、そうではないと聞きました)。

また、彦根で幕末の大老井伊直弼が開いた、「彦根一会流」の代表の方をお訪ねしたことがありました。

「武家の茶は、一般的な茶道と少し作法が異なる」といったお話などを聞きながら、作法をわきまえずに頂いたのですが、おいしいお茶でした。

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Saburo(辻 明人)
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