マガジンのカバー画像

2022年新作テレビドラマ放浪記

314
2022年の新作テレビドラマの感想です
運営しているクリエイター

記事一覧

2022年テレビドラマ決算

今年もあと2日、ということで今日は「テレビドラマ」に関してまとめたいと思うが、正直、1月クール、4月クール、7月クールと今ひとつ弾けるような作品がなく、テレビ劣化がドラマにも及んでいるのは仕方ないかなと思ったのだが、10月クール、最後に及んで「Silent」「エルピス」「PICU」とすごい力作が揃い、まだまだテレビドラマ来年に向けて期待できる状態になったのは嬉しい次第。そんなわけで、今年はクール毎に作品を振り返ってみようかなと思う。 冬(1月〜3月) このクールで、心に残っ

「エルピス~希望、あるいは災い~(第10話)」真実を真っ直ぐに伝えるという嘘くさい現実をどう抉るかという世界・・・。

主題であった冤罪事件はそれなりに決着がついた感じ。しかし、真犯人の逮捕シーンなどは出てこない。そして、副大臣の失脚もない。つまり、最後にそれと差し替えた強姦事件の握りつぶしの方が大きかったということなのだろう。という部分を納得するかというと、なかなか難しい。そう、最後に長澤まさみが語っているように、真実などというものはこの世にないのだ。だからこそ、脚本家は、曖昧なままに視聴者にテーマを放ったということなのだろう。中途半端に思う人も多いかもしれないが、ある意味、今のこの国の現実

「クロサギ(第10話)」結果的にはハードボイルドな感じが恋しくなった私でしたが、平野紫耀は、期待できる俳優でした。

銀行に所属し、政界と繋がり巨悪な詐欺をして日本の金融をその手中に入れようとした佐々木蔵之介が逮捕されて大団円という話である。ある意味、親の仇と言いながらも、世の中のクズを葬ろうとした主人公の動きは、今日の一つのヒーロー像なのだろう。 そんな屈折したヒーローを平野紫耀は、なかなかニヒルに演じ切ったと言って良いだろう。ジャニーズ退所も決まっているわけだが、これからの仕事に期待できる主演ドラマだった。前作が山下智久主演だっただけに、どうなるやらとは思ったが、山下よりも影みたいなも

「Silent(第11話)」言葉が見えるということ。笑顔は見えるということ。

多くのドラマがエンディングを迎えているが、このドラマは綺麗にクリスマスの夜にラストシーンを作ってくれた。テレビドラマが好きな脚本家が期待通りにラストを笑顔で綺麗に終わらせたということだろう。この最終回を見て、この週末はまた世田谷代田駅周辺は賑わいそうだ。今日のネットニュースで見ると、世田谷代田駅を提案したのは小田急側だという。まあ、新しくなった駅を宣伝したいという意味だったのだろうが、すごい宣伝効果だ。最後にはホームでプレゼント交換してるしね。駅では1月まで、主題曲や主題歌が

「君の花になる(第10話)」エンタメを盛り上げるサクセスストーリーをもっと作って欲しいですよね。

最終回はなかなか感動的にまとまっていた。ここを着地点に物語を作ったことはわかる。そして、8LOOMのステージングも、なかなか格好良いわけで、そう考えるとドラマ全体の構成がもう少し練られていたら、結構な傑作にはなりえた作品なのではないか?と思ったりもする。 最近の若い男たちの将来的な希望みたいなものは、私のような古い男には全くわからないと言うのが本当のところだが、今一つ、そこに男女関係の勢いみたいなものを感じにくい部分がある。それは、ドラマの恋愛模様にも言えて、それ自体もドラ

「PICU 小児集中治療室 (第11話)」医療現場の厳しさとやりがいの狭間に見える未来

先週、何故に最後に地震が起こるんだ?と思ったが、理由は、それによって今の北海道の救急医療の限界みたいなものを見せるためだったのだろう。ある意味、最終回において、ドラマのテーマがしっかり見えたと言う感じもした。 ラストシーン、心臓移植を受ける予定の男の子が、補助心臓も体に入って外を歩けるようになって、吉沢亮と語るシーン。これをハッピーエンドとは言わないだろうが、未来が見えるようなシーンでホッとした。そして、安田顕がこの病院に残れるようになったのも、観ていて嬉しかった。 しか

「エルピス~希望、あるいは災い~(第9話)」正義(利権)を守るためなら、他人の命まで軽く扱う人々がいること・・・。

ある意味、最終回の前に、岡部たかしがニューススタジオを壊しにかかるというのは、このドラマの本意なのだろう。つまり、腐り切った職場、世界に対して当たるところは、昔自分が正義と信じて働いていた職場。そして、自分の位置から見た風景が、あまりにも腐っていて耐えきれないという心象風景。真面目なサラリーマンなら、こういう風景を見て、さまざまなものを感じるだろう。そういうものを感じさせるのが今の日本国なのである。 今回は、先週、長澤まさみが週刊誌のスクープを出せなくなった経緯からの導入。

「クロサギ(第9話)」銀行と政治家と刑事と詐欺師と、求めるのは正義か?私欲か?

最終回前、平野が警察に擦り寄っていたりして、佐々木蔵之介を逮捕するために警察も動くが、結果的には上に圧力がかかり、証拠を持っていると平野に言った山田キヌヲは殺されてしまう。それをやったのは中村ゆりのようだった。つまり、佐々木、平野、三浦友和の三つ巴の食い合いが始まっているわけだ。その中で、十分に戦える平野は、詐欺師としては一流になったということなのだろう。佐々木蔵之介と対峙するときの、特殊メイクにやる気を見せているのは、ドラマとしてなかなかの高揚感があった。 しかし、資金源

「Silent(第10話)」言葉がなくなったことで伝えられないこととは?

シナリオ本出るのですね。全てが終わった後に、文字としてもう一度読み返したい衝動に駆られるドラマではありますよね。半分は手話で言葉がないのに、そう感じさせるのがすごいとも言える。「手話」で語るところをシナリオで読むとどう感じるのか?というのも興味がある。この作品、生方久美さんの華麗なる連ドラデビュー作として語り継がれることは間違いないわけですが、まずは彼女の文体に触れたいという気はしますよね。シナリオが読みたいと思ったりするのは、かなり久しぶりです。 そして、本編。今回は、紬

「君の花になる(第9話)」皆が未来を目指すのは良いのだが、爽快感は欲しいですよね

ネットで拡散された写真から、本田翼は寮を去り、高橋文哉は活動停止。実際にこういうことがあったにしろ、メインのメンバーを活動停止にするような内容だったのか疑問には思う。ファンだって、メイン抜きの8LOOMには興味が湧かないのではないか?ドラマ自体がファンタジーであれ、これからこういうグループをやろうと考えている者たちへの夢になってもらいたい気がするのだが、その辺り考えてます? 今更、男性グループのメンバーが年上の女と付き合って何の問題があるのか?高橋は未成年ではないわけだし、

「PICU 小児集中治療室 (第10話)」奇跡が起こせる時にまた災いが・・・。

函館の病院に戻った心臓移植が必要な少年に奇跡が起ころうとしていて、そこでドクタージェット登場。もはや、これで少年の命が救えそうだというところで、地震が起こるとは・・・。日本は、そういう国である。こういうドラマを書ける方は、人の命があることが、本当に奇跡であることをわかっているのだろうと私は思う。医療ドラマは、その観点を強く打ち出しているものが私は好きである。 今回は、先週の吉沢亮の退職願の件から始まった。人生で何回かは、誰でもパラレルにメンタルをやられることがある。それは、

「エルピス~希望、あるいは災い~(第8話)」眞栄田郷敦の疎外感の向こうに何を問うのか?

ラストで、眞栄田を激励するという流れ。というか、ここまでマスコミの狡賢さというか、歴史を勝手に動かしているような仕組みを描いていいのか?ということですよね。今に始まった事ではないが・・・。眞栄田郷敦が、ますます正義の男のイメージになっていくのが、また面白い。会社を解雇になったということは、完全にフリーであると同時に、何を喚いても影響力がなくなるということだ。脚本的には、声の届かない人が冤罪にどう対応できるのか?ということも書きたいのだろうから、ここからが眞栄田の本領発揮とも取

「アトムの童(第9話)」勝つのはクリエイターであり、未来を創るものだという結論

先週の山﨑とオダギリが「ぷよぷよ」で対決するシーンがこの展開になる感じはした。結局は、ゲームを作るものたちが勝つ展開。そう、時代は熱いものたちに応援するという結果であり、キーマンとなっていた山崎努は、その応援者であったということだ。その山崎努の心を動かしたのが松下洸平だという流れも悪くない。二人の友情でゲームができていくという話の大団円としては、悪くない。 そんな中で、このドラマの中で敗者的に扱われる、麻生祐未や西田尚美には、全く視聴者を惹きつけるような未来が見えなかった気

「ジャパニーズスタイル(第6、7話)」自殺願望のある刑事さんと、マジシャンの父帰る

前回6回目からは、前回から1年ごという設定。ということで、仲野太賀の扱いは専務になっている。うさぎ小屋に住むのはやめたらしく、わらくずも頭についていない。一年経って、あまり変わっていないようだが、どうも、要潤と檀れいは、相思相愛になっているの?ルーシー情報では、2人が虹の屋を乗っ取ろうとしているという計画。 まあ、ラストに向かって、30分のエンタメをどのように盛り上げるかは、脚本家は大変だろう。ここまで、作ってしまったら、少しでもラストに向かって面白くならないと、何を言われ