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幻想鉄道奇譚

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【完結】人生のすべてをかけた夢を捨てていく、手放しの物語。全45話
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2020年4月の記事一覧

幻想鉄道奇譚 #8

 これから往復十日間、つきあわなくてはいけない職場が駅を離れ、夜の都を駆け抜けていく。 …

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幻想鉄道奇譚 #9

 都が遠ざかり、丘陵の森から田園地帯へと列車は走る。通路の車窓に映るのは、うす暗い電動式…

8

幻想鉄道奇譚 #10

 パトリックとゾーイ、クーパーの冷静な対処からして、乗務員は当然知っているし、こういった…

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幻想鉄道奇譚 #11

 二時間後、田舎まちの駅で一組の若いカップルが乗車した。その後いくつかの無人駅を過ぎなが…

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幻想鉄道奇譚 #12

 貨物車両につながる連結部のドアを開けると、外だった。列車の律動だけがこだまする雑木林の…

6

幻想鉄道奇譚 #13

 十五分の休憩をギャレットのもとで過ごしたエイダンは、気もそぞろのまま車両の見まわりに戻…

9

幻想鉄道奇譚 #14

 ギャレットの密偵のような真似をしてまで、エーテル修復師の国家資格試験を受けたくはない。それに受けたところで、合格するとも思えない。やめたほうがいい。僕には向いていないもの。  そんな考えとは裏腹に、ふたたび制服に腕をとおしたとたん迷いが生じる。単純明快なパトリックの言葉を聞いたときは断ろうと考えていたはずなのに、こんな機会は二度とないぞと別の自分が訴えてくるのだ。  この仕事もどうせ辞めるんだろ。そのあとどうする? すぐに仕事が見つかる保証なんてないじゃないか。  だ

幻想鉄道奇譚 #15

 スミスと交代したエイダンは、夕方の出発時刻までクーパーと業務に就くことになった。車掌室…

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幻想鉄道奇譚 #16

 バーレンの無人の駅舎を過ぎると、閑散とした広場にでた。石造りの小さな教会がぽつんと建っ…

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幻想鉄道奇譚 #17

「……ここにいたんだね。探したよ」  エイミーを見下ろし、息をのむ。ユニコーンの人形を抱…

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幻想鉄道奇譚 #18

 あと少しで駅前の広場に着くというころ、こちらに向かってくるスミスの姿が視界に飛び込んだ…

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幻想鉄道奇譚 #19

 車窓越しに、墨色の海が見えてきた。月に照らされた水面が儚く輝き、闇夜の雲がゆったりと流…

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幻想鉄道奇譚 #20

 貨物車両の仕切り部屋に隔離された男性は、ブラッドと名乗った。先に海を渡った恋人に続き、…

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幻想鉄道奇譚 #21

 魔法でも魔術でもなく、芸術です。  エーテル修復についてはじめて学んだとき、都会からきたジェイムズ先生はそう言った。  中世時代から隠されてきたとされる学術書が発見されて約百年。女王陛下はこれを芸術にもちいることを許可し、各地の芸術大学は特化して学べる専門の学科をこぞって設置した。卒業生らは誰もが知る芸術家となり、国家資格を得た者は女王陛下から爵位をたまわり、国中を美で満たしていく。  ジェイムズ先生は意気揚々と語った。平面の絵画も美しいけれど、エーテル修復によって生