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あけました【短編小説】
※本文は1,772字。
自宅近くの寺社に一人で参拝していたら、大学時代の友人であるアキラと偶然に会った。会ったと言うか、遭遇だから遭ったと言うほうが正しいか。
アキラは4人の子供を引き連れていた。2人は自分の実子で、残り2人は嫁さんの連れ子なのだという。独り者の俺とは大違いだ。
「明けましておめでとうございます!」
両親と妹夫婦子がごった返す実家は久しぶりに賑やかだった。父は孫の顔を眺め
ラストダンス【エンタメ小説】
※本文は1,840字数です。
生まれてはじめてのアダルトレビュー⭐︎は最悪だった。結局、世の中の誰も求めてやしない代物なのだから。煮ても焼いても炙っても、アダルトレビュー⭐︎はアダルトレビュー⭐︎にしかならない。
冒頭から「シンジ君!シンジ君!」と逆突っ張り棒をひたすら掲げながら一晩中踊り続けた。俺は明らかに赤面して、まるで自分自身があのハギワラシンジになったつもりでいた。
兎にも角にも
ヒロト⭐︎シンジ 1.2.3【ショートストーリー】_第六回私立古賀裕人文学賞投稿作品
ーこの物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ある映画の字幕にこうただし書があるのを僕は凝視していた。唯一無二の親友なのか、もしや恋人同士なのかわからない恍惚の表情を浮かべている。「我々はシンジンルイだ」と男二人は不敵な笑みを浮かべて。彼らは一体何者?その奇妙な邦画作品は古びた町にある最古のレンタルビデオ屋で見つけた。僕が生まれて初めて立
盛夏に何を想う【掌編小説】
DVDには「昭和-戦禍の記憶-」というタイトルが付されていた。去年99歳で亡くなった祖父から受け継いだものだ。
一人灯りを消して祖父の記憶に初めて触れてみる。画面にはテレビニュースで観たような人殺し合いが映し出されていた。僕は思わず目を背けた。でもやっぱり観なくてはいけないような気がした。フト「責任」という赤字で書かれた二文字が頭に浮かんだ。
先達から受け継ぐ責任。誰かが語り継がなくてはな
もう恋なんてしない【掌編小説】
「きいて欲しいことがある」
そうLINEにメッセージを送ってきた君の絵文字は大量の涙で溢れていた。恋なんてしなければ良かった、君から絶対に聞きたくない一言だった。
そう思い悩んでいるなんて到底想像できなかった。君はイケメンでスポーツ万能、さらには勉強も出来る。非の打ち所がない、周りの誰もが羨むほどの才能溢れる人間だからだ。君が失恋した?誰もが恋愛に絶望感を抱いて、さらには生きることすら嫌気が
初夏に帰りたくなる僕ら_2【ショートストーリー】
やっぱり恋ができない
そう呟いたX(エックス)に見知らぬイイネが星の数ほどついた
僕の不幸を嗤う1万イイネは悲しみを増長させる
つぶやきの裏にある声にならない叫び
--見知らぬ姉に逢いたい
大人になればあえるよ、と言った母に姉のことを訊いてみたくなった
気がつけば朝一の飛行機に勢いよく飛び乗っていた
例年より暑い夏の札幌のせいで到着後は少し気分が悪くなった
いや、亡き姉のことを思い過ぎたせいか
無