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マルチタスクが苦手な52歳が気づいた、本当に大切なこと

「鳴呼! また私だけできていない……」

蛍光灯の光が差し込む静かなオフィスの自席で、私は小さなため息をつきました。

時計の針は午前10時を指し、周りでは朝一番の業務が本格的に動き始めています。

となりの席の若い同僚は、左手で受話器を耳に当てながら、右手で素早くキーボードを叩いています。

電話の相手とスムーズに会話をしながら、同時にメールの文面を作成しているようです。

その向かいの席の方は、分厚い紙の資料に蛍光ペンで線を引きながら、別のエクセルシートにデータを入力していて……。

さらに奥の席では、三人の社員が立ち話をしながら、それぞれタブレットやスマートフォンを操作しています。

まるで華麗なジャグリングでもするかのように、皆さんは複数の作業を軽やかにこなしているように見えます。

小気味よい操作音と会話が、オフィスの空気に溶け込んでいきます。

でも私には、それができないんです。

たとえば電話に出ながらメモを取ろうとすると、相手の話が耳に入ってこなくなる。

「はい」「はい」と相槌を打ちながら必死でペンを動かすものの、後から見返すと、肝心な内容が抜け落ちていることがしょっちゅうです。



資料作成中に誰かに話しかけられると、パソコンの画面を見つめたまま、頭の中が真っ白になってしまう。

手元の作業に集中しようとすれば会話が聞き取れず、会話に意識を向けると、手が止まってしまう。

一つのことに集中するのが精一杯で、それ以外のことが全く入ってこなくなるんです。

そんな場面が、毎日のように繰り返されます。

52歳になった今でも、うつ病を抱えながら就労継続支援A型事業所で働く私にとって、この「マルチタスクができない」という悩みは、いつも心の奥底でくすぶり続けているのです。

毎朝の通勤電車の中でも、そんな思いが頭をよぎります。

つり革につかまりながら、車窓の外を眺めていると、車内のあちこちで「ながら作業」をしている人々が目に入ります。

スマートフォンを片手に動画を見ながら、もう片方の手でSNSに投稿している若い女性。

イヤホンで音楽を聴きながら、電子書籍を読んでいるスーツ姿の男性。

駅のホームですれ違う人々も、歩きながらメールをチェックしたり、会話をしながらスケジュールを確認したり……。

現代社会は、まるでマルチタスクが「当たり前の能力」であるかのような空気に満ちています。

けれども私には、そんな「当たり前」が、とてつもなく高いハードルに感じられてしまうのです。

専門家の見解から学んだ「脳の本質」

そんな中、先日読んだある心理カウンセラーのインタビュー記事が、私の目を大きく開いてくれました。

記事によると、マルチタスクは実は脳にとって、想像以上に大きな負担になるのだそうです。

人間の脳は、本来、一つのことに集中するように設計されています」とカウンセラーは語っていました。

複数の作業を同時に行うということは、脳が常に切り替えを強いられている状態で、それは実はとても不自然なことなのだとか。

たとえば、電話をしながらメールを書くとき、私たちの脳は「電話→メール→電話→メール」と、高速で切り替えを行っているのだそうです。

これは想像以上に負担が大きく、集中力の低下やミスの増加につながりやすいとのこと。

この記事を読んで、私の中で何かが整理されていくような感覚がありました。

私の場合、不整脈や心房細動、糖尿病など、いろいろな持病を抱えています。

毎日の体調管理だけでも気を使う必要があるのに、そこに無理なマルチタスクが加わると、からだの不調がいっそう悪化してしまうんです。

朝活で読書をし、夜はnoteを書く。

そんな生活を送る中で、一つのことに集中できる時間は、私にとってとても大切なものになっています。

腰痛があって長時間座っていられない体調の中でも、自分のペースで学び、発信を続けられているのは、「一度に一つのことを、じっくりと」という働き方を心がけているからかもしれません。

マルチタスクが苦手な人の特徴と向き合い方

さらにその記事では、マルチタスクが苦手な人には、いくつかの共通した特徴があると指摘されていました。

「一つのことを丁寧に進めたい」
「きちんと順序立てて物事を処理したい」

という傾向が強いのだそうです。

読みながら、私は何度もうなずいていました。

たしかに、私はそうかもしれません。

毎朝の読書タイムは、私にとって一日で最も充実した時間です。

本のページをめくりながら、一つひとつの言葉をかみしめるように読んでいく。

その時間は、まるで異なる世界に没入していくような心地よさがあります。

夜のnote執筆も同じです。

パソコンに向かい、その日に感じたことを言葉にしていく作業は、たしかに時間がかかります。

でも、一つひとつの文章を丁寧に紡いでいくことで、むしろ充実感を覚えるんです。

そう考えると、マルチタスクが苦手なのは、単純に能力が低いからではないのかもしれません。

むしろ「しっかりと物事を進めたい」という真面目な性質の表れなのではないでしょうか。

記事では、そんな視点も提示されていました。

不安と向き合い、自分らしい働き方を見つめ直す

では、私たちマルチタスクが苦手な人は、どのように仕事と向き合えばいいのでしょうか。

記事では、まず心配事や不安を無視せずに、しっかりと向き合うことが大切だと説明されていました。

私の場合、この考えに従って、少しずつ工夫を重ねてきました。

たとえば、複数の仕事を同時に進めなければならない状況になったとき。

まず深呼吸をして、自分の中にある不安を認識します。

「丁寧に仕事をしたいのに、それができない状況だからあせっているんだな」と、自分の気持ちを整理するんです。

そして、やるべきことをすべて書き出し、優先順位をつけて、できるものから一つずつ取り組んでいく。大抵の場合、この方法で落ち着いて仕事を進められるようになりました。

「できない自分」を受け入れ、活かす方法

最近では、「マルチタスクができない」ことを、必ずしもマイナスには捉えていません。

むしろ、

「一つひとつの作業を丁寧に進めたい」
「集中力を大切にしたい」

という自分の特性として、前向きに受け止められるようになってきました。

たとえば、仕事場での対応も変えてみました。

複数の作業を任されたときは、「すみません、一つずつ確実に進めさせていただきたいのですが」と、正直に伝えるようにしています。

すると意外なことに、多くの方が理解を示してくださるんですよね。

「たしかに、急いでいくつもの作業をするより、確実に進めた方がいいですよね」
「私も実は、同時進行は苦手なんです」

そんな言葉をかけていただくことも、いろいろとあります。

それまで私は、周りの人はみんなマルチタスクが得意なのだと思い込んでいました。

でも実際には、同じように苦手意識を持っている人が、意外にたくさんいたのです。

私の場合、うつ病の症状もあり、常に体調と向き合いながら仕事をしています。

不整脈や心房細動、糖尿病など、さまざまな持病も抱えています。

そんな中で、自分のペースを守りながら働くことは、とても大切なことです。

むしろ、一つひとつの作業にじっくりと向き合える私たちだからこそ、気づける視点があるのかもしれません。

たとえば、作業の手順で無駄な部分を見つけたり、より効率的な進め方を提案したり。

そういった貢献の仕方もあるはずです。

これからの私たちに必要な、新しい働き方

今、あらためて考えています。

マルチタスクが苦手な私たちには、どんな可能性があるのだろうかと。

毎日の読書や執筆活動を通じて、私なりにわかってきたことがあります。

それは、一つのことに集中できる力は、とても大切な才能なのではないか、ということです。

たとえば、私は寝る前の時間を使って、noteの執筆をしています。

腰痛があって長時間座っていられない体調ですが、短い時間でも集中して取り組むことで、なんとか継続できています。

一つのことにじっくりと向き合える特性があるからこそ、毎日の更新が可能なのだと思います。

そして、この特性は仕事の場面でも活かせるはずです。

複数の作業を同時にこなすことは苦手でも、一つひとつの作業を丁寧に進めることで、ミスを減らし、質の高い成果を出すことができます。

私のような「できない」を抱える人間でも、SNSでの発信やnoteの執筆を通じて、自分らしい表現方法を見つけることができました。

それは、「一度に一つのことを、じっくりと」という働き方を受け入れられたからこそだと思います。

もしあなたも「マルチタスクが苦手」だと感じているなら、無理に他人と同じやり方をする必要はありません。

むしろ、自分の特性を理解し、それに合った方法を見つけていくことが、ストレスなく働くための第一歩になるのではないでしょうか。

私たちには私たちの、独自の視点や気づきがあるはずです。

それを活かした働き方こそが、これからの時代に求められているのかもしれません。

今日も、自分のペースを大切にしながら、一歩一歩前に進んでいきたいと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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