ヒロト⭐︎シンジ 1.2.3【ショートストーリー】_第六回私立古賀裕人文学賞投稿作品
ーこの物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ある映画の字幕にこうただし書があるのを僕は凝視していた。唯一無二の親友なのか、もしや恋人同士なのかわからない恍惚の表情を浮かべている。「我々はシンジンルイだ」と男二人は不敵な笑みを浮かべて。彼らは一体何者?その奇妙な邦画作品は古びた町にある最古のレンタルビデオ屋で見つけた。僕が生まれて初めて立ち入ったアダルトコーナーで見つけたDVDだ。なぜか野良犬のように彷徨い「18禁」と書かれた真っ赤な暖簾をくぐった。周辺には丈が異様に短いスカートを穿いた女子高生が怪訝な眼差しで僕を見ていた。ホモセクシュアルなのかただのエロティックなのか分からない。新しいジャンルだったのか、それとも人間ではなく地球生命体ではない宇宙人みたいな存在だったのか。
翌日、僕は謎のウィルスに感染してしまい寝込んでいた。ハタと深夜0時に目が覚めた。耳の周辺が騒がしい。携帯でYoutubeを見ながら映画が映るテレビ画面を観ていた。どうやら途中で眠り落ちてしまったようだ。
「嗚呼、ヒロト・・・」
「oh、シンジ・・・」
見つめ合う二人は何とも愛らしく人類の進化を彷彿とさせた。姿形がそっくりでよく見ると兄弟にすら見える。一体どういう間柄なのか?いや、そんなことはどうでもいい。
直立不動で見つめ合う。やがて「2001年宇宙の旅」のテーマソングが爆音量BGMで流れた。
「俺たち、やるのか?」
ここで某有名生殖器病院のCMが流れた。いやいやまだ映画は終わっていないだろ。こんな中途半端な所でなぜ生殖器の映像がドアップで出るんだ。一体なぜ?これも二人の言うシンジンルイの世界なのか。CMが終わり場面がまた戻ると二人は行為を終えて素っ裸で志村けんのバカ殿メイク姿で「変なおーじさん。だから、変なおーじさん」と踊り狂っていた。なんだなんだ彼らはとんでもないスターなのか。それとも・・・。
たった二人しか登場しない物語は二人にしか分からない世界だった。二人の性行為は作中に一回だけあったが生殖器どころか全てモザイクが施されており、明らかに観る者を小馬鹿にしたとしか思えなかった。
後日、ヒロトとシンジは架空の人物でしかもAIだったとインターネットニュース上で報道された。どう見ても生身の人間にしか見えなかった。後日、Xに映画レビューを書きたいと思っていた。幾多の「⭐︎(スター)」を加えて。
俺は一気に憔悴して、体全体の力が抜けた。いや、生殖器官が完全に萎えていくのが分かった。いや、死んだようだった。英雄然とした彼らは完全なる架空の存在だった。あんなに人間臭いAIは二度と現れないだろう。また彼らに遭いたい。夢の中の、マイヒーローに。
【了】