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「無駄な幸せ、不幸せ?」#逆噴射小説大賞2024


赤ペン先生、宿題出来ましたm(__)m


「無駄な幸せ、不幸せ?」


あいつの血はその一滴一滴、一粒一粒が生きていて精気が沸くようにポコポコと音を立てていた。かろうじて彼の死を私に納得させたのは、生気を失って見開かれたままになった両の目だけだった。いや、目と言うよりも濁ったふたつのガラス玉という表現がピタリと当てはまる物と化していた。
趣味の悪いペルシャ絨毯の上に夥しいあいつの血液が流れ、血溜まりを作っていく。

あなたが悪いのよ

どうして好きなら好きだと言ってくれなかったの?ヤダ、まだ血が溢れ出してる。人の身体の中って、どのくらいの血液が流れてるのかしら?
それにしても血なまぐさいって、こういう匂いのことを言うのね。鉄分の匂い?
でも毎月訪れる、あの痛みを伴う匂いとは違って新鮮だからかしら?
私、割りと好きみたい。

右手に掴んだ包丁からも、ポトポトと鮮血が床に流れ落ちていた。
何をしちゃったんだっけ?私…
遠い記憶のようで、すぐ其処に横たわっているような浅い記憶を呼び戻す事に全力を注いでみた。

あなたが悪いのよ

その言葉だけが刻まれたかのように私の脳裏に浮かび上がってくる。試しに左手で、貴方が買ってくれた、趣味の悪いペルシャ絨毯を引っ剥がしてみた。

あ、やっぱり

黒い小さなボタン電池のような物が、幾つも貼り付けられていた。

これがハウリングの原因?
私のベッドの隣で、いつも私の身体を撫で回していたのは、あなただったの?変な匂いのする紅茶を飲まされて眠らされて。
私、珈琲の方が好きなのに。

でも、これでやっとゆっくり眠れるわ。
何ヶ月ぶりかしら。薬無しで眠るのって。
幸せって、こういう事を言うんでしょ?
あぁ、そうだわ、シャワーを浴びなくちゃ。浴槽には入れない。寝室に隣接した浴室で、お気に入りのシャンプーを使って、血で固まりかけた髪を洗おう。浴槽の中のもう一つの幸せが、どうなったのかなんて知らないわ。

カチッ

うん?気のせいかしら?
ディンプルキーが左に回ったような気がしたけど?

(797文字)



つづく


ニンジャスレイヤー公式/ダイハードテイルズ様
よろしくお願いします。



いつきさん、いつもありがとう♡






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