わが子に伝えたい お金と筋肉の増やし方
主観だが、
お金と筋肉は、健康で豊かな人生を送るための両輪だ。
実際に要介護状態になる原因の1位は、骨・関節・筋肉・神経などの運動器の障害といわれている。安静が続いたことで筋肉低下をきたし、日常生活動作が困難になるという経過をたどりやすい。
できれば、こうなる前に対策をしておきたい。
お金については、こんなことがあった。
2015年のこと
「来年はリオ・オリンピック開催の年だ!」
「ブラジルは、絶対に好景気になるだろうから、レアル建て債権でブラジルに投資しよう!」と
年利8.5%という利回りの高さにつられて、
ブラジルの政治・経済・為替の情勢を一切考えずに、信用格付けが低いハイ・イールド債(ほぼジャンク債)というものをに投資した。
その矢先、
ブラジルでは大統領が弾劾裁判により罷免されるという異例の事態に政治情勢が不安定になっている中、最悪の景気後退を迎えていた。
レアル安も急激に進み、投資したレアル建てのお金もみるみるうちに目減りして行った。
私は震える心を押しころし、
「配当金が高いので、元本が多少下がっても大丈夫」「オリンピックさえ始まれば、景気もレアルも回復する。」と自分を納得させて、債券を保有し続けた。
リオ・オリンピックが開催された。
開会式では「安倍マリオ」の登場で盛り上がりを見せていた。その後も体操男子の金メダル獲得などで湧いていた。
しかし、オリンピックが開催されても一向にブラジル経済の回復の兆しは見えないばかりか、リラ安も持続していた。
おかげで、オリンピックがつまらなく見えていた。
唯一の楽しみは、安倍マリオが最初のクリボーにやられる絵を想像するくらいだった。
オリンピック開催が、好景気や株高や為替高に繋がるわけではないことを知る経験となった。
結局、債券は償還を迎え、返金された金額は、配当金を合わせても投資した金額よりも下回た。
高い勉強代だった。
できれば、こうなる前に対策をしておきたい。
そして、わが子にはこんな失敗をさせたくない!
そのために、わが子に伝えたいお金と筋肉を増やす方法の基本をまとめたので、参考にしてほしい。
人類最大の発明
「複利は人類最大の発明である」
アインシュタインの言葉だ。
複利というのは、投資や貸し借りしたお金(元本)とその利息にも利息が付く仕組みのことだ。
逆に単利もある。
単利というのは、元本にのみ利息が付く仕組みだ。
例えば、利息7%で100万円の金融商品に投資して5年間保有した場合、複利と単利とで資産の増え方にどのような差があるのかというと。
〈複利〉 〈単利〉
1年後・・・107万円 107万円
2年後・・・114万4900円 114万円
3年後・・・122万5043円 121万円
5年後・・・140万2250円 135万円
このように5年後には、どちらも増えているが
複利のほうが単利より5万2250円も多くなっている。
これを10年保有したらどうなるか。
複利なら196万7151円、単利なら170万円とその差は約26万円にまで広がる。
確かに大発明だ。
特に、保有期間がものをいうと言われている。
若いうちから複利を利用できれば、時間を味方につけることができ、複利の力を最大限に利用できるからだ。
「こんなの絶対複利がいい。」
「うちの娘たちにも教えて、若いうちから複利を利用させなければ!」
「そして、私も複利で儲けたい!」
そう思った矢先に朗報だ。
我々は既に銀行に預金という名の金貸しを行っているそうだ。
そこにはちゃんと複利で利息がついている。
決して銀行さまに、預かっていただいているわけではなかったのだ。
「銀行さまは、私のお金を大事に保管してくれている上に、利息までつけてくれるいい人たちだ。」と、危うく神か何かなのかと思うところだった。
しかしすぐに、銀行にお金を預けるているということが朗報ではいことを知ってしまった。
今の銀行はこうだ。
銀行:「おう!5年間くらいお金貸してくれよ!」
私: 「ええっ?いくら?」
銀行:「100万円」
「ちゃんと利息を付けて返すよ。」
私: 「わかった、ちゃんと返せよ。」
「ハイ100万円。」
5年後。。。
銀行:「いや〜あの時は助かったよ。」
「お金返すぞ。」
「ハイ、借りた100万円と」
「利息の1000円」
私: 「・・・せんえん?」
「まさかおまえは!?」
「ジャイアンだったんか~い」
この銀行の利息は0.02%程度ということになる。
なんということだ。
今の銀行は、我々からお金を借りるだけ借りといて、0.02%しか利息を付けないばかりか、ATMでお金を出し入れするたびに手数料まで巻き上げる。
まさに銀行は、ジャイアンだったのだ。
人類最大の発明が台無しである。
例にあげた利息7%というのは、昭和の話だ。
だから昭和世代は口をそろえて言う。
「貯金しておきなさい。」
謎の集団貯金
貯金といえば、昭和末期のこと。
私が小学生のころの話だ。
なぜか毎月JAバンク(当時はJA貯金)の職員さんが小学校に来ていた。
そして我々児童は、1,000円~3,000円を通帳と共に職員さんに預けるという、謎の行事が執り行われていた。
国を挙げての貯金教育だったのか?
それとも鹿児島県の田舎だけの話だったのか?
いずれにしても、児童みんなでJAバンクに貯金するというのは異様な話だ。
こんなCMもあった。
「清く正しいちょちくちょきんぎょ」
JAバンクのテレビCMだ。
こんな素敵CMが放送されるほど、「貯金」こそが金融資産として清く正しかったのだ。
だからこそ、JAが学校から利権を得ているとしか思えないような行為が、当然のごとく行われていたのではないだろうか。
ただし、利息が高い時代だったので、我々も損はしていない。
1980年代には最高利息が8.0%ということもあったらしい。「貯金」においては、もはや都市伝説級の利息だ。今、私のもとに8.0%の投資案件が舞い込んで来たら、一旦詐欺を疑ってしまうだろう。
時代は変わった。
現代における「貯金」は、銀行さまにお預けするだけではなく、リスク資産にも資金を振り分ける、投資も含めたスタイルに変化しつつある。
例えば、余剰資金を用途に応じて普通預金・債券・株式・投資信託などに投資し、お金もリスクも分散する。うまくいくと昭和時代の「貯金」のような利息を得られるようにすることが出来る。投資で得られた配当金を再投資することで、複利による利息と同様の効果も得られる。
新NISAの登場も、その後押しとなっている。
投資のあり方も様々で、お金だけではなく健康にも投資することが、叫ばれるようになってきている。
その一翼を担うのが「貯筋」だ。
「貯筋」の三賢人
「貯筋」は福永哲夫が提唱した考え方だが、
現在から時代をさかのぼってみると、三人の「貯筋」賢人をみつけることができたので、その賢人たちの言葉を紹介しつつ「貯筋」についてお伝えしたい。
<第一賢人:貝原益軒>
江戸時代(1713年)に、儒学者である貝原益軒が84歳の時に書いた「養生訓」の一節だ。人が健康を保ち、幸福で長生きするための指南書として、300年前から現在に至るまで、読み継がれている予防医学のベストセラーだ。
書籍を通して、いかに健康で長生きするかという、現代の健康寿命問題の解決にもつながる内容が書かれている。
引用した一節には
「若いことを良いことに、不養生していたら年をとって後悔するよ。」ということが書いてある。
アリとキリギリスの話みたいなものだ。
やはり、年を取って要介護状態になってからでは遅いのだ。貝原益軒は、このことに300年前から気がついていたのだと思う。
運動については、このように考えていたようだ。
最低限の運動をおこない、日常生活を送れる最低限の筋肉を維持する考え方だ。「貯筋」としては頑張りすぎず、やや余裕を持たせた筋肉量の維持を目指したものだといえる。間違いないことは、無理な運動をして怪我をするような「借筋」だけは絶対しないということだ。
<第二賢人:福永哲夫>
「貯筋」の生みの親、福永哲夫の論文からの一節だ。先の貝原益軒の考えを先に進めている。
こちらの方が、間違いなく「貯筋」の量が多い。
運動についても、
筋を太く肥大化させることを狙っている。
筋肉というのは、負荷をかけ続けないと、ちいさく萎縮してしまう。こうなると筋力が弱くなり、動けなくなる。さいあく呼吸するための筋が萎縮して、自発呼吸ができなくなることもありうる。
筋肉の萎縮の主な原因としては、加齢、寝たきり、無重力環境があげられる(他に、病的筋萎縮もある)。
「貯筋」をすることで、こうなる前に運動による筋肥大を獲得させておく必要がある。
例えば、宇宙飛行士は、無重力の宇宙空間で過ごしたのちに地球に戻ると、一人で歩くことが出来ないほど筋肉が萎縮している。
そのため、飛行前の運動プログラムにより筋力を増強させて、筋肉の萎縮に備えているという。
実際に
15週間の継続的な高強度トレーニングを実施した後、3週間のトレーニングくしない期間があっても筋肉量に変化はなかったという報告や
高齢者に対して12週間の高強度と中強度トレーニングを継続実施した後、12週間のトレーニングしない期間を設けた場合の、筋肉量の変化をみた研究では、高強度でも中強度でも筋肉は萎縮したが、いずれもトレーニング開始前よりは、筋肥大していたという報告がある。
つまり、筋肉を肥大させることが「貯筋」にとって重要であることがわかる。
<第三賢人:ラオG>
「貯筋」の最終形態を発動させた人物だ。
「ブログ著者は、ついに2次元の世界に旅立ったのか?!」と思われたかもしれないが、
大丈夫だ。
物語に入り込んで、影響を受けやすい著者だが、
何とか踏みとどまっている。
このラオGのセリフが、あまりに「貯筋」していたので、紹介したくなった。
「病やケガまた老いてしまった時の為に!!」
「若い頃より筋力を積み立てて保管しておく気功術!!」
というセリフだが、完全に貝原益軒と福永哲夫の考え方を踏襲している。
現実的には、発動のし方に問題があるが、
若いときから、ケガのリスクを払いつつ高負荷トレーニングを積み重ねた結果であると言える。
それにしても、「貯筋」を知っているかのようなこの戦闘描写。作者である尾田英一郎の見識の深さに感服する。
第三賢人は尾田栄一郎だ。
今後の人間の進化と研究に期待したい。
「貯金」も「貯筋」も複利が大事
三賢人の言葉を紹介してきた。
順を追うごとにトレーニング強度が上がっていると言える。
ラオGクラスになると、高強度トレーニングというケガのリスクを含むトレーニングをすることになる。
ここまでくると「貯筋」においての投資といえる。
結局、「貯金」も「貯筋」リスクに応じて得られるリターンが大きくなるということだ。
しかも「貯筋」においては、筋肉が増えるほどに複利の力で筋肥大を促進できる。
例えばリハビリの現場では、こんな声を耳にすることがある。
「毎日毎日筋トレしているのに筋力が増えない」
「毎日毎日散歩しているのに脚が強くならない」
これらの声に共通することは、
常に同じ負荷量でトレーニングしているということだ。
毎日毎日同じ負荷量でトレーニングすると、一旦その負荷量に応じた筋肉をつけることができるが、それ以上の筋肉はつきにくい。
せっかく獲得した筋肉。その増えた分の筋肉も使ってトレーニング負荷量を増加させていくことで、筋肉は肥大し増強する。
これが、複利の力を使った筋肥大であり、筋力増強だ。
ここまでは、お金と筋肉にとっての複利の大事さを話してきたが、
複利という考え方は、人生にとっても重要な考え方だと思える。
きっとこうだ。
獲得したお金を使って、さらにお金を増やすことができる。
獲得した筋肉を使って、さらに筋肉を増やすことができる。
獲得した知識を使って、さらに多くの知識にたどり着くことができる。
獲得した技術を使って、さらに難しい技術に挑戦することができる。
「貯金」も「貯筋」も「知識」も「技術」も複利が大事なのだ。
複利の力を使って、お金も体も健康的に年を重ねたいものだ。
さっそく、わが子に伝えよう。
しかし、
「中高年世代が実践するにはもう遅いのではないか?」と思うかもしれない。
そんな時は。両学長という起業家でユーチューバーの言葉に勇気をもらいたい。
「今日が人生で一番若い日です。」
物事に遅いなんて事はなく、年齢を問わず、そのことを始めようと思ったその日が自分の人生で一番若い日。まずは色々考えずにやってみようという意味だ。
たしかに、たった一度の人生で今日が一番若い日だ。
今日から「貯金」と「貯筋」と「複利」を活用して、わが子と共に、お金も体も健康で悔いのない豊かな人生を生きたい!
そういえば、最近「新興国市場の10年」になる!
という話を耳にしたが。。。
いや、成熟していない市場での投資は絶対危険!
耳を閉じておこう。
〈参考文献〉
・「超訳 病気にならない体を作る 養生訓 」ディスカヴァー21、著:貝原益軒、編訳:奥田昌子
・「新訳 養生訓 日本人が伝えてきた予防健康法」PHP研究所、著:貝原益軒、編訳:蓮村誠
・福永哲夫「貯金のすすめ」スポーツ科学研究, 6, 50-54, 2009 年
・「ワンピース74巻、77巻」集英社、尾田栄一郎
・Riki Ogasawara et al.「Effects of periodic and continued resistance training on muscle CSA and strength in previously untrained men」Clinical Physiology & Functional Imaging,2011 Sep;31(5):399-404.
・Savvas P Tokmakidis et al. 「Effects of detraining on muscle strength and mass after high or moderate intensity of resistance training in older adults」Clinical Physiology & Functional Imaging,2009 Jul;29(4):316-9.