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「Silent(第11話)」言葉が見えるということ。笑顔は見えるということ。

多くのドラマがエンディングを迎えているが、このドラマは綺麗にクリスマスの夜にラストシーンを作ってくれた。テレビドラマが好きな脚本家が期待通りにラストを笑顔で綺麗に終わらせたということだろう。この最終回を見て、この週末はまた世田谷代田駅周辺は賑わいそうだ。今日のネットニュースで見ると、世田谷代田駅を提案したのは小田急側だという。まあ、新しくなった駅を宣伝したいという意味だったのだろうが、すごい宣伝効果だ。最後にはホームでプレゼント交換してるしね。駅では1月まで、主題曲や主題歌が流れているそうだ。駅をアミューズメントスポットにしてしまうドラマというのは新しい。そこで気になるが、脚本家はどこの駅のイメージでこの話を書き始めたのだろうか・・・。

まあ、それはそうと、最終回だ。積極的な抱擁のシーンとかはなかったが、最後に皆が笑顔で終わること、これが重要なことだったのだろう。そして、本当のバリアフリーとは、相手の障害など気にせずに普通に接することだという答えが明確に表現されていた。そして、想が「紬の声は聴こえないが、紬の話は見える」というところも、このドラマの大切なところなのだろう。というか、結果的には、人を障害者というだけでコミュニケーションがとりにくいと考えること自体がおかしいというテーマだったのかもしれない。

そう、最初から書いているが、このドラマが描くものは、その聴覚障害が与える人の心の変化以外に何もないのだ。そう、サブのドラマを何も作らずに11回持ちこたえ、大きな反響を起こしたことがドラマだったと言ってもいいのだろう。そう、手話も含めて言葉をうまく紡ぐことで、熱いドラマは成立するということを証明してしまった感はある。逆に考えれば、構成としては拙い部分が多いのかもしれない。しかし、そこが新人の強み。演出側も、その新鮮さみたいなところを壊さずにドラマを作り上げたことが、このドラマの成功の要因であることは間違いない。

そう、シンプルすぎる故に、このドラマに「何が面白いのだ?」と思った人もまた多かったはず。そして、いつドラマチックに展開していくのか?と思った人も多いのかもしれない。しかし、あくまでも優しさをどう表現するかということに徹底した脚本であったことで、このドラマは時代の中に成立したと言っていい。陰鬱さを皆が感じるこの時代に、何か皆が忘れかけてる優しさを思い出させてくれる感じが共感の素なのだろう。

今年見たドキュメント映画「名付けようのない踊り」の中で、田中泯が、人間は初めにコミュニケーションをとるのに、言葉より先に踊りでそれをしていたのではないか?という発言をしていたのが印象的だった。

そう、多分、言葉などというものが体系化する前には手話に似たような形でさまざまな表現をしていたはずだ。そう考えると、手話で語る中には、想像以上に創造的な世界があるのかもしれない。そんなことも思った最終回だった。

その最終回は、8年前の教室で、日直の想と紬が語るシーンから始まる。その後に、その場所に止まっている心と、現在の心が、二人を疎外しているようなことを湊斗がいい、紬は決着をつけようと故郷のその教室に戻る。ここは、脚本的には、思いっきりドラマチックにしたかったのだろうな。そう、最初の方のポストイットによるテーブルの会話から、ここでの黒板の会話につながっていく。そして、8年前に立ち止まっている想に対し、紬はかなりの荒療治を行う。これは、変に言葉でドラマを紡ぐよりもわかりやすい方法であった感じではある。この辺り、手話が多く、それだけでも、ドラマとしてはかなりの冒険だ。それを撮らせてしまう脚本だったということだろう。

そして、エンディングの前に奈々が花束を買って、その花たちが皆の手に渡っていく。これも素敵な流れ。そう、縁のあった全ての人を幸せにする花。「花には音がないが言葉はある」。人は花のように輝けばそれでいいのだろう。奈々が春尾に花束を捧げるシーンはとても綺麗なシーンだった。

終わってみれば、すごく良かったドラマ、すごく感動したドラマというよりは、何か今までになかったものを見せてもらってありがとうという感じなのだ。最終的には、今ある自分をしっかり生きるということなのだろうけど、そういうのが、この終わった後からじわじわする感じがする。

発売されるビデオはディレクターズカット版らしい。その前に、シナリオ集でおさらいして、じっくりとこのドラマの不思議な触感を改めて体験することが先だろう。

最終回で気づいたけど、ビデオのカラーグレーディングの少し冬っぽいみたいな配色がすごくセンスが良いですね。好き嫌いは色々ありましょうが、2022年のテレビドラマの中での代表作品であることは確かです。そして、生方美久さんの次回作にただただ、期待をする次第です。良きドラマをありがとうございました・・。

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