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雪降る町の夜、静寂の世界。
「さあみなさん、目を閉じて。耳を澄ませてみてください。」
促されるままに、そっと目を閉じて大きく息をすって、はいてみる。
川のせせらぎだろうか、遠くから水の音が微かに聴こえてくる。
ここは新潟県、津南町。
日本有数の豪雪地帯だ。
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数日前から降り続く大雪で積雪は3メートルを超え、道の脇には高い雪の壁が聳え立っている。
それでも地元の皆さんは、「ここ数日は毎朝早起きして雪ほりだよ」と快活に笑っているから逞しい。
「町、という単位よりも小さく集落が形成されて今もなお残っているのは、雪深い地域だからこそ皆で助け合って生活しないといけないから。雪国ならではの暮らしの知恵」と言われるのも納得だ。
かくいう私も雪国出身ではあるけれど、ここまでの大雪を見るのはいつぶりだろう。
窓の外、しんしんと降り積もる雪を見ていると、
心が静かに、穏やかに、凪いでいくのが分かる。
数分前まで雪が降っていたのに、急に晴れ間が現れて陽が差したり。雪国の天気は変わりやすい。
「四季がある、というより毎日違うんですよ。毎日が、目新しい」移住者だという若い女性が、嬉しそうに教えてくれた。
淹れてもらった熱いお茶と、豆菓子をお供にお茶飲みをしていると、じんわり時間が溶けていくようだ。
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夜遅く、外に出ると雪はすっかり止んで、漆黒の夜空に明るい半月と、信じられないくらいたくさんの星々が輝いていた。
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数分遅れでやってきたワンマン電車に乗り込み、ガタゴト、雪の線路を進んでいく。
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宿に辿り着き、ふとんに潜り込む。
窓の外からはなんの音もしない。
雪国の夜は、静けさに包まれて。
無音の世界、無音の夜が、しんしんと更けてゆく。
翌朝、まだまだ雪が降り続く十日町の街を歩く。
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「準備中」と看板の出ていた喫茶店に、営業時間のはずなんだけどな?と試しに電話をかけてみる。
「ああ!やってますよ」の返事に「よかった!」思わず笑みがこぼれる。
お店のカウンターでは常連らしきお父さんが、お店のお母さんとお孫さんの話で盛り上がっている。
「雪が降ったから、学校お休みかなあ?とか言ってキラキラした目で聞いてくるのよ」
お母さんがクスクス笑っている。
「外で雪ほりをしてくるけど、ゆっくりしていってね」
心遣いがあたたかい。
ずっと前からここを知っているような、ふしぎな気持ちになる。
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帰路。
真っ白な吹雪の中を、電車は懸命に進んでゆく。
窓の外は一面の雪景色で、イヤホンからはharuka nakamuraの音楽が流れている。
泣き出したいような、帰りたいような、帰りたくないような、誰かに会いたいような、ひとりきりでいたいような。
自分でもよく分からない感情で胸がいっぱいになる。
でもそれで、このままでいいんだと、そう思えた。
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来週には、寒波が去ってだいぶ暖かくなるらしい。
この雪深い地にも、きっともう少しで、やわらかな春がやってくるのだろう。
この厳しい寒さが、この地の美しさと豊かさをつくりだしているのだ、とあらためて思わされた今回の旅。
どうかみなさんが、無事に冬を超えて、明るい春を迎えられますように。