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旅の備忘録

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雪降る町の夜、静寂の世界。

雪降る町の夜、静寂の世界。

「さあみなさん、目を閉じて。耳を澄ませてみてください。」
促されるままに、そっと目を閉じて大きく息をすって、はいてみる。

川のせせらぎだろうか、遠くから水の音が微かに聴こえてくる。

ここは新潟県、津南町。
日本有数の豪雪地帯だ。

数日前から降り続く大雪で積雪は3メートルを超え、道の脇には高い雪の壁が聳え立っている。

それでも地元の皆さんは、「ここ数日は毎朝早起きして雪ほりだよ」と快活に笑っ

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浜松、古くて新しい町を歩く。

浜松、古くて新しい町を歩く。

朝目覚めた時、一瞬ここがどこだか分からなくて。
「ああそうだ、昨日の夜、浜松までやって来たんだった」と脳がゆっくり、ぼんやりと認識する。

身支度をして、ホテル近くの喫茶店へ。
"モーニング"って響きだけで、なんだかワクワクしてしまう。

朝ごはんの後は、念願のコーヒーショップ ミハルさんへ。
店員さんのお知り合いが手掛けたというステッカーや内装、カウンターのメニューも、何もかもがとにかく可愛らし

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土曜の夜、住み慣れた街を抜け出して。

土曜の夜、住み慣れた街を抜け出して。

「深夜のサービスエリアで、ラーメンが食べたい」

夜中のベッドの中で微睡みながら、ふと、その計画を思いついてしまってからは早かった。
スマートフォンに指を走らせ、息をするようにレンタカーと格安のホテルを予約する。

一週間後、土曜の夜。
行きつけのお店であたたかなカフェラテをテイクアウトして、
わたしたちは少しの荷物と得体の知れないワクワク感を胸に、車へ乗り込んだ。

車窓を流れていく見慣れたはず

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沖縄、こころ解き放たれて。

沖縄、こころ解き放たれて。

沖縄を訪れる時、それが仕事であるか否かを問わず直感的に自分のこころが「さあ、逃避行だ。」と叫んでいる気がするのはなぜだろう。

繰り返される毎日とか、正直面倒でたまらない電話やらメールやら、自分の世界をうっすらと覆っているあれやこれやからひとまず解き放たれて。

心地よい風が吹き抜ける晴れの日も、
台風みたいな雨風を浴びる日も、
どんな日だって沖縄には、沖縄にしかない独特の空気が流れている、そう思

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盛岡、地域に根ざし暮らす人。

盛岡、地域に根ざし暮らす人。

半年ぶりに、盛岡駅へと降り立った。

仕事の合間に立ち寄った喫茶店。

扉を開けた瞬間、珈琲の深い香りが鼻をくすぐる。
「いらっしゃいませ。」
店員さんのやわらかい笑顔に誘われるように、カウンターの端っこの席に腰を下ろした。

店内は、ほぼ満席。
半分以上が常連のお客さんのよう。

「わたし、昔このライブに行ったのよ。武道館に見に行ったの。」
海外のアーティストのCDを片手に、嬉しそうにご婦人が話

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旅先の夜を、愛している。

旅先の夜を、愛している。

「それでは、また。」
「今度は、益田で一泊しますね。」

益田駅前で知人と挨拶を交わし、フルーツサンドを手に特急列車に乗り込んだ。

電車は、ガタゴト音を立てて、時おり大きく揺れながら東へと進んでゆく。
視界が開け、左手には真冬の日本海が広がる。
買ったばかりのフルーツサンドを頬張り、イヤホンを耳に差し込んで。背もたれをゆっくりと倒す。

うとうとと少し眠っている間に、電車は松江駅に到着した。

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宮古島に呼ばれて。

宮古島に呼ばれて。

先日、仕事の都合で宮古島を訪れた。
沖縄本島や石垣島には何度か訪れていたけれど、宮古島に足を踏み入れるのははじめて。

宮古島の上空からは、島の周りをぐるりと取り囲む美しい青色の海がよく見えた。
後から聞いたところによると、宮古島には大きな河川が流れていないので土砂が海に流れ込まず、澄んだ青色が保たれているらしい。

五月の初め、梅雨入り前の島に降り注ぐ日差しはカラッとしていて吹く風は心地よく。

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瀬戸内の、光と風に魅せられて。

瀬戸内の、光と風に魅せられて。

最終日の朝、雨予報だったにも関わらずお天気は予想外の晴れ。

部屋には、朝の光が静かに差し込んでいて、窓の外は変わらず凪の海。
朝ごはんは、鯛めしのお弁当だった。
お弁当箱を包むデニムの風呂敷も可愛い。

朝食の後は、少しだけ海沿いを散歩した。
夏の朝みたいな爽やかな空気に、ふかく、深呼吸をしたくなる。
海の近い街は、内地よりもひと足早く夏のような空気を感じるので好きだ。

お宿をチェックアウトし

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岡山、海の近いまち。

岡山、海の近いまち。

旅の二日目は、淡路島を出発し徳島、香川経由で岡山を目指す。

せっかく徳島を通るので!ということで、まずはうず潮の見える道の駅へ。
高台では、まっすぐ立っていられないほどの強い風が吹いていて、
太陽に照らされて瀬戸内海が煌々とまぶしく輝いていた。

あ、渦が巻いてる気がする!これがうず潮かな!とふたり騒ぎながら車は大きな橋を渡り、四国へ。

昼食は、やっぱり讃岐うどんが食べたいよねということで、急

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はじめまして、淡路島。

はじめまして、淡路島。

2021年の暮れに会社を辞めてひとり、旅をして以来。
一年と少しぶりに、今度は妹とふたり、瀬戸内へ旅をしました。

東京から約一時間、飛行機で神戸空港へ。
実ははじめましての、兵庫県!
車を借りて、まずは淡路島へ向かう。

お昼は、森のオトさんにて。

淡路島の食材をたっぷり使った、森のオトプレートを注文。
机にお皿が置かれた瞬間、思わず わあっと声がこぼれる。

一品一品、どれに手をつけても信じ

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春の初め、栃木へ。

春の初め、栃木へ。

先日、一泊二日の栃木旅へ行ってきました。

土曜日、雨の中レンタカーを借りて東京を出発。
まずは朝マックで腹ごしらえ。
まだ街が目覚めきっていないような、人のまばらな土曜日の朝。
いつもと違う、旅行の日特有の空気に胸を躍らせて。

小雨の降りしきる中、東北自動車道を北へ、北へ。

お昼は栃木市内のパーラートチギさんへ。
大正時代の洋館をリノベーションしておられるそうで、レトロな外観もとっても素敵。

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冬の終わり、再び沖縄へ。

冬の終わり、再び沖縄へ。

3ヶ月ぶりに、わたしは早朝6時の羽田空港で搭乗を待っていた。

眠い目を擦りながらの日の出フライト。
飛行機は轟音とともに地上を離れ、眼下にはまだ半分眠ったような東京の街と、朝日に照らされた橙色の静かな東京湾が広がり、そこを幾隻もの船が行き交っているのが見えた。
この場所、この時間帯にしか味わえない最高の、至福のひととき。
早起きは辛いけれど、やっぱり早朝フライトはやめられない。

石垣空港に降り

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福島、中距離バスに揺られて。

福島、中距離バスに揺られて。

気が付けば、1月が風のように過ぎ去って、2月を迎えていた。
相変わらず、日本全国津々浦々、駆けまわる日々を送っている。

先々週まで鳥取、その次は盛岡、その次は千葉と埼玉、そして福島。月末には沖縄。そんな感じ。

こころがずっと落ち着かないような、忙しなく、ふわふわとした不思議な日々だ。

先日、福島で中距離バスに乗った。
いわきから福島駅周辺へ。二時間ほどのバスの旅。

発車前に、名産品のほっき

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砂丘、そして海のあるところ。

砂丘、そして海のあるところ。

仕事柄ほんとうに出張の多い毎日を送っているのだけど、2023年の出張初めはそう、ここ鳥取。

前回訪れたのは二十数年前…
まだ6歳か7歳か、小さな子どもだった頃。

家族四人、新潟から車ではるばる父の実家のある広島へ向かう途中、鳥取砂丘に立ち寄った。

といっても、わたしが分かっているのは立ち寄ったらしい、ということだけ。

ほぼ記憶はないのだけど、なんとなく。頭の片隅で、どこまでも続くように見え

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