【書評】『ストーナー』を読む。誰の人生だって、ひとつの物語。
ロッシーです。
『ストーナー』(著者:ジョン・ウィリアムズ)を読みました。
以下は、Amazonのページからの引用です。
こういう紹介文は、商業上の理由で「盛っている」ことが多いため、あまりあてにはしないのですが、今回は直感が働き読んでみることにしました。
その結果は・・・
いや~いい小説でした!
なんか、しみじみとした良さがありました。秋にピッタリの小説ですね。
※以下ネタバレがありますのでご注意ください
タイトルどおり、この本の主人公は、ウィリアム・ストーナーです。
ストーナーの人生は、よくある波乱万丈物語ではありません。
農業の知識を学ぶためにミズーリ州立大学に進学したストーナーでしたが、ある授業で英文学に触れたことで大きな影響を受け、英文学への情熱が芽生えます。そして、農業を学ぶという家族の期待を裏切り、文学の道に進むことを決意します。大学での学びは彼にとって人生の指針となり、後に教職を得ることで、彼は生涯を大学に捧げることになります。
大学卒業後、ストーナーは同僚の紹介でイーディスという女性と結婚します。しかし、結婚生活はうまくいかず、互いに不満を募らせながら孤独な家庭生活を送ります。イーディスとの間に一人娘のグレースが生まれますが、イーディスの支配的な性格や家庭環境の影響により、娘との関係も疎遠になりがちでした。
家庭だけではなく、職場でのストーナーの人生も順風満帆ではありません。大学での教職につき、文学を教える日々を送りながらも、学内での同僚や上司との人間関係に悩まされます。特に、同僚のホリス・ローマックスとの確執は彼のキャリアに大きな影を落とす出来事となります。ローマックスとの対立は、ストーナーがとある学生の進級を巡る問題で正義を貫こうとしたことが原因で、結果として彼は学内で孤立を深めることになります。ちなみに、ローマックスとの確執はずっと解消されることはありません。
そんな中、ストーナーは大学の研究者であるキャサリンと出会い、恋に落ちます。二人は互いに深く惹かれ合い、短いながらも情熱的な恋愛関係を築きます(不倫ですけど)。この恋はストーナーの人生において、数少ない幸福な時間をもたらしますが、大学の圧力により二人の関係は引き裂かれ、キャサリンは別の地で新しい生活を送ることを選びます。
その後、ストーナーは老いと共に体力が衰えていく中、静かに職務を続け、やがて病に倒れます。彼はベッドに横たわりながら、自分の人生を振り返り、静かに生涯を終えるのです。
ざっと、こういうお話です。
何か大きなことを成し遂げて成功した!というようなことはありません。どこにでもありそうな一人の人生模様を描いています。
文体も実に淡々としています。でもなぜか惹きつけられるんです。これはまさに文学の力だと思います。
特に、ストーナーが最期を迎える場面は特筆に値します。病床で静かに人生の幕を閉じるシーンは
「ああ、こうやって人生が終わるのか」
と、読んでいる自分が彼と一緒に時を過ごし、最期の瞬間を迎えているかのような気持ちにさせられました。
さて、この本を読んで思ったのは、
「誰の人生だって、ひとつの物語になるんだろうな」
ということです。
多くの人の人生は平凡なものかもしれません。生まれて、学校に行って、働いて、中には結婚して子供を産み育て、そして最後は死にます。
でも、だからといって、どれも同じ人生なのかというとそんなことはないわけです。
『ストーナー』は、ストーナーという人間が主人公の物語ですが、あなたの名前がタイトルになった物語だって、書かれていないだけで、それは確実に存在するのです。
その物語が面白かろうと、つまらなかろうと、波乱万丈だろうと、平凡だろうと、その価値に高低はありません。
ただそれは「あなたの物語」であって、それ以上でも以下でもないのだと思います。
『ストーナー』はおすすめです。ぜひ、秋の夜長に手に取ってみてください。本の装丁も美しいです。
たまにこういう本に巡り合うと、やっぱり文学っていいなと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
Thank you for reading!