【冒涜探偵の血煙り自白録 序章】 前編
◇総合目次 ◇後編
霧が立ち込めている。石畳の上に転がる薄汚い死体と血溜まりをすっぽりと覆い隠してしまう程、深い地霧。
この街では珍しくも無い。ここで何かに躓いて転んだなら、疑うべきはまず死体だ。ブラッドの父もそうして発見された。彼が十四の時だ。
夕日はすっかりビルの向こうに隠れ、深い藍色の空に橙色の街灯が靄の中でぼんやりと光っている。ブラッドは身を切る寒さを堪えて商店街を黙々と進みながら、その光景に妙なノスタルジーを覚えていた。今日はあの日から丁度一年だった。弟