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新城勇の断片記5

大学2年生になった夏休みのある日、エアコンのないボロ下宿の灼熱地獄に耐えかねて、朝一で行きつけの区立図書館に行きました。 バイトもない日だったので、今日はここで一日読書と勉強だと思いつつ、とりあえず新聞の朝刊をひらいたところ、ある一点から目が動かなくなりました。 そこには、江藤淳先生が自裁されたとの大きな見出しがあったのです。 しばらく頭が働かないまま、記事を追いました。 前年に奥様を病で亡くされていたこと、そのことに苦しみ続け、ご自身も体調を崩されていたこと。 前

    • 新城勇の断片記4

      高校卒業時、興味があった仕事は自衛官か俳優だったとは以前書きましたが、 当時の私は、そのまえに、少年期から思春期にかけて考え続けていたことをもっと深めたいと思っていました。 そのために大学で学びたいという気持ちを抑えることが出来なかったのです。 横文字だけはどうしても理解できないという私の偏向性のため曲折ありましたが、最終的にはどうにか自分の希望する学科内容をそなえた大学に入学できました。 回り道をしましたが何も言わず学資を出してくれたことに関して、親には感謝しかあり

      • 人間について1

        前回書いた芝居の感想のなかに、私は押し付けがましい芝居が嫌いだと書きましたが、これは何も芝居に限ったことではありません。 押し付けがましいとは、いわゆる「マウント」を取るような他者への接し方にも通じます。 あるいは頼んでもいないのに「愚かな君を教え導いてあげよう」というような。 嫌ですね。 これは一種の「傲慢さ」や相手に対する「軽率さ」でもあるのですが、むしろ私にはその人の「弱さ」の暴露に感じられてしまうのです。 それも無自覚な。 自分が恣意的に軽んじられるという屈

        • 舞台「MUJINA」 感想 その2

          私にとって観劇とは、非常に特別な時間である。 いまの私には、観劇はかなりの「贅沢」と言ってよい。行けるとしてもせいぜい月に1〜2回。それも毎月行けるというわけでもない。 したがって、どうしても、厳選せざるを得ない。 「これだけは是非、観なくては」と思えるものだけを観に行っている。 それでも観てみたら、正直つまらないこともあるし、期待どおり面白いこともある。 あたりまえのことだが。 この芝居は面白かった。 まず劇場のロケーションからして良かった。 駅からのちょっと

          新城勇の断片記3

          さて、高校3年生の私は、大学受験で全滅しましたが、さりとてすぐに社会に出る決断もできず、親の脛をかじる形で浪人することになります。 当時、私は教科としての英語が非常に苦手でした。 私の性向として、自分が興味あることには理解も覚えも速いのですが、興味がないことに関しては、特に少年のころは極端に駄目で、学校の試験は教科によって満点か赤点かという感じでした。 なので親には「出来るはずなのに手を抜いている」といつも叱られていましたが、自分としては手を抜いている感覚はなく、当時、

          新城勇の断片記3

          舞台「MUJINA」感想 その1

          ちょっと時を遡ってしまうのですが、 8.25(日) 14:00〜 studio P' Gahornz Remake2「MUJINA」 観てまいりました。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 まったく残暑の厳しい日曜の昼下がりであった。 右手で凶暴な陽光を少しでも遮りつつ、 JR田町駅の芝浦口から渚橋に向かって歩く。 「studio P'」なる劇場に行くのは初めてで、google map によると駅から約1.3kmの道のり。 歩いて17〜8分ほどであろうか

          舞台「MUJINA」感想 その1

          新城勇の断片記2

          先日、戦争を舞台とした演劇「ふるさとの唄」の感想を書きました。 また最初の「断片記」に、直近の私の出演作品を記しましたが、そのいずれもが日本の「歴史」に関する作品です。 過去の出演作品も振り返ってみると、やはり歴史劇が多い。 決してそういう仕事だけを選んでいたわけではないのですが、これにはやはり私の俳優としての出発点、また個人的な興味、関心が深くかかわっているのではないかと思います。 私は小学生のころ学校の図書室に入り浸って歴史に関する本を借りまくる少年でした。 私

          新城勇の断片記2

          舞台「ふるさとの唄」感想 その2

          この作品は、無名兵士たちのある心の叫びを掬い取ろうとしたものであると同時に、 ほかでもない、戦場となったこの島に生きていた人々の物語でもある。 難渋を極めた撤退戦のさなか、これも本隊とはぐれてしまった、ひめゆり学徒隊の2人は、 件の少尉に率いられた日本軍に出会い、この地下壕に逃れてきた。 そして物語は、主にこの2人の視点から語られてゆく。 今で言えば、高校生くらいであろうか。 これほど、未来への希望に満ち溢れている年ごろもあるまい。 また、弟を目前で亡くして精神に異常

          舞台「ふるさとの唄」感想 その2

          舞台「ふるさとの唄」感想 その1

          9.29(日)14:00〜 ザムザ阿佐谷 観てまいりました。 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 舞台は、大東亜戦争(太平洋戦争)末期。 1945年6月の沖縄本島南部、 島尻地区のある地下壕。 4月1日の米軍上陸から始まった沖縄地上戦は、 いよいよ最終局面を迎えていた。 2か月間にわたる激しい消耗戦のすえ、 日本軍は米軍の圧倒的な兵力物量に押され、 ついに首里を中心とする主陣地帯を放棄。 南部島尻地区へと全面撤退を余儀なくされた。 島尻地区には天然の鍾乳洞

          舞台「ふるさとの唄」感想 その1

          新城勇の断片記

          はじめまして。俳優の新城勇と申します。 これから「新城勇の断片記」と題して、俳優としての私にまつわる断片を、徒然なるままに綴ってまいりたいと存じます。 俳優と名乗りましたが、現在、私が俳優の仕事をしているかというと、コロナ禍以来、ほとんどしておりません。 直近の舞台演劇の出演は2019年2月にまで遡りますが、KUROGOKU "鈍色のヘルメット" 70年安保闘争のころの東大全共闘リーダー役。 映像作品の出演は、当時私が業務提携していた芸能プロダクション「ビッグファイタ

          新城勇の断片記