スパイスを自分で作る世界に足を踏み入れると「戻れなくなるくらいクオリティが上がる」
ご無沙汰しております。はじめての方ははじめまして。おだしです。
過去にはホットクック使いこなし度【神レベル】までの奮闘記や、ヘルシオ教室の裏方から感謝を込めてを書きました。
2023年を振り返るとヘルシオ・ホットクック界隈もいろいろなニュースがありました。その中でも、ダントツでnoteに書き残したいと奮い立ったのが、もっとクックのエピソードでした。
もっとクックを専門店の味たらしめる稲田俊輔氏
2023年10月に、ホットクックの別売アクセサリー「もっとクック(別売まぜ技ユニット)」が発売となりました。
アタッチメントのようにまぜ技ユニットを付け替えることで「ヘラでのかきまぜ」が実現でき、それによって専門店の味を自宅で手軽に味わうことができるのが最大の訴求点です。
批判的思考の実践者であれば「ヘラまぜ⇒専門店の味」に対して「論理の飛躍ではないか?」と指摘されるかもしれません。この論理に「地に足がつく」のは、もっとクックのレシピを監修してくださった稲田俊輔氏のおかげと言えます。
稲田俊輔氏はエリックサウスの総料理長でいらっしゃいます。全国に何店舗も展開されている人気の南インド料理専門店でお仕事される傍ら、さまざまな料理を貪欲に探究されています。その過程でホットクックにも着目して、実際に活用してくださっていたことが、今回のお話に繋がりました。
インタビュー映像、記者発表、ヘルシオ教室でお話を伺う機会に恵まれ、毎回メチャクチャ面白いお話に圧倒されました。
促された話題に対して10倍くらいの勢いでエピソードを返してくださいました。
「自分のスキルを超えたスペシャリストという使い方ができれば思いもよらないことができる」のように、稲田氏からいただいたコメントから、商品の魅力や価値を表現する言葉がたくさん発掘できました。
刺激を受けた私も、動画やリールを何本も作りました。ヘルシオ・ホットクックの公式インスタで発信しているので、ぜひチェックしてみてください。
もっとクックの一丁目一番地「インド宮廷風キーマカレー」
ビジネス用語として「一丁目一番地」という言い回しがあるそうです。真っ先に取り組むべき課題、のような意味で使われています。
この表現を借りると「ホットクックの一丁目一番地は肉じゃが」でしょう。私自身、最初に味わった時には感動しました。決定キー連打で辿りつく意味で、開発者にとっても最初に作ってほしいメニューだと推測できます。
しかし、人類の欲には底がありません。あの美味しい肉じゃがでさえ、毎週のように食べれば当たり前になってしまい、次なる美味しさを求めます。
「簡単・美味しい」は当たり前で、家庭料理をさらなる高みへと押し上げてくれる存在がもっとクックです。
では、もっとクックの一丁目一番地は何か。メニュー集の表紙をかざる「インド宮廷風キーマカレー」だと私は捉えています。
メニュー名にある「インド宮廷風」とは、1950年代ごろに生まれて発展した近代的なインドレストラン文化を総称したものであると、稲田氏が記者発表の質問で答えておられました。
そのようなオーセンティックなレストランで振る舞われるメニューを、家庭で味わえるようにしたのが、監修レシピのインドカレーとなります。
キーマカレーの解説で稲田氏がお話されていたのは「普通に作ると味がぼけてしまいやすい」ということでした。味の輪郭をしっかりさせることを狙い、素材やスパイスをじっくり煮込んで味を凝縮させるレシピとなっています。
しかし、じっくりと煮込むと焦げるリスクと隣り合わせになります。専門店で60人分を作るのであれば温度変化もゆるやかになりますが、家庭の量で焦がさずにまんべんなく作るのはプロでも難しいそうです。それを可能にするのがもっとクックです。
今回のレシピ開発を振り返って稲田氏は「これまでの家庭用レシピでは封印せざるを得なかった調理法ができて楽しかった」と話してくださいました。その調理法が、じっくり玉ねぎを炒めるもので、複数のレシピで採用されています。
さらに、メインの食材であるトマトピューレと合びき肉は、和食に例えると昆布だしとかつおだしの組み合わせに相当すると話してくださいました。グルタミン酸とイノシン酸。それぞれの食材からうま味が出て、それらを一緒に煮込むことによって「うま味の相乗効果」が生まれ、一体感が出るとの解説でした。
食材から十分なうま味が出るので、外から余剰な調味料を加えなくても美味しいのです。
お皿をキャンバスだと思って自由な発想で
そのように格式が高そうな「インド宮廷風キーマカレー」ですが、ヘルシオ教室で稲田氏は「お皿をキャンバスだと思って自由な発想で」と話していました。
アレンジとして、刻んだパクチー、千切りにしたしょうが、トマトの角切りをのせるほか、意外性あるものとして温泉卵を落とすような食べ方が紹介されました。
「お店ではないのでご家庭では邪道でも何でも良い」とのことで、確かに専門店では出せなさそうですが、確実に美味しそうだなと想像できます。
そう捉えると、単に専門店の味が家庭で味わえるという魅力に留まらず、専門店では出せないような禁断のアレンジができる新しい魅力に可能性を感じます。ぜひ試してみたいです。
ベーシックであるからこそ、レシピの骨格がしっかりしていて、多少のアレンジは受け止めてくれる。そのように開発された監修レシピです。
スパイスは素材の味を引き出す脇役
稲田氏のインタビューの中で「スパイスはあくまで素材の味を引き出す脇役」というお話がありました。
スパイスが素材の味を覆い隠して何でもカレー味にしてしまうような先入観がありました。そうではなく、あくまで主役は食材であると捉えねばなりません。
監修レシピのインドカレーでは、クミンパウダー、コリアンダーパウダー、カイエンペッパー、ターメリックパウダー、ガラムマサラを使用します。
我が家でも薬膳のレシピを作るために既に揃えたスパイスでした。普段おだしの家では子供用に甘口で作るため、大人はスパイスを後がけして食べます。
もっとクックのレシピでは「スパイスを熱で起こす」工程があります。しっかり熱を通して香り立ったスパイスはこちらに迫ってくるような迫力が出ます。手作業だと焦げて台無しするリスクも、もっとクックであれば百発百中うまくできます。
さらに次の段階として、ガラムマサラを自分で調合する世界や、ホールのスパイスを自分で挽く世界があります。例えば、ガラムマサラはたくさんの種類をまぜるイメージがあるけれど、3~4種類に絞る方がむしろ力強いのだそうです。
手間と味の折り合いになりますが、スパイスを自分で作る世界に足を踏み入れると「戻れなくなるくらいクオリティが上がる」「生活の質が上がる」と稲田氏は力強く話していました。
スパイスに関するマニアックな話題は、もっとクックを紹介する動画では泣く泣くカットしました。スパイスについて語る稲田氏は、ますます話に熱を帯びて勢いがあり、聴いていて学びがあって面白いです。
スパイスとの付き合い方について「○○道」のような人生をかけて歩んでいるような凄みを感じました。誤解を恐れずに言うのであれば「沼」です。
子ども用はカイエンペッパーをパプリカパウダーで置き換える
カレールウを使わずにスパイスで作ると聞くと、「子どもは辛くて食べられないのでは?」と心配になるもので、ヘルシオ教室の参加者からも質問がありました。
自分で調合するからこそ辛さも調整しやすいことを解説していただきました。
監修レシピで使用しているスパイスのうち、辛さにつながるスパイスは「カイエンペッパー」と「ガラムマサラ」だけで、さらに言えば原料に含まれる唐辛子が辛さのもとです。
カイエンペッパーの材料は、基本的には唐辛子のみとなりますので、これを取り除くだけで辛さは抑えられます。
ただし、カイエンペッパー自体から出るうま味が損なわれてしまうので、パプリカパウダーで置き換えるのがベストというお話でした。半量をパプリカパウダーで置き換えると中辛、全量を置き換えると甘口に調整できます。
パプリカパウダーを入れ過ぎたからと言って味のバランスが悪くなるものではないので、全量をパプリカパウダーで作っておいて、子供用を取り分けて、大人用だけカイエンペッパーを入れて仕上げるような方法も紹介されました。
もう一方の「ガラムマサラ」は、カレーらしい味を出すために調合されたスパイスで、唐辛子を含むものもあれば、含まないものもあります。お子さんと一緒に食べる場合は、材料を確認して唐辛子を含まないガラムマサラを選ぶのがよいそうです。
そのように工夫すれば、監修メニューのほとんどのレシピはお子様にもおすすめできるという話でした。ただし、「ハイデラバード風ビーフカレー」だけは、カイエンペッパーを抜いてもお子さんにはおすすめできません。
最もマニアックな「ハイデラバード風ビーフカレー」
今回の監修レシピのインドカレーの中でも、「ハイデラバード風ビーフカレー」は最も本格的で最もマニアックなカレーとして紹介されていました。
「フライドオニオン」と「テンパリング」といったテクニックを駆使したレシピです。テンパリングではパウダーではなくホール、つまり原形のままのスパイスを使用します。
ハイデラバードはインド内陸部にあり、牛肉がよく食べられる地域で、このレシピにも牛肉がふんだんに入っています。
ナンやチャパティを添えて食べられれば完璧ですが、ごはんやパンにも合います。稲田氏は、手に入りやすいイングリッシュマフィンを合わせるのもおすすめと話しておられました。
カルダモン爆弾に注意
「ハイデラバード風ビーフカレー」でテンパリングするスパイスは具体的に、クミンシード、カルダモンホール、クローブホール、シナモンスティックです。
その中でも、カルダモンはスパイスの女王と呼ばれており、甘く高貴な味わいを作ります。ただ、スパイスそのものの味はとてもとても個性的です。
ヘルシオ教室の後、スタッフが美味しくいただいた際に、「なんじゃこりゃー」という叫びが聞こえてきました。ホールのカルダモンをそのまま噛んでしまうと悶絶します。
界隈では「カルダモン爆弾」と呼ぶのだと教えていただきました。
本場インドでも、流石にホールのカルダモンは食べないそうで、訓練を積めば歯に触れた瞬間にカルダモンを認識して、より分けられるようになるそうです。日本のカレーガチ勢の中には、勇んで食べる人もいらっしゃるそうです。
「ハイデラバード風ビーフカレー」そのものは、癖があって食べる人を選びますが、好きな人は物凄くハマりそうな味です。挑戦する際には、カルダモン爆弾にご注意ください。
カイエンペッパーは一味唐辛子で代用できる
カイエンペッパーに関するこぼれ話も興味深かったです。ヘルシオ教室で参加者からの「チリペッパーでもよいですか?」という質問がありました。
質問の回答としては、チリペッパーもカイエンペッパーも呼び方が異なるだけというものです。念のため、原材料が唐辛子のみであることを確認して選ぶと失敗しません。
「業界で呼び方が統一されていない」という話から、似たような名前の「チリパウダー」がチリコンカンを作るための調味料として販売されていることもあると教えていただきました。これを選んでしまうと、レシピ通りのインドカレーには仕上がらないので、材料の確認が大切です。
反対に、材料として唐辛子を使っているという意味で、カイエンペッパーは一味唐辛子で代用できるという話もあり、「へぇ」と感心しました。この話を聴いて以来、私は自宅でうどんやそばにもカイエンペッパーをかけるようになりました。
専門店のカレーだけではないもっとクック
もっとクックの魅力と言えば「専門店のカレーが家庭で気軽に味わえる」がまっ先に浮かびます。それはとても正しいですが「それだけではない!」ということもヘルシオ教室を聴講して深く感心ました。
もっとクックがあれば中華、フレンチ、和食など、さまざまな国の料理が味わえます。
汎用性の高い中華ソース「葱油ソース」
監修レシピのうち「葱油ソース」は中華のソースで、記者発表や試食会ではサラダチキンにかけたものを味わっていただきました。
食べてみて、何年か前に流行った「食べるラー油」に近いものを感じました。そう捉えると、幅広く応用できることも腑に落ちます。
稲田氏もヘルシオ教室の中で「白ねぎを炒めて出てきた甘みやコクを油に移す」「油が主役」と話しておられたので、当たらずとも遠からずかもしれません。
「調味料は脇役」とのことで、あめ色に炒めた白ねぎだけで充分に美味しいため、黒酢がなければ普通の酢でも支障ないし、うま味調味料を加えなくてもおいしいのです。
応用例として紹介されたのは、ゆでたブロッコリーにかけた一品料理。ゆでた麺にかけた「葱油拌麵」。豆腐にかけた「中華冷奴」などでした。ちょうど野菜ゆでも、めんゆでも、ホットクックが得意とするものです。
友達にドヤ顔ができる「豚肩ロースの赤ワイン煮こみ」
監修レシピの中には、カレー以外の煮込み料理として「豚肩ロースの赤ワイン煮こみ」があります。いわゆるビストロに出てくるフランス料理で、無骨な伝統料理、家庭料理という側面があります。
解説によると、玉ねぎ、セロリ、にんじんがフレンチの煮込み料理における代表的な組み合わせで、カレー同様にじっくり煮込むことで深い味わいを出します。
カレーではスパイスが入ったかわりに、「豚肩ロースの赤ワイン煮こみ」ではハーブや香味野菜によって味を引き出します。料理のジャンルや国が変わっても、共通している構造のようなものを垣間見ることができて、学びが深かったです。
友人を招いてのおもてなしや、クリスマスディナーで得意料理として振る舞うと、ドヤ顔ができるメニューであると稲田氏が話されていました。
スタッフが自宅で作ったところ、普段は無頓着でコメントもせず黙々と食べている家族が、突然「なにこれ?めちゃくちゃおいしい!お店の味!」と言ったことが職場の話題になるほどでした。食べる人も作る人も幸せにする料理、素敵ですね。
仕込みがトラウマになった「ごま豆腐」
稲田氏は和食の料理人として修行していた時代があったらしく、ごま豆腐の仕込みはトラウマだというエピソードも興味深かったです。
ごま豆腐はとろみを出せば出すほど美味しくなるので、延々とまぜながら作るのですが、後半になるにつれてまぜればまぜるほど重く重労働となります。熱くてプチプチと飛沫が顔に飛んでくるような苦労も伴います。
でも、そんな苦労をして作ったごま豆腐は、やっぱり美味しいのです。それが、もっとクックであれば苦労せずに約15分でできて、同じように美味しいのです。
レシピの記載では加熱後1時間ほど冷やすものになっていますが、冷やさずに食べることを稲田氏はおすすめしていました。ほんのり温かい状態のごま豆腐をつまみ食いするのは料理人だけの特権とまで話しておられました。
作ると美味しいのはわかっているけれど、トラウマがよみがえって作る気が失せてしまう「ごま豆腐」。それを知ると作ってみたくなります。
この記事で紹介した多くのお話は、ヘルシオ教室のアーカイブとしても公開しております。稲田先生自身の言葉で語られているので、興味を持った方に観ていただければと思います。
もっとクックの魅力を体験してほしい
私自身、もっとクックについて初めて聞いた時に「専門店のカレーが作られる」「ごま豆腐が作れる」と言われて、正直ピンときませんでした。
それが、稲田氏のインタビューを撮影編集を通して何度もその言葉を耳にするうちに、もっとクックが持つ意味や捉え方が私の中でガラッと変わりました。
さらにエリックサウスに足を運んで専門店のカレーを味わってみたり、もっとクックで作ったカレーを試食で味わったりするうちに、私の中でも実感として「手に入れなければ」という気持ちが湧くようになりました。
この経験から、稲田氏が語ってくださったようなストーリーを幅広く伝えること、実際に食べていただくことは、とても重要だと実感しました。
記者発表でも記者やライターのみなさんに食べていただき、次々に完食されるのを目にした際には、手応えを感じました。
ヘルシオ教室で募集をかけて3年ぶりとなる対面の試食会イベントをシャープの東京ビルで開催しました。
以前にnote記事を寄稿いただいた、たろすけさんにもご参加いただきました。さらに、素敵な記事まで書いてくださりました。もっとクックについて、より的確・端的に書いてくださっています。
界隈の方々から話題にしてくださったおかげで盛り上がり、もっとクックが品薄になる状態が続いていました。不便をおかけして、申し訳ありませんでした。
そんな中で自分だけが手に入れるのは申し訳ないため、私の家にもまだもっとクックを迎え入れておりません。
また「1.0Lタイプや1.6Lタイプは無いのか?」という質問や問い合せも多く頂いています。こちらも申し訳ありません。現時点で回答できるのは2.4Lタイプのみとなります。
ようやく、生産が追いついてきたということで、たくさんの人々にもっとクックを体験していただけるというのはうれしく思います。みなさんとも、この驚きを共有できるといいなと願います。
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