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大海明日香
2024年6月2日 23:05
書きかけの小説の登場人物たちの生活がわたしの生活と同じようにぐるぐると回っている、わたしが言葉にしなければこのひとたちの生は誰にも伝わらないのだけど、別に誰にも伝わらなくてもわたしの世界のどこかでこのひとたちは懸命に生きていて、幸福になったりすることも知っている(わたしは結末を知っているし、結末の先でも彼らはどうせ美しく生きるから)から、誰かに知ってもらう必要があるのか、とぼんやり思うことがある
2024年3月19日 23:33
沈みかけのままずっと漂っている船みたいな家を出てから生活が自分の腕の中にふらっとやってきてくれたような気がして、どうか離れていかないでねと抱きしめたり世話を焼いたりしてるあいだに時間が流れていってしまうね、最近はずっと、近頃読んでもいないのによだかの星のことばかり思い出すよ、よだかにも、鳥たちにも、太陽にも、星にも、誰にもなれないような、誰のことも分からないような物語、だけどきっと、どこか
2024年2月21日 23:26
いっちょ前に健やかなふりをして白湯を飲むところから1日は始まる、100円ショップで100円じゃなかったキラキラのマグカップは大きさもちょうど良くて、レンジに入れても大丈夫だから気に入っている。イチゴ柄のパジャマを引きずったままねだると、こいびとが食べていたピーナツクリームのコッペパンを3分の1くらいちぎって渡してくれた。やわらかい甘さが心地いい、このあいだ食べた紅茶味のフレンチトースト、お
2024年2月5日 23:20
雪が降ってるね、降るたびに言ってるけどさ、雪が降ることをもう喜べなくなって哀しいね。でも雪がとけたら春が来るって、それだけはずっと忘れないでいたいね、別に好きじゃない春、特別じゃない春、わたしのものにならない春が。 上手に話もできないのに、上手に書くこともできなかったら、上手に詩にしてしまえなかったら、わたしの胸のなかの水はそのうち淀んで濁って生き物の住めない場所になってしまうんじゃな
2024年1月20日 12:34
自分の声を嫌いになりそうだったら朗読をしたり歌をうたってみたりするし、自分のへたくそな字を嫌いだから手書きで自己顕示欲を満たしてみたりする、反骨精神の塊みたいな性分とは反対にこころもからだもぽんこつのがらくたみたいな造りになっちゃって、でもわたしは精工で完璧で傷ひとつない高級なおもちゃよりぽんこつのがらくたみたいなおもちゃが好きだよ、今日も信号は自分の前でばかり点滅するような気がするし、靴
2023年12月12日 20:50
すれ違った高校生から嗅いだことのある香水の匂いがした、わたしも文化祭でバンドを組んで歌いたかった、100人に1人くらいは知ってるような曲を歌って、イントロが鳴った瞬間に顔を上げた数人のひとのこと、仲良くはならないまま特別にしたかった、特別だと思ってほしかった。わたしのしたかったは全部、後悔でも憧憬でもなくて渇望です、冬の空気に触れた肌の感想なんかよりずっと、ずっと、喉が乾いています。
2023年11月4日 22:46
逃避を幸福と呼ぶのをやめたくて、夜な夜なナイフを研ぐことだけが日課になる。 刺したいひとたちはみんなみんなあたしのことを知らない、だからまだ太陽は昇らないでほしい、なのにいつも不躾に空は明るくなって、あたしは終点に近づいていくから、降りる駅が決まっていないことに焦りだす。 自分が乗る列車のことを環状運転だと思っているひととは多分仲良くなれない、仲良くなりたくないの間違い
2023年10月14日 23:33
好きなひとと暮らすようになれば家の中でもかわいくいることをもう少し楽しめるようになるだろうか、お気に入りの自分でいることは自分の機嫌を取る方法のひとつでもあるのに、どこにも行かないのにメイクするのもすぐに食べ物をこぼしたりどこかへ引っ掛けたりするくせに好きな洋服を着るのも、それはそれでMPが削れていくから難しい、歯を磨いたりお風呂に入るのさえ億劫なの、わたしだけじゃないって教えてくれるイン
2023年9月18日 21:52
幸福なときはみんなみんな大好きだし、悲しいときはみんなみんなどうでもよくなるし、悔しいときにはみんなみんな嫌いになる。身勝手なのがあたしだけじゃないって知るにはインターネットは極端で、生温くて居心地が悪いのか、地獄の釜に迷い込んだと絶望すればいいのかわからない。 大袈裟なことばかり話すけど結局大まかにはしあわせではあるのだと思うから、カネコアヤノのかみつきたい、をかわいく口ずさんでみ
2023年8月19日 22:39
セールで買った可愛いジャケットを早く着たいから秋になってほしい、大好きで色んな柄を何着も手に入れたシアーインナーも重ね着するのがお気に入りだし、長袖の柄シャツやふわふわのブラウスを着ていればご機嫌でいられるし、やっぱりわたしは夏の女になんかなってやらないぞって気持ちで、せめてもの抵抗にパール入りの日焼け止めを塗りこんでいる。 少し前までは派手な柄シャツに色の濃いリップや赤いアイシャ
2023年8月1日 22:09
とうとう8月になってしまった、だからといってどうということはなく、ことしも夏はやっぱりあんまり好きになれないままです。 エアコンのきいた部屋の中で横たわっているあいだ、死ぬまでに読めない本、死ぬまでに見れない映画、死ぬまでに聴けない音楽、死ぬまでに歌えない歌、死ぬまでに着れない服、死ぬまでに立てない場所、のことばかり考えるのは、夏がやけに鮮やかで、みんなわたしとは別の生きものとして生きたり死
2023年7月10日 21:20
体調が芳しくないと大抵こころの方まで影響が出るの、ニンゲンの馬鹿なところだと思う、必死でなんとか生きてるだけで気付いたら7月になっていて、見返したらこの生きているという記録くらいにしかならない散文も月に1度ほどしか書けていなかった。悔しい。悔しいね。だってわたしは、書くより生きるを優先したんだよ。当たり前だけど。そうじゃなきゃ困るけど。でも気持ちくらいはなんとか、って、思いませんか。サイズ
2023年6月21日 19:55
あ、ほらまた、苦しみばかりをかまってわたしのこと放ったらかしにしたでしょう。 幸福、と呼ぶのは癪に障るそいつは痩せた身体でジトっとこちらを見るけど、それでも相変わらずわたしなんかがいなくても大丈夫そうだし、わたしのものになってくれなさそうだから構う気になれない。苦しみばかり見つめるのは本当に忘れたいことなんかひとつもないからで、怒りを、妬みを、かなしみを蓄えてわたしはどうにか身体を
2023年5月21日 21:32
五月病、もしなっても響きがダサいから言いたくないな。もっと美しい名前にしてほしい、と思ったけれど、哀しみや苦しみをすぐに美しいものに仕立て上げるのそろそろやめたいね。とりあえず行こうと思った皮膚科は休みだったから、これは行かなくても治るってことだと思うことにした。あたしに都合よく使われる神様はあたしのことが嫌いだろうか、それとも振り回されたって余計に好きになるような馬鹿なあたしみたいなタイプ