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美術と映画と読書。ときどき懐メロも交えながら、ちょっとイイ話、ちょっとタメになる話をお届けします。

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    映画を観て感じたことを綴った記事をまとめました

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    本を読んで感じたこと、思い浮かんだことについて書いていきます。 ネタバレはあるかもしれないですが、あらすじは書かないつもりです。

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最近の記事

殿様やるじゃん~根津美術館「百草蒔絵薬箪笥と飯塚桃葉」

ピンポイントでマニアなテーマな展覧会だと思っていたが、足を運んでみると意外や意外、新たな発見があったりして面白い、ということがあるのでなかなか見逃せないものである。今回もまさにそんな展覧会。 蜂須賀家に仕えたという蒔絵師・飯塚桃葉。 この人のことは知らなったが、その蒔絵の技術は確かなものであることは、素人目にもよくわかる。件の薬箪笥だけでなく、笛や印籠なども多く展示されていてそれだけでも見応え十分である。 飯塚がこの薬箪笥を作ったのは仕えた大名の間のネットワークに由来する

    • 最後にまた教えられた~出光美術館「トプカプ宮殿博物館 名宝の競演」

      出光美術館が年内の展覧会を最後に長期休館に入る。 今の美術館での最後の展覧会が「トプカプ宮殿博物館名宝の競演」である。 オスマン帝国は言わずと知れたイスラム教の国家。宗教国家とはいえ、その宝物はかなりゴージャス。まあキリスト教も同じようなものだから、それとこれとは別ものか。 かの国のキラキラ(ギラギラ?)した宝石をちりばめた工芸品を観ていて、そういえば日本の工芸品は金箔や螺鈿はふんだんに使われるが石はあまり登場してこないな、ということに思い至る。 火山国という土壌の違いによ

      • 常連さんいらっしゃい~「改組 新 第11回日展」

        自分としては通い出して5回目の日展。 眼にとまる作品が、だいぶ固定化されつつあるのだが、新たな作家の作品に出会えるだろうか。。 こうしてみるとチラシも微妙に変わってきているのが分かる・・・ 日本画部門 桜と柳を対峙させた、古典的なモチーフを画面いっぱいに描きこんだ作品。一見清々しさを感じるのではあるが、よくよく見ると柳の枝のうねりがなんとも禍々しくも映る。 こう見えても日本画だという。。改めて日本画・洋画の垣根とは何だろうと思ってしまう。 本作は、上半分いっぱいに窓と

        • なんて無駄のない面白さ~「激突!」

          さて、今はスピルバーグ強化期間に入りまして。 その原点である作品から。1973年公開、と言っても最初はテレビドラマだったらしい。「激突!」である。 シンプルで無駄がない構成で、十二分の怖さと面白さを表現していると思う。 いわゆる「煽り」モノということは観る前から知っていたのだが、果たしてそれで90分もどうやって持たせるのだろうと思っていた。実は単に追いかけっこだけをしているわけではなく、途中で食堂やガソリンスタンドに立ち寄ったり、他のドライバーと関わったりと、その恐怖を増幅

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          いい日旅立ち~「喜劇・大安旅行」

          昔の喜劇映画は、タイトルに「喜劇」と銘打っているものが少なくない。なぜだろう。。 今回はそんな喜劇映画、1968年「喜劇・大安旅行」 この時代は新幹線も開通したりして、旅行映画というジャンルがあったようだ。国鉄全面協力のもので、たしかに全国各地の風景も堪能できて、足を運びたくなる。数年後にキャンペーン化される「ディスカバー・ジャパン」の前哨戦といったところか。 その鉄道にまつわるあれやこれやというストーリーなのだが、本作は主演・助演を固める俳優陣が安定している。 フランキ

          いい日旅立ち~「喜劇・大安旅行」

          これぞ純愛~「図々しい奴」

          最近は、瀬川昌治監督の作品を中心に視聴中。 その中で今回はこちら。1964年公開「図々しい奴」 主演は谷啓。当時売れっ子であったクレージーキャッツのメンバー。 クレージーといえば、他にハナ肇、植木等もいるが、事務所は彼らをそれぞれ別の映画会社と契約させたという。今だと映画会社専属契約というのはないのでピンとこないけど、もしかしたらそういうのがあったからこそ谷啓が主演できたのかもしれない。 この「図々しい奴」はもともと週刊誌の連載小説。最初杉浦直樹の主演で映画化、次いでテレ

          これぞ純愛~「図々しい奴」

          社会の動きも踏まえた上質なコメディ~「トッツィー」

          アメリカ映画はどの時代でも様々なジャンルがあって羨ましい。 コメディで言えば50~60年代も面白いが、80年代になっても新たな形の面白さを追求しているところが素晴らしい。 今回は1982年公開の「トッツィー」 こんな映画、今でもなかなかできないだろう。ダスティン・ホフマンならでは。 もちろん、フィクションなのだから、展開やディテールに無理があるのではと思うところもあるのだけど、なんかそんなことはどうでもよくなる。 それほど無駄のない脚本と達者な演技。 時代的には女性の社

          社会の動きも踏まえた上質なコメディ~「トッツィー」

          メリハリの利いたオースティン~「EMMA エマ」

          今年の大河ドラマは1000年前が舞台となっているが、こちらの作品は200年前の小説を基としている。そしていまだに色褪せないという。まさに文学の金字塔。2020年公開「EMMA エマ」 ジェーン・オースティンと言えば「高慢と偏見」が最も有名だろうけど、「エマ」はその次くらいか。 主演はアニャ・テイラー=ジョイ。今年マッドマックスの続編で主演を務めた人。まあ、役柄は真逆だけど。目力が強くて、引き込まれるような容貌。 芝居がうまいのかどうかよくわからないけど、あえて芝居調に演じ

          メリハリの利いたオースティン~「EMMA エマ」

          まあまあ皆さん、そんなに熱くならないで~「スオミの話をしよう」

          おととしの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で名をあげた三谷幸喜。 彼の新しい監督作品が公開となったので、映画館まで足を運んでみた。 三谷作品の特徴は、役者の違った魅力を引き出してくれるところだと思う。これは役者にとってありがたいことなのではないだろうか。 本作で言えば、坂東弥十郎や遠藤憲一、宮澤エマなんかは彼の作品で新たなキャラクターの幅を拡げられた役者だと思うし、他にも草刈正雄とか山本耕史などもそう言えるだろう。 そういう中でも本作は長澤まさみをフィーチャーした映画である点

          まあまあ皆さん、そんなに熱くならないで~「スオミの話をしよう」

          みんな大好きタイムリープもの~「サマータイムマシン・ブルース」

          8月が終わってもまだまだ暑い9月。ここで夏らしい作品を。 2005年公開「サマータイムマシン・ブルース」 なんとなく公開された時の記憶がうっすらと。と思っていたら、こっちと混同していた(笑) 「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」 こっちはまだ観ていないので今回は「サマータイムマシン・ブルース」の方で。 内容はけっこう本格的な和製BTTFである。邦画と思ってあまり期待せずに観たら、いやいや面白い。 身近なせせこましいトピックをタイムスリップと絡め、かつ破綻のない展

          みんな大好きタイムリープもの~「サマータイムマシン・ブルース」

          喜劇でもある~「サンセット大通り」

          7年前に観た時にはいまいち良さが分からなかったのだけど、世間の評判もいいし、再度チャレンジしてみた。(というような作品て、まあまあある) 1950年公開「サンセット大通り」 うーん、すごい顔芸。サイレント映画時代の俳優は身振りだけでなく巧みな表情でも演技したということか。 改めて観ると、脚本の緻密さ・堅牢なストーリーに目を瞠る。無駄がない。ホラーであり悲劇であり、それでいて喜劇でもある。だって最後の見得を切るところはやりすぎでしょう。 主役の二人、男女が逆だったら完全にコ

          喜劇でもある~「サンセット大通り」

          気の多いオードリー~「麗しのサブリナ」

          日本で一番人気のあるハリウッド女優といっても過言ではないのが、オードリー・ヘプバーン。 オードリーと言えば「ローマの休日」だが、その次の作品も捨てがたい。 1954年公開「麗しのサブリナ」 この作品のオードリー=サブリナは、なかなか気の多い少女である。 雇われている家の御曹司の次男にぞっこんだったのが、意外と軽いあっさりと長男に惚れてしまうという。これだけ読めばなんと尻の軽い女だと思ってしまうが、オードリーが演じると可憐で品よく映ってしまう。 とはいえ、ですよ。 その惚れ

          気の多いオードリー~「麗しのサブリナ」

          暴力装置という秩序~「シティ・オブ・ゴッド」

          秩序がない時代、人間はどのような社会を作っていたのだろうか。 万人の万人に対する闘争か、自由と平等の社会か。 そんな永遠の論題に対する一つの答えを示してくれている映画がこちら。2002年公開「シティ・オブ・ゴッド」 暴力とあらゆる悪行が町中に溢れている。そんな「神の街」を描いているのだが、不思議と不快な気持ちにならないのはどういうことだろう。 それは欲望というより、もう一段深い、原初的な衝動による営みだからなのだろうか。 街を統率することに憧れるリトル・ゼという少年。悪行

          暴力装置という秩序~「シティ・オブ・ゴッド」

          蓮っ葉なグレース~「泥棒成金」

          グレース・ケリーというと今でも根強い人気を集める往年のハリウッド女優。 彼女のキャリア晩年の作品がこちら。1955年公開「泥棒成金」 そもそも成金というのは、 ということなのだから、泥棒が成金なのは当たり前であり。。どうしてこの邦題が通ってしまったのだろう。 ケーリー(・グラント)は、この時すでに50歳を超えている。やはり絵的にもグレースとはバランスに欠けるのは否めない。 のだが、劇中でグレースはほぼケーリーに一目ぼれしてしまうのである。いやー、そんなことはないだろうっ

          蓮っ葉なグレース~「泥棒成金」

          名曲ありきはズルい~「ボヘミアン・ラプソディ」

          この映画、流行ったなあ。映画館には見に行かなかったけど、周りはみんなこの話で持ちきりだった覚えがある。2018年公開「ボヘミアン・ラプソディ」 あらすじとしては、成功→確執→挫折→復活、みたいなスタンダードな展開。正直その描き方はありきたりで、それほど面白くもない。 でもそんな凡庸な描写も終盤のライブエイドの場面ですべて帳消しにしてくれる。それほどあの場面で受けるカタルシスは素晴らしいものがあった。 思えば映画の中で名曲・名パフォーマンスの場面がある作品って強いと思う。

          名曲ありきはズルい~「ボヘミアン・ラプソディ」

          ホテルマンは大変だ~「フォー・ルームス」「底抜けてんやわんや」「THE 有頂天ホテル」「グランド・ホテル」

          今回はホテルを題材にした映画をご紹介。 まず1995年公開「フォールームス」 4つの部屋で繰り広げられる物語を4人の監督がそれぞれ作って、持ち寄ったもの。 世間ではどの部屋の話が好きかという話で持ち切りで。 やはり締めを飾るタランティーノの話は、キレがよい。 狂言回し役のティム・ロスのオーバーリアクションも、このホテルではちょうど合っている。 この作品の中でも言及されていて、きっとタランティーノも参考にしたであろう作品が、1960年公開「底抜けてんやわんや」 何という邦題

          ホテルマンは大変だ~「フォー・ルームス」「底抜けてんやわんや」「THE 有頂天ホテル」「グランド・ホテル」