あなたは自分の目で見たものを、どれくらい信じられますか? 自分の記憶は、どれくらい正確だと思いますか? 私たちは、自分が思っている以上に、錯覚に支配されているのかもしれません。 クリストファー・チャブリスとダニエル・シモンズによる共著『錯覚の科学』は、私たちが日常で陥りがちな錯覚のメカニズムを、心理学実験や事例を交えながら解き明かす、刺激的な一冊です。 この本は、私たちの感覚や認知がいかに不確実で、主観的な解釈に左右されやすいかを明らかにし、世界の見方そのものに疑問を
20世紀、世界を震撼させた出来事の一つに、洗脳があります。 冷戦時代、共産主義国家によって行われたとされる洗脳は、西側諸国に大きな衝撃を与え、恐怖と不信感を植え付けました。 しかし、洗脳とは一体何なのか、どのように行われるのか、そして現代社会にどのような影響を与えているのか、深く理解している人は少ないのではないでしょうか。 今日紹介する本『洗脳大全』は、カリフォルニア大学の精神医学教授であるジョエル・ディムズディール博士によって書かれた、洗脳の歴史を包括的に解説した書
近年、トラウマという言葉を耳にする機会が増えました。 しかし、トラウマとは一体何なのか、そしてトラウマを受けた人がどのように回復していくのか、深く理解している人は少ないのではないでしょうか。 私自身も以前、治安が悪い国を旅してるときに、銃撃に巻き込まれたことがあり、しばらくPTSDになりました。 そのときに助けられた本を紹介したいと思います! ジョージ・A・ボナーノ『トラウマとレジリエンス:「乗り越えた人たち」は何をしたのか』です。 本書のテーマであるトラウマとレジ
「なぜ、あんな人がリーダーに選ばれたのだろう?」 「権力を持つと人は変わるのだろうか?」 最近のニュースを見てるとそう思いませんか? 今日は誰もが一度は抱くそんな疑問に答えてくれる本を紹介します。 ブライアン・クラースという人が書いた『なぜ悪人が上に立つのか』です。 本書は、進化論、人類学、心理学など多角的な視点から、人間社会における権力構造の不都合な真実を解き明かす、刺激的な一冊です。 進化が生んだ「ミスマッチ」 クラースは、現代社会における権力の問題を「進
現代社会において、時間は最も貴重な資源の一つと言えます。 日々、仕事、家事、育児、勉強など、様々なタスクに追われ、時間に余裕がないと感じている人は少なくないでしょう。 そんな現代人の悩みを解決するために書かれたのが、『時間術大全』です。 本書は、GoogleでGmailやYouTubeなどの開発に携わってきたジェイク・ナップとジョン・ゼラツキーによって書かれた、時間管理術の決定版と言えるでしょう。 この記事では、『時間術大全』の内容を詳しく解説し、その特徴や他の時間管
サミュエル・スマイルズは、19世紀のイギリスで活躍した作家、思想家、そして医者です。 1812年にスコットランドで生まれ、エディンバラ大学で医学を学びました。 当初は医者として開業していましたが、後にリーズで新聞社や議会改革協会に勤務し、選挙制度改革などに携わりました。 その後、鉄道会社に勤務するなど、多様な経験を積んだ後、著述活動に専念するようになりました。 そして、1859年に代表作である『自助論』(Self-Help) を発表しました。 『自助論』は、300人
現代社会において、デジタル技術は欠かせないものとなっています。 スマートフォン、インターネット、クラウドコンピューティングなど、私たちの生活はデジタル技術によって支えられています。 しかし、その一方で、デジタル社会の持続可能性に疑問を投げかける声も上がっています。 フランス人ジャーナリスト、ギヨーム・ピトロン氏の著書『なぜデジタル社会は「持続不可能」なのか』は、まさにこの問題に焦点を当てた一冊です。 ピトロン氏は資源地政学を専門とし、『ル・モンド・ディプロマティーク』
現代社会において、私たちは日々様々なリスクに直面しています。 テロ、感染症、環境問題、食の安全、ネット犯罪など、枚挙にいとまがありません。 ニュースやインターネットでは、こうしたリスクに関する情報が洪水のように押し寄せ、私たちは不安や恐怖を感じることが少なくありません。 しかし、本当にそれらのリスクは、私たちが恐れるほどのものでしょうか? ダン・ガードナー著『リスクにあなたは騙される』(田淵健太訳、早川書房)は、私たちがリスクをどのように認識し、判断しているのかを心理
ジョージ・フリードマンをご存知でしょうか? 国際政治学者であり、未来学者である彼は、地政学的な分析に基づいた大胆な未来予測で知られています。 彼の著書『100年予測』は、2009年に出版された当時から、世界中で大きな反響を呼んできました。 本書でフリードマンは、21世紀の世界がどのように変化していくのか、歴史と地政学のパターンを深く考察することで、その全貌を描き出しています。 フリードマンは、国際関係に関する地政学的な著者であり、国際情勢の予測と戦略立案において国際的
日本は数十年経済成長していません。 いったいいつになったら不況が終わるのでしょうか? ノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマン氏は、著書『さっさと不況を終わらせろ』の中で、現在の経済状況を分析し、具体的な解決策を提示しています。 本書は、経済学の専門家だけでなく、一般の読者にも理解しやすいように書かれており、世界経済の現状と未来を考える上で必読の書と言えるでしょう。 この記事では、『さっさと不況を終わらせろ』の内容を、以下の構成で詳しく紹介します。 本の概要
「一体これからどうなるのだろう?」 誰もが、未来に不安を抱くことがあるのではないでしょうか。 世界情勢は目まぐるしく変化し、政治、経済、社会、技術…あらゆる分野で予測困難な事態が次々と起こっています。 VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)という言葉が象徴するように、私たちは常に不確実性と向き合い、未来を予測しながら意思決定を行っていく必要に迫られています。 では、霧の深い未来を、少しでも見通す方法はあるのでしょうか? その答えの一つとして、フィリップ・E・テ
「私は旅や探検家が嫌いだ。それなのに、いま私はこうして自分の探検旅行のことを語ろうとしている」 この挑発的な一文で始まる『悲しき熱帯』は、フランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースが1955年に発表した、20世紀を代表する名著です。 1930年代のブラジルにおけるフィールドワークの記録を主軸に、著者の思想的遍歴、文明批評、そして人類学的な探求が織りなす、重層的な構造を持つ作品です。 アカデミー・ゴンクールは「フィクションでないために『悲しき熱帯』を受賞の対象外と
こんにちは! 「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です! 今日はめずらしい作品を紹介! ミシェル・ド・モンテーニュの『エセー』です。 これ、16世紀のフランスで生まれた、人間の思考の深淵を覗き込むような作品です。 時代を超えて読み継がれるこの書物は、現代社会を生きる私たちにとっても、多くの示唆を与えてくれます。 この記事では、『エセー』の魅力とその現代における意義について探っていきます。 モンテーニュと『エセー』:基本情報ミシェル・ド
こんにちは! 「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です! 昨日、第172回芥川龍之介賞・直木三十五賞の選考会が開催され、受賞作品が決定しました! 前もって候補作品をすべて読んでおいたので今日は、おそらく世界最速で受賞作品を徹底解説していきます! 結論から先に言うと、芥川賞には安堂ホセ氏の『DTOPIA』と鈴木結生氏の『ゲーテはすべてを言った』の2作品が、直木賞には伊与原新氏の『藍を継ぐ海』が選ばれました。 今回の芥川賞は二人という異例の展
ケネス・ポメランツの著書『大分岐:中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成』は、2000年に出版され、経済史研究に大きな影響を与えた重要な著作です。 従来のヨーロッパ中心史観を批判し、18世紀後半までヨーロッパとアジア(特に中国)の経済発展に大きな差はなく、むしろ類似点が多かったことを論じています。 なぜ産業革命がヨーロッパで起こり、アジアでは起こらなかったのかという問いに対し、ポメランツは、ヨーロッパが石炭とアメリカ大陸という二つの「偶発的」な要素に恵まれたことが、そ
こんにちは! 「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です! 今日はブローデルの地中海を紹介します! フェルナン・ブローデル(Fernand Braudel, 1902-1985)は、20世紀フランスを代表する歴史学者であり、アナール学派の重鎮として知られています。 彼は従来の政治史中心の史学から脱却し、地理、経済、社会、文化など、多角的な視点から歴史を捉える「全体史」を提唱しました。 その代表作が、1949年に発表された『地中海』です。