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詩の編み目ほどき④ 新川和江「Negative」
詩の門戸を日常から続く道に面して開き、誰でもがその中庭に憩い、吹き抜けてゆく風を楽しむベンチを、ただ一人で守り続けている現役の詩人、新川和江さん。
「現代詩は滅ぶかもしれないわね」という新川和江の言葉がある。( 2015年11月30日の産経新聞のインタビュー )
その言葉の後に、私は《新川和江を失えば、のちにほどなく》と付け加えたい。「最近注目されている若い詩人の現代詩は、何を言おうとしているのか
詩の編み目ほどき⑦ 新川和江「野を往く」
🧵 詩の解釈上掲の詩を書いた新川和江の脳裏を漂っていたであろう一首を思う。与謝野晶子の次の歌だ。
明治45年5月5日与謝野晶子は出国し、シベリア鉄道を経由して、19日にパリに到着する。パリには夫、与謝野鉄幹がいた。晶子は、5月のフランスの野原に咲き満ちていた雛罌粟ーヒナゲシの花の輝きに、夫に会う胸中の思いを重ねた。名歌である。
新川和江の「野を往く」は、晶子の歌の対蹠と言える境地だが、詩の場
詩の編み目ほどき⑫ 宮沢賢治「永訣の朝」
今回は、宮沢賢治の名を不朽にしている名作の詩を読み解きたい。
永訣の朝 宮沢賢治
🧵① 詩に挿入した言葉は妹とし子の言葉だけこの詩の中では、賢治は語り部の役割を貫いていて、実際の場面で交わしたであろう自分の言葉は挿入しなかった。それは賢治の直感だ。自分の言葉は夾雑物でしかないと感じて、兄妹の会話体とすることでとし子の言葉を濁らせたくなかった