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月星真夜(つきぼしまよ)
2024年12月27日 07:03
その日、ウサギとカメは銀杏並木の下を歩いていた。足元に広がる枯葉は、二人の歩みに合わせて静かに音を立てる。その柔らかな音色に、ずっと耳を傾けていたくなるような午後だった。ふと顔を上げると、視線の先にルネサンス様式の洋館が現れた。長い時を重ねたその優美な佇まいは、まるで物語の扉を開くように、優しく二人を迎え入れた。「この図書館には、国内だけでなく、世界中の子どもの本が集められているんだよ」
2024年12月15日 06:30
その日、ウサギとカメは、六本木一丁目駅で電車を降りると、地下から地上へ続く長い階段を、陽の光を目指して上っていた。ようやく太陽の陽射しが肌に触れると、二人はビルの隙間を縫うように続く坂道を、ゆっくりと下り始めた。坂の先には、まるで一枚の絵画のような光景が待っていた。「見て!クリスマスマーケットだわ」中央広場にはクリスマス色に彩られた小さなお店が並び、どこからともなく漂う甘い香りが、冬の空
2024年10月6日 06:09
その日、カメが図書館の閲覧席に足を踏み入れると、ウサギが一冊の本をじっと見つめ、眉間に小さなしわを寄せながら、静かにため息をひとつ、ふたつと漏らしていた。その姿は、まるでその本に彼女の人生にとって欠かせない何か、大切な答えが隠されているかのようだった。カメが音を立てないようにそっと隣の席に座ると、突然「ミッケ!」と小さな声が聞こえた。不思議に思ってウサギの本をのぞき込むと、彼女はページに散
2024年10月1日 06:09
その日、ウサギとカメは元町・中華街駅に降り立ち、港が見える丘公園へと続く階段を一歩ずつ登っていた。公園の展望台を通り過ぎ、やがて小さな橋を渡る。そして、二人は目的地にたどり着いた。二人は「古田足日のぼうけん」の世界にそっと足を踏み入れた。「どうしても、ここに来たかったんだ」カメが静かにそう呟くと、ウサギはその声に引かれるように彼の方を振り向いた。「見て、ロボットカミイだわ!」ウサギの目が輝
2024年9月25日 06:53
その日、半袖のシャツでは少し肌寒さを感じながら、ウサギは図書館の赤ちゃんコーナーに腰をおろし、並んだ絵本をじっと見つめていた。ふと目に留まったのは、真っ赤なだるまの絵本だった。鮮やかな赤が「ここにいるよ」と語りかけてくるようで、ウサギの心を強く引き寄せた。彼女は閲覧席に腰を下ろし、そっと絵本を開いた。図書館の穏やかな空気の中、ページをめくる音だけがかすかに響いていた。「かがくいひろしさんの
2024年9月6日 06:19
図書館の一角で、ウサギはじっと大きな絵本を見つめていた。それは特に目を引く、縦が116センチもある長い一冊だった。「この『100かいだてのいえ』、大きなサイズで読むと迫力がすごいの」彼女は両手に力を込めて、その本を持ち上げた。そのとき、カメが偶然近くを通りかかった。 「その100かいだての世界に行ってみない?」カメは微笑みながら彼女に声をかけた。ウサギが頷くと、二人は図書館を後にして駅