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土曜の夜、住み慣れた街を抜け出して。
「深夜のサービスエリアで、ラーメンが食べたい」
夜中のベッドの中で微睡みながら、ふと、その計画を思いついてしまってからは早かった。
スマートフォンに指を走らせ、息をするようにレンタカーと格安のホテルを予約する。
一週間後、土曜の夜。
行きつけのお店であたたかなカフェラテをテイクアウトして、
わたしたちは少しの荷物と得体の知れないワクワク感を胸に、車へ乗り込んだ。
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車窓を流れていく見慣れたはずの街は、いつもとなんだか違って見えて。
車は東名高速に乗り、そして西へ、ひたすら西へ。
窓の外には山々が映り、そしてまた明るい街の灯りが映り、真っ暗な海のそばを通り過ぎて。空にはぼんやりとした朧月が浮かんでいた。
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途中、何箇所かのサービスエリアに立ち寄った。
夜中のサービスエリアで食べるものって、どうして何もかもこんなに特別に感じるんだろう。
そして、人気の少ないサービスエリアはどうしてこんなにも格好良く目に映るんだろう。
フードコートでラーメンを食べて、小田原名物の蒲鉾を買い(夜中だったのて、しぞ〜かおでんにはありつけず)
お気に入りの音楽をかけながら、車はさらに西へ。
気が付けば、周りは深夜輸送を担う大型のトラックばかりになっていた。
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日付が変わる少し前に、目的の街へ到着。
夜中だったけれど、人もまばらなフードコートで熱々の餃子を頬張る。やっぱり、これだけは外せない。
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ホテルにたどり着いた時には、とっくに時計は0時をまわっていて、倒れ込むように就寝。
ほんの数時間前まで、東京の街にいたなんて信じられない。
"旅先にいる""知らない街にいる"そのなんとも言えない解放感と幸福感が、じんわりと胸に広がっていくのを感じた。
明日朝起きたら、なにをしようね。なにを食べようね。
会話を交わしたような気もするし、あれはもう夢の中だったような気もする。
こうして自宅から遠く離れたその場所で、いつもよりちょっと特別な、土曜日の夜が更けていった。