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“白い”ねこのーと

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喧嘩と論理の深淵。その冒険記。
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#喧嘩凸

page.19 抽象化/一般化

抽象化と一般化については,文脈によってニュアンスを察することが難しくないため,本書でも特に区別していない。

しかし,次のような区別を考えると,この言葉たちが実践されてきたコンテクストによく整合するように思われる。すなわち,あるトークン a に言及する命題 A に対して,それぞれ

一般化:∀xA[a,x]
抽象化:∃xA[a,x]

といった定義をすることによる区別である。

(本項では,論理式

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page.21 論述債務の発生事由

論述は議論の本質的構成要素であるが,これを恒に誰にでも請求できる(或は,我々はみんな,誰に対しても恒に論述を加える義務を負っている)と考えるのは不合理であろう。

本書では,論述をしなくてはならないという義務を【論述債務】と称ぶことにして,その発生事由や消滅事由なども考えていきたい。そこで,本項では取り急ぎその発生事由を簡単に述べる。

AのBに対する主張aの論述債務は,【Bの論理体系にAがaによ

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page.20 論益の基礎とすゝめ

本書では,論争の完成によってそのコミュニティに得られる利益の一般を【論益】と称ぶ。

(論争に参与するアバター間において,そのトピックの命題に与えられる真理値一致の確認を以て,その論争は完成するものとする)

論争の一般に,そのトピックに静謐する益を認めることが出来るように思われるが,──いわゆる喧嘩界隈など──論争すること自体を利得に設定すべきコミュニティを俎上に乗せたときは混乱が生じ易いように

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page.18 信念の主体

本書 p.15 では,信念について次のように記した。

信念は,次のように,専らプラグマティックに定義される。すなわち,それが内的に,形而下に作用するような主体たるアバターの諸言動である。つまり,観測ないし知覚可能であるような言動を伴わないものは信念としてナンセンスであり───むしろ,そんなものは信念として認められなくてよろしい───伴うものが,信念として有意味であり,それら観測ないし知覚可能

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page.17 論理の限界

『絶対はない』という考えは,素朴には真理に映るかもしれない。

しかし,私は,このような考えは誤りだと考えている。本項ではこの理由を説明する。

そのためには,まず,われわれの信念というものの本質を見つめなおさねばならない。そして,理由や根拠の繋がりには,いずれ担保を失う一群の命題(私は,これを公理系と呼んだこともあった。)が存在するという理屈も,思い出さねばならない。

われわれの信念体系

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page.16 推論形式

 推論の代表的な3つの形式として,演繹法(deduction),帰納法(induction),仮説推論(abduction)を挙げることができる。

 それぞれの推論は,述語論理学の表現力によって,次のように簡単に記述できる。*

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page.15 対立信念

我々は皆,信念を持っているはずだ。

人の本質を,“思考の活動ないし,系”(つまり,論理体系,アバター)に在らしめんとする本書では,むしろ,そう言うべきだろう。

信念は,次のように,専らプラグマティックに定義される。すなわち,それが内的に,形而下に作用するような主体たるアバターの諸言動である。つまり,観測ないし知覚可能であるような言動を伴わないものは信念としてナンセンスであり───むしろ,そ

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page.14 外的恒真は内的恒真を包摂する

トートロジー(恒真式)にも,次のように,内的なものと外的なものとが区別され得るのではないか。

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page.11 矛盾

喧嘩ないし論争を考察することと,論理を考えることは親和性が高い。そして,論理を考える上で,“矛盾”という概念は避けて通れない。

本項ではこの“矛盾”をつぎのように定義しよう。すなわち,任意の命題Aが矛盾しているとは,Aを真にする解釈が──その解釈の関数空間上に──存在し得ないようなAの論理構造を指す。

(本項では,解釈 I によって,命題 P に ⊤ が対応付けられることを I(P)=⊤

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page.10 人格関数

p3 では概念を関数として捉える方法を記したが,本項では“人格”を関数として捉える方法を記す。このような関数を“人格関数”と称ぶ。

ここで,「人格も概念なので,このページって結局 p3 に包摂されるような内容じゃないの?」というように考える人がいるかも知れない。しかし本項の目的は,人格を関数によって定義するというより,人格を関数によって機能的に扱えるようにする───そのような仕方で,人格を関数に

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page.9 条件遷移

トピックの遷移は〈条件遷移〉と〈非条件遷移〉に大別できる。

条件遷移は,任意の主張 P と,その条件関係にあるQ,R に対して次のような類別が出来る。

条件関係 Q→P の真偽についてトピックが遷ったものを〈前件関係遷移〉といい,このような前件関係が認められる Q の真偽にトピックが遷ったものを〈前件遷移〉という。

条件関係 P→R の真偽についてトピックが遷ったものを〈後件関係遷移〉

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page.8 論譜

喧嘩について,その論理的過程を記録したものを“論譜”と呼ぶ。

論理的過程というのは,トピックの真偽を争うにあたって,真理関数的な関係にある命題に対する論証であったり,その否定であったり,またはその真偽に疑義を投げかけるような文言のことをそう呼んでいる。とにかく,オリジナルトピックの真理値に関わるような言明一般が論理的過程である。(あるオリジナルトピック T に対して,分枝したトピック T’ が真

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