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「超予測力」:不確実な時代を生き抜くための羅針盤

「一体これからどうなるのだろう?」

誰もが、未来に不安を抱くことがあるのではないでしょうか。

世界情勢は目まぐるしく変化し、政治、経済、社会、技術…あらゆる分野で予測困難な事態が次々と起こっています。

VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)という言葉が象徴するように、私たちは常に不確実性と向き合い、未来を予測しながら意思決定を行っていく必要に迫られています。

では、霧の深い未来を、少しでも見通す方法はあるのでしょうか?

その答えの一つとして、フィリップ・E・テトロックとダン・ガードナー共著の「超予測力」という本をご紹介したいと思います。

この本は、未来を予測する能力、すなわち「超予測力」を身につけるための具体的な方法を提示してくれる一冊です。


超予測力とは何か?

「超予測力」とは、単なる勘や直感ではなく、データに基づいた分析確率論的な思考によって、驚くほど正確に未来を予測できる能力のことです。

本書では、専門家や情報機関のアナリストを凌駕するほどの高い予測精度を達成した「超予測者」と呼ばれる人々の存在が明らかにされています。 

彼らはどのようにして、未来を見通すことができるのでしょうか?

その秘密を探るため、テトロック氏を中心とした研究チームは「グッド・ジャッジメント・プロジェクト」と呼ばれる大規模な予測トーナメントを実施しました。

このプロジェクトでは、世界中から集まった数千人の一般参加者が、政治、経済、国際関係など、様々な分野の未来に関する予測を行いました。

参加者は、オンラインプラットフォーム上で質問に答え、その予測精度を競い合いました。

研究チームは、参加者の予測精度を継続的に追跡し、その思考法や行動パターンを分析することで、超予測者に共通する特徴を明らかにしようと試みました。

超予測者になるための10カ条

「グッド・ジャッジメント・プロジェクト」の結果、驚くべき事実が明らかになりました。

それは、特別な能力や知識を持たない一般の人々でも、適切なトレーニングを受けることで、専門家を上回る予測精度を達成できるということです。

 本書では、超予測者たちの思考法や行動パターンを分析し、彼らがどのようにして高い予測精度を達成しているのかを解き明かしています。

そして、そのエッセンスを「超予測者をめざすための10の心得」としてまとめ、誰もが超予測力を身につけるための具体的な方法を提示しています。 

予測の技法と思考法

超予測者たちは、以下の様な技法や思考法を用いて予測を行っています。 

問題の分解
複雑な問題を、より小さな要素に分解することで、分析しやすくする。複雑な問題を、より小さな要素に分解することで、分析しやすくする。

まるで、巨大なパズルを解くように、まずは全体像を把握し、それを小さなピースに分割していくことで、個々のピースの理解を深め、最終的に全体像を解き明かすことができるのです。

既知情報と未知情報の分類
予測に必要な情報を整理し、何が分かっているのか、何が分かっていないのかを明確にする。

確率論的思考
物事を白黒で考えるのではなく、確率で捉える。例えば、「30%の確率で起こる」のように、不確実性を考慮した表現を用いる。

基準値の活用
過去のデータや類似の事例を参考に、予測の出発点となる基準値を設定する。

外部意見の活用
他の人の意見や予測を参考に、自分の考えを修正する。

継続的なアップデート
新しい情報が入手されるたびに、予測を更新していく。

フェルミ推定
一見不可能に思える問題を、より小さく、扱いやすい部分に分解すること。

大きな問題を前にすると、人はどうしても圧倒されてしまい、思考が停止してしまうことがあります。しかし問題を細分化し、一つずつ解決していくことで、道筋が見えてきます。

トンボの複眼
トンボの複眼のように、複数の視点から物事を捉え、より包括的な理解を得ること。 ある問題に対して、一つの視点からしか見ていないと、どうしても偏った見方をしてしまう可能性があります。しかし、トンボの複眼を用いることで、多角的な視点から問題を分析し、より正確な予測を立てることができるようになります。

積極的柔軟性
知的刺激への欲求が高く、常に異なる視点に対してオープンであろうとすること。

超予測者たちは、自分の意見や考え方に固執することなく、常に新しい情報や異なる視点を受け入れる柔軟性を持っています。

非決定論的思考

運命論ではなく、確率論的に物事を考えること。 物事が起こるかどうかは、様々な要因が複雑に絡み合った結果であり、「そうなる運命だった」と決めつけることはできません。

超予測者たちは、常に複数の可能性を考慮し、確率論的に物事を捉えることで、より正確な予測を立てることができます。

これらの技法と思考法を習得し、継続的に実践することで、誰でも超予測者に近づくことができるのです。

実際、「グッド・ジャッジメント・プロジェクト」の参加者は、これらの心得を学ぶことで、予測精度が向上したという結果が出ています。

わずかな差に思えるかもしれませんが、継続的な努力によって、その差は大きなものへと変わっていくでしょう。

超予測者をめざすための10の心得

本書では、超予測者になるための具体的な方法として、「超予測者をめざすための10の心得」が紹介されています。以下に、その10カ条をまとめます。

  1. 問題を細分化する

  2. 既知の情報と未知の情報を区別する

  3. 内向きの見方と外向きの見方を組み合わせる

  4. 証拠の重み付けを調整する

  5. 自分のバイアスに気をつける

  6. 確率で考える

  7. 不確実性を受け入れる

  8. 自分の間違いから学ぶ

  9. 他の人の意見を尊重する

  10. 常に学び続ける

超予測力の意義

予測力は、ビジネス、政治、医療、教育など、あらゆる分野において重要なスキルです。正確な予測は、リスクの回避、機会の獲得、そしてより良い意思決定に役立ちます。

例えば、ビジネスにおいては、市場動向や顧客ニーズを正確に予測することで、新製品開発やマーケティング戦略の成功確率を高めることができます。

政治においては、国際情勢や社会の変化を予測することで、政策立案や外交交渉をより効果的に行うことができます。

医療においては、病気の発生や治療効果を予測することで、患者一人ひとりに最適な医療を提供することができます。

「超予測力」は、単なる予測の手法を紹介するだけでなく、不確実性に対する考え方意思決定のあり方についても示唆を与えてくれます。

本書で紹介されている思考法は、予測だけでなく、問題解決や戦略立案など、様々な場面で応用することができます。

結論

「超予測力」は、不確実な時代を生き抜くための羅針盤となる一冊です。

この本を読むことで、未来を予測する能力を高め、より良い意思決定を行い、より豊かな人生を送るためのヒントを得ることができるでしょう。

本書で紹介されている超予測者たちの思考法は、一見特別な能力のように思えるかもしれません。

しかし、それは決して手の届かないものではありません。

誰でも、意識的に努力し、練習を重ねることで、超予測力に近づくことができるのです。

ぜひ本書を手に取り、未来を予測する力を磨いてみてはいかがでしょうか?


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