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短編小説

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今まで書いた短編集です。
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記事一覧

「かもしれない弁天」#毎週ショートショート

「かもしれない弁天」 ずっと昔の話だ。 私が通っていた高校にフォークソング部があってね。…

sanngo
1日前
75

「接吻代行のお暇」#毎週ショートショート

「接吻代行のお暇(おいとま)」 小学校二年生の時だった。校舎の階段の下で待ち伏せしていたK…

sanngo
2週間前
74

寒い日に#シロクマ文芸部#ミリしら解説

「寒い日に」 【掌編小説】 寒い日にかぎって、手ですくえそうな満天の星から、滑り落ちたよ…

sanngo
2週間前
72

「夢を見る…」#シロクマ文芸部#ハモ美術館

夢を見る消しゴム? 路地裏の文房具店の店先で、ごったに入ったセール品のカゴの中から申し訳…

sanngo
1か月前
73

男と女のすれ違い【掌編小説】

紅葉を見ると思い出すのは、沙莉が僕の車の助手席ではしゃぐ姿だった。 「飛騨高山へ行きたい…

sanngo
2か月前
68

北風と…#シロクマ文芸部

【北風と…】 「北風と凪は仲が悪いのさ」 数本残った前歯から、話をする度にスースーと空気…

sanngo
2か月前
61

十二月の朝 #シロクマ文芸部

十二月なのに、霧深い朝のことだった。 容赦なく降り続いた雨が、やっと終息を迎えた朝、自転車で巡回していた交番の橘巡査は、大きな銀杏の樹の下で倒れている男女を発見した。 既に事切れているのは一目瞭然だったが、霧の中、その二人は手を握りあい微笑みを浮かべているように見えた。 ーー心中? すぐさま本部に電話を掛けると橘巡査は現場保持の為に遺体から少し離れた位置に陣取った。勤続五年を向かえるが、人口一万にも満たないこの田舎町で初めて自分で見つけた遺体だった。それも二人、二遺体…

働いて…【掌編小説】#シロクマ文芸部

           働くの、日本人は働き者なの。       そんな男のお話だよぉ〜 働…

sanngo
2か月前
65

「生きたい死体」#逆噴射小説

「生きたい死体」  目玉が飛び出た惨めな姿になった死体からは、魚が腐ったような異臭が放た…

sanngo
3か月前
72

爽やかな#シロクマ文芸部

🎃「Happy Halloween」🎃 爽やかな朝だった。空は高く蒼く澄みわたり、空気の中に鼻腔をくす…

sanngo
3か月前
57

ブーケ・ドゥ・ミュゲ#シロクマ文芸部

木の実と葉が、さえずっている、 囁いている、ざわめいている。 公園のベンチに座り、カサカ…

sanngo
4か月前
69

「無駄な幸せ、不幸せ?」#逆噴射小説大賞2024

「無駄な幸せ、不幸せ?」 あいつの血はその一滴一滴、一粒一粒が生きていて精気が沸くように…

sanngo
4か月前
76

紙切れ一枚#秋ピリカグランプリ2024

磨りガラスの向こうから柔らかな陽射しが差し込んでいた。チラチラとその陽射しが揺れて私達の…

sanngo
4か月前
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「夕焼けは」#シロクマ文芸部

夕焼けは、遠くに連なる山々を紅く燃え上がらせ、やがてゆっくりと夜へと溶けていった。 夜は、いや、闇への誘いはロマンティックな雰囲気を辺りに漂わせる。公園のベンチに座っている二人のカップルの様子が私はさっきから、気になって仕方がなかった。 「だから…」 さっきまで、その頬を夕焼けで赤く染めていた男が、隣に腰掛けている女の視線に気付かないふりをして前を向いたまま話している。 「だから、だからさ…」 私には次にくる言葉が分かる気がした。 しかし、黙ったままじっと男の瞳を覗き込ん