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2022年テレビドラマ決算

今年もあと2日、ということで今日は「テレビドラマ」に関してまとめたいと思うが、正直、1月クール、4月クール、7月クールと今ひとつ弾けるような作品がなく、テレビ劣化がドラマにも及んでいるのは仕方ないかなと思ったのだが、10月クール、最後に及んで「Silent」「エルピス」「PICU」とすごい力作が揃い、まだまだテレビドラマ来年に向けて期待できる状態になったのは嬉しい次第。そんなわけで、今年はクール毎に作品を振り返ってみようかなと思う。

冬(1月〜3月)
このクールで、心に残っているのはまず
「ミステリという勿れ」
コミック原作であり、菅田将暉の哲学的な物言いが面白く、警察が彼に頼ってしまうという面白さで、新しい風景を見せていたと思う。多重人格の門脇麦のストーリーの最後はなかなか感動的であったが、ドラマの構成として最終回がイマイチの感がありましたね。これは、「PICU」を除く今年の月9全体に言えたことですが・・
「ファイトソング」
清原果耶、民放初主演。恋する気持ちがわからないミュージシャンと耳が聞こえなくなく少女の契約恋物語。考えれば、今年の最初も聴覚の失われる話のドラマがあったことをこれを書いて気づきました。やはり、マイノリティの話で目新しさというか、健常者の奇跡的な生活を確認させるみたいなものはドラマにしやすいのでしょうかね。そして、着地点を感動的に描けていたのが良かったですね。

あと、このクールだと、日曜劇場「DCU」金曜ドラマ「妻、小学生になる」や「ゴシップ」「ムチャブリ!」などがありましたが、日曜劇場の、変な熱いテンションが、この辺りから少し鼻につくようになり、質的なものがついていかなくなってきてるのが気になりましたね。「妻〜」もスピリチュアル的なものを取り入れる難しさみたいなものを感じたりしました。「ゴシップ」はネットニュースの現場の話。今年は、この手の舞台のドラマが増えてきた。ある意味、このドラマも「エルピス」と似たようなところをついてるのですが、ネタが弱すぎましたよね。

あと、この3月に「カムカムエブリバディ」が完結。朝ドラとしては、久しぶりに、ずーっと心に残る作品を見た気がしました。全体の構成が素晴らしかった。そして、女優、深津絵里の底力を見せつけられた感じがしました。早く、再放送、していただきたいですね。

春(4月〜6月)
そして、春を迎え、朝ドラ繋ぎでいえば、多分、10年くらいの中では、最悪の作品「ちむどんどん」が始まるわけです。まあ、ここまで質の低い作品をプロが作ることもあるのだなと、最後は嗤うしかありませんでしたが、黒島結菜のイメージが壊されたことが一番問題だと思いました。早く、立ち直っていただきたい。

そして、このクールで残っているのは
「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」
コミック原作でリメイク物ながら、このクールでは最高に面白かった。それも、今田美桜の快演に尽きるわけですよ。この人、こんなにテンション高い演技ができるのか?と本当に感心しました。それを見守る、江口のりことのコンビネーションもすこぶる良く、続編も作って欲しいし、また、今田美桜主演ドラマを見たいですね。
「インビジブル」
今年の金曜ドラマの中では、これが一番面白かったですね。犯罪のコーディネーターである、インビジブルと警察との戦い。そして、その罠は最後に警察の内部にまで巣喰っていたという結末。高橋一生の身体を張った演技と、柴咲コウの妖しい艶技で、うまく異世界を表現し切った感じはありました。これを見て、柴咲コウはもっとインターナショナルに働いてもらいたいなと思いましたね。

このクールだと、日曜劇場「マイファミリー」が話題になりましたが、どうも展開のまどろっこしさと、最後の犯人が「ああそうなの」という感じなので、構成的に私はあまり感心しませんでしたね。月9「元彼の遺言状」は原作をうまく構成しきれなかったのと、主人公の綾瀬はるかの性格に全くついていけずでした。木村拓哉主演のボクシングドラマも、学園ものとしては成立していましたが、ボクシングドラマとしてはいまいち。そして、キムタク主演にしては、ハッピーエンドすぎたところはイマイチな感じでした。あと、スピリチュアルと技術革新をテーマにした「パンドラの果実」。テーマに対して練りが足りない。やはり、それなりにこういう世界が理解できてる視聴者を唸らせるくらいに作らないと褒められませんよね。そして、ラブコメが2本あったり、嫁いじめドラマもありましたが、この辺りは凡庸の域でした。

夏(7月〜9月)
このクールは、坂元裕二、遊川和彦という脚本家が参戦ということもあり、期待したものの、大御所たちの作るものは、もはやあまり勢いは感じず、韓流ドラマのリメイクの方が盛り上がっていた感じでしたね
「六本木クラス」
ということで、韓国のドラマの舞台を六本木に置き換えて、竹内涼真、新木優子、平手友梨奈というキャストでリメイク。それよりも、香川照之のセクハラ問題が起こって、スキャンダラスに色々と話題を提供した感じになったが、韓国ドラマの構成力のうまさを生かして、結構な青春ドラマになっていたと思う。まあ、家のしがらみや復讐の話は好きではないですけどね。そして、平手友梨奈はやはり只者ではなく、まだまだ伸び代あるなと見せてくれたことは収穫。
「ユニコーンに乗って」
最近、私のお気に入りの一人が永野芽郁なのだが、それなりに主人公として役をこなせる力は十分についていると感じた次第。インターネットの教育ソフトの起業物語だが、そこに西島秀俊を加えることで、なかなか新しい風味のドラマになったと思う。ビジネス的な内容はかなり甘さも見られたが、夢を形にするというテーマをしっかり描いていたと思います。

あとは、日曜劇場「オールドルーキー」も、スポーツ選手のサポートという新しい世界を描いて新鮮だったが、上司との心の乖離的な部分とか今ひとつ描く必要があるのか?と感じる部分もありの感はあった。あと巷では好評みたいな「石子と羽男」という弁護士ドラマ。まあ、地味な民事訴訟の話ばかりで今ひとつ私的には弾まなかったが、中村倫也は面白いですよね。そして最初に書いた坂元裕二の「初恋と悪魔」、遊川和彦の「家庭教師のトラコ」は、今ひとつベテランの空回り的風にしか見えなくて残念。 CXの「競争の番人」と「テッパチ!」の2本は、今まで描かなかった題材をテーマにしてるところは面白かったが、それ以上にならずといった感じを持ちました。

秋(10月〜12月)
そして、それまでの閉塞感を全て飛ばすように最終クールはドラマを堪能できたといって良いです。
「Silent」
ある意味、若者たちの間では社会ブームにもなっていたのでしょうね。撮影現場に人が集まるということ考えてもそれはわかります。新人、生方美久の連ドラデビュー作。それは、今まで誰も書けなかった脚本の形を見せてくれた気がする。大きなドラマがないが、耳が聞こえない人がいるというだけで、ここまで人の心の微妙な刹那さを描いたことは評価に値する。そして、スタッフ、キャストがそれに答えて、思いっきりプロの仕事をした結果を見せていただいた感じがするのだ。
「エルピス~希望、あるいは災い~」
ついこないだ、最終回を迎えた、渡辺あや脚本作品。これも今までになかったドラマの世界を味合わせていただいた感じがした。冤罪事件の話から、周辺のさまざまな人や仕事への批判を交えながら、その中で真実を求めることがこんなに辛いのか?と思わせる感じが強烈だった。そして、長澤まさみを含めキャストたちの好演が光った。特に、眞栄田郷敦は、ここから一気に俳優として化けていく感じがした。生方さんの次回作には、本当に期待大!

「Silent」も「エルピス」も撮影機材を映画並みのものを使っていたということがネットに書いてあったが、確かにNetflixとかの金をかけた配信コンテンツが増える中で、そういうところに力を入れて少しでも重厚なテイストにドラマを焼き付けていくことは大事だろう。そして、この流れは来年も続くはずだ。

あとは、ゲーム業界を描いた「アトムの童」も傑作の部類に入ると思うのだが、どうも、最近の日曜劇場が演出に過度な力が入っている感じがしてもう一つ褒められない部分がある。日本の漁業の改革を描いた「ファーストペンギン!」も私はとても好きだった。奈緒の熱演と、それを受ける堤真一のコンビネーションの良さは完璧でした。そして、こういう社会問題をドラマにすることはすごく意味があると思うわけです。あと、「PICU小児集中治療室」も新しい形の医療ドラマとして、とても秀作であると感じましたね。そう、このクールCXがすごい作品を一気に投げ込んできた形。「クロサギ」のような安定の続編はこういう時には影が薄く見えてしまう。同じTBSの「君の花になる」も、音楽とのリンクで、主題曲がチャートを賑わせているのは新しい傾向だが、ドラマが今ひとつだったのは寂しい限りでした。

という感じで、今年のドラマは最後の3ヶ月に秀作が集まりすぎていて、そこで前半の9ヶ月を忘れそうになる感じではあった。まあ、最後に良いものが出るのは嬉しい限りで、これが来年に繋がっていくことが大事ですよね。

作り手も、新しい素材を色々見つけていこうという努力が見られた一年ではあったと思います。ネット業界、そのビジネスの話はこれから増えていくでしょうね、そのあたりもっと作り手が勉強して良い脚本を作って欲しい気がします。スピリチュアル的なものも増える傾向ですよね。アニメ界隈ではそういう話がリアルにクロスオーバーしてきてますものね。あと、恋愛ものやラブコメはドラマの基本だと思っているので、もっと新しく感動するものを求めます。医療ドラマも作るのをやめることはないでしょうが、「PICU」にはその新しい形を見せてもらいました。決して、医者をスーパーマンに扱う必要はないのですよ。もっとリアルに人の命の尊さを感じられる作品を期待します。

そして、エンタメ業界は、映画、ドラマ、配信というような垣根が、今以上になくなっていく感じがします。私的には、やはり映画というものが好きなのですが、もはや、そういう垣根もいらない感じもしますし、あくまでも、ユーザーである我々をいかに異次元に運び、楽しめて、学べるものを提示していただけるか?ということに尽きると思います。

最後に、今年一年、テレビドラマを作って放送していただいた皆様に感謝をすると共に、来年、更に良い作品を見せていただけることを希望いたします。

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