【書評】『企業変革力』
ロッシーです。
企業変革で有名な、ジョン・P・コッター氏の『企業変革力』という本を読みました。
コッター氏は、ハーバード大学ビジネススクールの名誉教授です。どうすれば会社が変わることができるのか?についてこの本は述べられています。
欧米と日本では文化が異なるので、参考になるのかどうか半信半疑でしたが、非常に腹落ちする内容で大変有益でした。
内容をざっくりまとめると、会社が変革するためには、以下の8つのステップを順番通りに進めることが必要だというものです。
①危機意識を生み出す
いわずもがな、危機感が必要だということです。人間はそのままでは現状維持に固執するため、「変わらないといけない!」と思うための起爆剤として危機感が必要だということです。危機感を持つためには、きちんと現実を直視することが必要です。そのためのデータも重要です。単に「危機感を持て!」と言うだけでは誰も危機感を持つことはありません。
②変革を進めるための連帯チームを作る
危機感を個人個人が持っているだけでは何も変わりません。危機意識の高い人達が集まって、「ではどうしたらいいのか?」を検討することが必要です。ここで重要なのは、エゴの強い人間や政治色の強い人間、能力に欠け人間をチームに入れると改革は失敗するということです。チームメンバー選定が非常に重要なポイントです。
③ビジョンと戦略を生み出す
将来のあるべき姿(ビジョン)と、それを達成するための方法(戦略)を作ることです。優れたビジョンは、「具体的にイメージできる」「実現が待望される」「実現可能」「明確な方向性」「柔軟である」「簡単に説明できる」という特徴をもっています。
④ビジョンと戦略を周知徹底する
いくら優れたビジョンと戦略を作っても、それを社員が知らなかったり、一度だけ伝えるだけでは意味がありません。だから、あらゆる機会を活用して、何度も周知徹底する必要があるということです。
⑤社員の自発を促す
ビジョンが周知徹底され、自発的に行動する人が増えていくような仕組みづくりが必要です。また、変革をしようとすると、必ずそれに抵抗する人達が現れます。抵抗勢力や変革の障害を取り除くことが重要だということです。この段階になると、抵抗勢力による政治的な動きや感情的な部分にいかに対応するかがメインになってきます。
⑥短期的成果の重要性
ビジョンと戦略を周知徹底し、従業員の自発を促したとしても、長期間にわたって成果が出なければ、「本当に私達のやっていることは正しいのか?」という疑念がわき、それが変革を妨げる要因となります。だから、目に見える成果を短期的に出す必要があるということです。
⑦成果を活かして、さらなる変革を進める
ここまでくると、成果が出ているため、「このやり方でいいんだ!」と社員が安心と自信を持ち、勢いがついてきます。その勢いを失わないよう、さらにどんどんと変革の波を起こす必要があります。
⑧新しい方法をと企業文化
変革を継続することで、現状を変えることに抵抗がなくなり、新しい価値観を社員が持つようになります。そして、新しい企業文化が生まれます。
以上です。
この8つのプロセスを見ると、「確かにそうだなぁ」と思いませんか?
ほとんどの会社で変革がうまくいかないのは、そもそも誰も危機感がなかったり、メンバー選定を間違えたり、何のビジョンも戦略もないのにとにかく変わることだけを要求したりしているからかもしれません。
つまり、プロセスにおける①から③の部分がうまくいっていないのだと思います。だから当然それ以降のプロセスもうまくいくわけがありません。
これは政治にも言えると思います。
いくら緊急事態宣言を出しても、ほとんどの国民は危機感をそれほど持っていません。多少の危機感はあると思いますが、変わらないといけない!と強烈に思うほどの危機感ではないでしょう。
つまり、8つのプロセスでいえば、①の時点ですでに失敗しているわけです。
だから、外出や会食、三密を避けるように政府がアナウンスしても、何も変わらないのは当然です。そもそも当の政府に危機感がないのは、政治家個人の行動を見ても明白ですからね。
この8つのプロセスは、色々なところで応用可能な深い洞察を含んでいると思います。
是非、興味のある方は実際に読んでみてはいかがでしょうか。かなり読みやすい内容ですのでおすすめです。
Thank you for reading !